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サッカーマガジン 1997年10月1日号
ビバ!サッカー

ウズベキスタンとの乱戦の原因は?

 ワールドカップ予選アジア決戦のスタートは、大乱戦だった。9月7日に東京の国立競技場で行なわれた、日本対ウズベキスタンの第1戦は6対3で日本の先勝。白星スタートを喜んでいいのか? 3失点に不安を感じるのは取り越し苦労なのか? 大乱戦の原因を考えてみたい。

☆前半4対0の原因は?
 「勝つことが大事な試合でしたから内容はともかく、勝って良かったと思っています」 
 日本代表の加茂周監督の、試合後の記者会見での言葉である。「ウソではないけど、ホントを全部話したわけではない」という感じだ。勝って良かったのは本当だろう。しかし、前半4対0でリードしながら、後半に3点も取られた内容を、深刻に受け止めていないはずはない。
 ともあれ、前半4対0とリードしたのは見事だった。どのゴールも、日本の狙い通りだった。 
 でも、なぜ? 日本は、そんなに強いのか? ウズベキスタンは、そんなに弱いのか? 
 いろいろな見方がある。 
 まず第一に、開始4分のPKでウズベキスタンが混乱したという意見。これは、その通りだろう。これで、日本有利な展開になった。 
 第二に、ウズベキスタンは前日来日したばかりで、選手の体調が悪かったという意見。この考えは必ずしも当たっていない。直前に来日したのは非常識という論評があったが、アウェーの試合では前日に現地入りするのも、一つの常識である。不慣れな環境の敵地に何日も滞在すると、かえって体調を崩す原因になるからだ。 
 ぼくの意見は「これは、情報量の差だ」ということである。日本はウズベキスタンの試合のビデオなどを研究して、十分に情報を集めていた。 
 逆にウズベキスタンの方は、日本についての情報不足で、研究不十分だったのではないか。

☆後半2−3の原因は?
 前半の試合ぶりを見ると、ウズベキスタンは、中盤の名波と中田をあまり警戒していないようだった。この2人から、敵の弱点を突く、いいパスが何度も出た。
 また左からの相馬の攻め上がりに対して、そのサイドを守るはずのマリファリエフのマークが甘かった。相馬は「相手のマークが甘かった。ビデオで分かってましたけどね」と話している。
 というわけで、前半4対0と日本が大きくリードできた最大の原因は情報量の差だった、と考えている。
 しかし、後半になると事情は変わる。ウズベキスタンは、戦法を変えてくるはずである。 
 戦法を変えてくると思われる理由は、2つある。 
 第一は、ウズベキスタンは4点もリードされたのだから、意地でも反撃に出ざるを得ないことである。前線あるいは中盤の攻撃的プレーヤーの人数を増やして、攻めに出てくるだろう。
 これに対する対策は、守りを固める一方で、敵が出てくる裏側を突いて逆襲の追加点を狙うことである。後半のカズの2点は、そういうチャンスを生かしたものだった。逆襲のチャンスを落ち着いて物にしたカズのプレーは、さすがだった。 
 戦法を変えてくると思われる第二の理由は、ウズベキスタンは前半の経験で、日本のやり方についての最新の情報を得たことである。 
 その情報に基づいて、ウズベキスタンは戦法を変えた。それが3ゴールに結びついている。

☆変化に対応する能力は?
 日本の攻めは、中盤の名波と中田から始まる。左右に振って両翼の攻め上がりが武器である。
 前半の手痛い経験で、そういう情報を得て、ウズベキスタンは中盤のチェックと、両翼への警戒を強化した。
 日本の守りは、プレスをかけようと守備ラインも、積極的に前に出る。井原を守りの要(かなめ)に置いているが、ラインはしばしば、浅く横一線になる。
 そういう知識を得て、ウズベキスタンは作戦を変えてきた。中盤で素早く振って守備ラインの裏側を突いてきた。
 加茂監督は「相手が戦法を変えてくることは当然、予想した」と言っていた。だから、ハーフタイムには対応策を指示したに違いない。その指示が適切でなかったのか、あるいは選手たちがうまく対応できなかったのか、そこのところは分からない。
 いずれにしても、日本チームは戦術的な対応能力に、柔軟性を欠いていた。4対0と大きくリードし、また相手が戦法を変えてきた状況に、適切に応じることができなかった。今後の試合を考えると、これは、いささか不安な材料だった。
 「後半、日本のプレーヤーたちの足が止まっていた」という指摘もあった。その原因として、加茂監督は「4−0と思いがけないリードになったので、気がゆるんだ」と言っていた。
 「前半飛ばしすぎて、後半ばてたんだ」という意見もあった。
 大声援のなかで、地元で試合をして、気がゆるんだり、ばてたりするようでは、これも心配である。


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