アーカイブス・ヘッダー

 

   

サッカーマガジン 1997年9月17日号

ビバ!サッカー

W杯へ! アジアの決戦

 フランス98へ向けてのアジアの決戦がスタートする。9月7日から11月8日まで2カ月にわたるホーム・アンド・アウェーの長丁場だ。実カトップ・クラスの国を集めてのアジア・リーグが、真剣勝負で争われる形となった。アジアのサッカーの歴史を区切る大イベントである。

☆広域、長期のH&A
 今回のワールドカップのアジア最終予選は、アジアの歴史に残る大きな実験ではないだろうか。
 5カ国ずつ2グループのリーグ戦が、これほど広大な地域でホーム・アンド・アウェーで行なわれたことは、これまでにはなかった。しかも1次予選を勝ち抜いた選りすぐりのチームばかりによる決戦である。こんな壮大なスポーツ・イベントは滅多なことでは見られない。
 この方式が今後もできるかどうかは分からない。時間と経費がかかりすぎるし、テレビ中継も時差や技術格差の点で苦労が多いようである。今回やってみて、これは無理だな、ということになるかもしれない。
 このような数チームによるグループリーグは本来は近くの国同士で組むのが合理的である。東アジア、東南アジア、アラブ地域、中央アジアというように地域別にグループリーグをやって、その勝者が代表になればいい。地域的にはバランスよくワールドカップ出場チームが出ることになる。
 ただし、この方式だと、いつも同じ顔触れで予選を争うことになって毎回かわりばえはしない。また、レベルの低い地域からも代表が出て、ワールドカップ決勝大会で実力の違いすぎるカードが増えることになる。これは決勝大会の財政にとっては好ましくない。
 というようなわけで、広大なアジア地域で、壮大なホーム・アンド・アウェーを行なうのも、また理由のないことではない。この実験を勝負とは別に注目してみたい。

☆ホームの韓国戦がヤマ
 さて、この長期、広域のホーム・アンド・アウェーを、どのように戦うかが問題である。 
 「1戦必勝」「すべての試合に全力を」と精神論を唱えるのは簡単だが、現実には人間は生身だから、2カ月にわたって心身ともにトップ・コンディションを維持するのは難しい。個人としても、チームとしても、どこにコンディションのピークを持っていくか、また2カ月にわたって、大きな波がないように調子を保っていくにはどうしたらいいか、頭の痛いところだろう。
 韓国が最大の強敵だと、多くの人が考えている。隣国同士のライバルで、長年にわたって日本が苦い思いをさせられてきた相手だから当然である。東京での試合も、ソウルでの試合も超満員の応援でプレッシャーがかかるに違いない。
 そう考えると、韓国との対戦、それも第1戦が大きなヤマで、ここに焦点を合わせて、コンディションのピークを持っていくべきだということになる。 
 日本対韓国の第1戦は9月28日。2カ月の戦いが、なかばにさしかかるころだから、まさにヤマ場にふさわしい。 
 この韓国との第1戦が日本のホームになったのは幸運だった。時差のない近くの国で、食事や気候は似ているから、そういう点では韓国に遠征の不利はないだろうが、スタジアムの雰囲気はおおいに違う。 
 9月28日の東京国立競技場が、熱狂的な、しかし折り目正しい応援で盛り上がることを期待している。

☆中央アジアを侮るな!
 韓国との第1戦が終わると、日本代表チームはすぐ、中央アジアに向けて出発しなければならない。次の週がアルマトイで対カザフスタン、その次の週がタシケントで対ウズベキスタンと遠征が続く。
 日本代表チームは、この2試合続きのアウェーの間、ずっと中央アジアに滞在することになる。ホーム・アンド・アウェーとしては変則的である。
 日本のマスコミの論調を見ると、ウズベキスタンとカザフスタンは韓国やUAE(アラブ首長国連邦)にくらべて、やや軽く見られているようである。これまでに、日本はウズベキスタンと2戦2勝で負けていないことが根拠になっているようだ。カザフスタンは、まったく未知の国である。
 これが意外な落し穴になっては困ると、ぼくは心配している。
 第一に、体力、気力を集中したあとにくる長距離の遠征続きである。
 第二に、日本チームが、まだ経験したことのない気候、風土、風俗の国である。
 第三に、中央アジアの国々でもサッカーはもっとも大衆的なスポーツだから、地元の応援を受けたときの戦いぶりは見違えるようになる可能性がある。
 中央アジアの国々は、90年代のはじめまでは旧ソ連邦の一部で、タシケントやアルマトイ(旧名アルマアタ)のクラブは、ソ連邦リーグでホーム・アンド・アウェーを戦ってきた経験を持っている。
 中央アジアへの遠征は、注意深く計画する必要がある。


前の記事へ戻る
アーカイブス目次へ

コピーライツ