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サッカーマガジン 1997年9月10日号

ビバ!サッカー

わが学園のフットサル

 高校スポーツの夏が終わった。京都で高校総合体育大会があり、甲子園で高校野球があった。暑さに負けない若者たちの、はつらつとした姿はブラウン管のうえで見ているだけならさわやかだが、こういう姿だけが学校スポーツの在り方なのだろうか。

☆三つのクラブ
 大阪の方からJR神戸線(山陽本線)の電車で西へ向かうと右手に山が迫り、左手に海が見える。神戸を過ぎて須磨にさしかかるあたりで、来年4月に開通する明石大橋が淡路島へ大きく海をまたいでいる。そこからさらに快速電車で25分、右手の山が遠くなり、播州平野が広がってきたところに加古川がある。
 ここに、ぼくの勤めている兵庫大学経済情報学部がある。開学3年目、いまのところ3年生までで、学生総数700人足らずである。
 ただし同じキャンパスに40年以上の歴史をもつ女子短期大学があり約1200人の学生がいる。来年度からは兵庫大学短期大学部と名称を変えて男女共学になるが、今のところは女子学生ばかりである。経済情報学部は女子が6パーセントほどで大部分が男子である。というわけで今のところ一つのキャンパスに、学生数約1900人、男子がほぼ三分の一である。
 このキャンパスにサッカーに関する課外活動のクラブが三つある。
 一つは、もちろんサッカー部。これは4年制大学の男子が部員で女子マネジャーはいるが、ふつうの大学のサッカー部と変わらない。
 もう一つは、昨年、このビバ!サッカーで紹介した「サッカー・プロジェクト」で、いわゆる文化系のクラブである。昨年の夏休みには、イタリアに出掛けて、その報告書をパソコン編集でまとめて、学内で発行した。今年の夏休みは、2002年ワールドカップの国内会場10都市を訪問、調査するプロジェクトをはじめている。

☆サッカー部とは別に
 最後の一つは「フットサル」のクラブで、これは男女混成、短期大学部の学生も歓迎している。
 学内の三つのサッカークラブは、いずれも学生たちが自主的に結成したもので、ぼくが教員として、そそのかしたわけでもなければ、指導したわけでもない。新しい大学だから先輩もいない。まったく学生たちが独力で作り、運営している。
 サッカー部とサッカー・プロジェクトについては、これまでにビバ!サッカーでも取り上げたので、今回はフットサル部を紹介しよう。
 フットサル部は、開学2年目に入学してきた学生が、作りたいから顧問になってくれと言ってきた。
 「フットサルは、小人数でやるミニサッカーだろ。同じサッカー協会の管轄になっているんだからサッカー部に入って、その中でフットサルをしたらどうか」
 と、ぼくは答えた。
 「サッカーの仲間だということは知っていますが、フットサルには、また独特のおもしろさがあります。別のクラブとして、やっていきたいんです」
 「でも体育館はバレーボールとバスケットボールとバドミントンが、それぞれ男女別に使っていて、なかなか割り込めないよ。それにボールを体育館の壁にぶつけられるのは困る」 
 「練習はグラウンドでやります。大会なんかも、たいてい屋外でやっているんです」
 フットサルについて、結構、知識も経験も持っているようだった。

☆女子部員も加えて
 「なるほど」と、ぼくは思った。
 フットサルには、サッカーとは別のおもしろさがある。それはそうかもしれない。
 小人数で狭いコートでするから、どのプレーヤーもボールに触る機会が多くなる。11人制のサッカーに初心者が入るとボールを扱うチャンスは非常に少なく、走り回るだけで終わってしまうことが多い。そういう点でフットサルは、初心者も楽しめるゲームかもしれない。 
 一方、狭いコートでボールを扱うから、テクニックがものをいう。しかし、これは習うより慣れるで、やらせてみるよりないのかもしれない。
 11人制のサッカー部の方は、関西学生リーグをめざして、体育会的感覚でやっていたから、フットサルの方は、多くの学生が参加できる気軽なクラブにしてはどうかと考えた。 
 それに女子学生が多いキャンパスなんだから、女子もいっしょにやれるようにしてはどうかと考えた。
 「短大生も入れてやれるかね。きみたちが女性の初心者を教えて、楽しくやれるならいいけどな」 
 「歓迎しますよ。男女混成でやります」
 1年目は、あまり活動しなかったようだが、2年目の新入生歓迎会に招かれてみたら、短期大学の女子学生も加えて、かなりの人数になっていた。
 数週間後に女子部員が「はじめてボールを蹴ってみた。楽しかった」と報告にきた。 
 うまく発展するかどうか。これは一つの実験である。


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