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サッカーマガジン 1997年7月16日号

ビバ!サッカー

厚い守りを崩すには

 ワールドカップ1998の1次予選の東京ラウンドで、日本代表は格下のマカオ、ネパールから、なかなか点がとれなかった。一方的に押している試合では、攻めても攻めても、なかなか点がとれないことはよくある。そこで厚い守りを崩す方法を考えてみた。

☆W杯予選のテレビ観戦
 ワールドカップ1次予選第2ラウンドの東京シリーズは、テレビ観戦だった。日本が圧倒的に有利なことは分かりきっていたので、勝負としては、兵庫県加古川市から、わざわざ出掛けるほどのことはない。しかし、日本代表チームの試合ぶり、というより考え方をテレビカメラを通さずに、自分の目で確かめたいと思ったから、出掛けるつもりにはしていた。とはいえ、新しい大学で資質優秀な学生を多数あずかっている身だから、ジャーナリスト専業だったころのように、ひょこひょこ飛び歩くわけにはいかない。そこで、やむなくブラウン管が頼りになった。
 6月22日の日本対マカオの試合のときは、はじまって5分もたたないうちに、NHK衛星放送のアナウンサーが「まだ無得点です」といっていた。気が短いね。サッカーは、むやみに点が入ってはおもしろくないんだよ。5分ぐらいで無得点は当たり前ではないか。  10分にも「まだ無得点です」と繰り返した。相手は弱いんだから早く点をとれ、といわんばかりだった。
 しかし、格下の相手には、けっこう苦戦するものである。敵は優勝候補との第1戦に照準をあわせて頑張ってくる。守りを固めて引き分けでも面目を保ってホームに帰ることができる。逆襲の1点を守ることができれば大いばりである。 
 こういう相手には、最初の1点が勝負である。1点をとったあとは、敵も守りばかりというわけにはいかないから攻めにも出てくる。そうなれば追加点のチャンスも生まれる。

☆対マカオの先取点
 マカオとの試合の先取点は前半17分だった。中田が後方からの浮き球のパスをフリーで受けて、振り返りざま23メートルぐらいのミドル・シュートを決めた。守りを固めている相手に対しては、攻撃の第2線からのミドル・シュートが効果的である。その定石どおりだった。
 このゴールには3つのポイントがある。
 この場面の前にカズの攻め込みを相手が防ぎボールを前方にけり返した。それを日本がとったときカズと西沢は最前線に出ていて敵の守備ラインを押し込んでいた。そのために第2線の付近には多少のスペースができていた。これが第1のポイントである。
 そのスペースに、中田がすかさず入り込んだ。いいパスがきて、中田は振り返りざま、左隅を狙ってシュートした。この中田の好判断が第2のポイントである。ミドル・シュートを狙って、あらかじめゴールを見ていたプレーがいい。
 このとき、ゴール前にマカオのディフェンダーが1人転がっていた。その前の場面でカズの攻め込みを防いだとき倒れて、そのままになっていたものである。これがゴールキーパーの守りの邪魔になった。自陣のゴール前でいつまでも寝っ転がっていたのはミスである。これが第3のポイントだった。
 厚い守りを攻め崩すための定石を中田の好プレーが生かした。相手のミスも重なった。ちょっとラッキーである。点をとるには幸運も必要である。

☆対ネパールの苦戦
 6月25日のネパールとの試合は、1点目をとるのにもっと苦労した。前半、ロスタイムに入ってからの45分15秒にコーナーキック後の混戦から、西沢がようやくゴールを決めた。
 ネパールは11人がフィールドのゴール前、3分の1に下がりっきりだった。これを攻め崩そうと日本は、あの手、この手と試みたが、なかなかうまくいかない。
 厚い守りを攻め崩すために、3つの考え方がある。敵を散らすこと、敵を押し込むこと、敵を引き出すことである。
 日本の作戦の第一は、敵を散らすことのようだった。サイドからの攻めで相手を横に散らせてから、ゴール前にあげる方法である。しかしネパールのように全員が下がりっきりだと、いそいでセンタリングしてもゴール前には、まだ守りがたくさんいる。
 敵を押し込むためには、ダイレクトパスをつないでの突破とドリブルでの攻め込みと、ポストプレーからの走り込みがある。これも密集守備に対しては、そうそうはうまくいかない。そこで密集のなかに攻め込んで敵のミスや反則を誘い、そのコーナーキックやフリーキックやペナルティー・キックを狙うことになる。
 敵を引き出す方法は、後方でのパスとミドル・シュートである。
 日本代表は、これをいろいろ試みていた。ネパールとの試合では、あれこれ試みすぎたのが、かえって点がとれない原因になっていた。サッカーは難しい。難しいからおもしろい。マカオやネパールの健闘に敬意を表しておきたい。


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