日韓共催の2002年ワールドカップで、入場料金は日本と韓国がそれぞれ独自に決めることができ、その収入は全額、日本と韓国のそれぞれに入ることになった。いかにもFIFAらしい現実的な決定である。しかし、これで財政問題がすっかり解決するわけではない。
☆FIFAの現実的決定
このニュースは、連休明けの5月7日付けの新聞夕刊に載っていた。FIFA(国際サッカー連盟)の2002年ワールドカップ共催検討委員会で財源確保案が決まったという記事である。
ポイントは三つある。
@入場料金は日韓両国が、それぞれ独自に決める。
A入場料収入は、日韓両国の組織委員会が、それぞれ全額をとる。
B日韓両国はそれぞれローカル・サプライヤーと独自に契約できる。FIFAのオフィシャルースポンサーと競合しても差し支えない。
「これで赤字の心配はなくなった」という日本サッカー協会の長沼健会長の談話もついていた。
これは、いかにもFIFAらしい現実的決定である。FIFAは、規程に反するのにワールドカップを2国で共同開催することを決めた。それが現実に合った解決策だと考えたからだろう。
共催になった以上、財政問題もこれまでのやり方と同じでは現実的でない。日本と韓国では経済事情が違うのだから、入場料金も同額というわけにはいかない。そこで財源は別べつにすることにした。2002年の両国の経済がどうなっているかは簡単には予測できないが、現状のままなら日本では入場料金は高く、韓国では比較的安くなるだろう。
これまでの大会では、FIFAが入場料収入の大半をとっていた。しかし、2002年では全額地元に渡すことにした。これも現実的な決定である。
☆財源確保にメド?
入場料収入全額を日韓両国それぞれの収入とすることに決めた理由は3つ考えられる。
第一に、入場料金が違う以上、その収入をプールして使うのは不公平だからである。高い入場料金を設定して多くの収入を挙げたものを、安い料金で収入の少なかったほうに分配する結果になりかねない。
第二に入場料金を安く設定するほうは国内の物価が安いわけだから運営費も安くてすむ。支出は別べつになるのだから、収入も別べつにしないと不合理である。
第三に、これがもっとも大きな要因だと思うが、テレビの放映権料の問題がある。
2002年のテレビ放映権料は、10億4000万ドル(約1300億円)でFIFAが契約することになっている。これはアトランタ・オリンピックの放映権料をはるかに上回る金額である。これだけの収入があればFIFAは、地元が努力して売った入場料収入をかすめとる必要はない。
さて「これで赤字の心配はなくなった」と万万歳なんだろうか。 そうはいかないと思う。
まず、支出のなかで、過去の大会ではFIFAが入場料収入のなかから支出していた項目を開催地元が負担するようでは、開催国の収入増にはならない。その点はしっかり確認しなければならない。
次に、テレビ放映権料収入のなかから開催国の組織委員会にも配分がなければならない。
この二つの点は、新聞報道では明らかではなかった。
☆開催地にも発言権を
この報道で、ぼくが興味を持ったことがある。
日本の新聞では5月7日付け夕刊に掲載されたのだが、ぼくの家に配達された新聞についていえば、読売新聞では2面の夕刊スポーツ・ページ、朝日新聞では14面の第二社会面だった。
ところが地元の神戸新聞は1面トップ、2面に関連記事という大扱いである。記事そのものは共同通信の配信だが、扱いはその日の最重要二ユースだった。
思うにこれは、2002年のワールドカップが赤字になるか、黒字になるかが、地元にとって大きな関心事だからである。
開催地になる地方の県、あるいは市の自治体は、これまでワールドカップ招致の段階で、いろいろな出費を強いられてきた。これからの会場と運営の準備でも、いろいろと余分な経費がかがりそうである。
その結果が大赤字だったら、そしてその後始末が、また自治体に降り掛かったりしたら、県民や市民は大迷惑だ。知事さんや市長さんのクビも危ない。
そういうふうに考えると、2002年会場都市の一つである神戸の地元の新聞が、入場料収入の見通しを大きく扱ったのは当然である。
さて、本番の試合の時、たくさんの入場券を買うのは地元の県民、市民である。そう考えると入場券の売り方やその収入の使途についても、開催地の自治体あるいは準備委員会は、かなりの発言権をもっていいのではないだろうか。
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