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サッカーマガジン 1997年2月12日号

ビバ!サッカー

2002年のスタート

 これから6年間、2002年ワールドカップが日本のサッカーの主要テーマである。そこで、ビバ!サッカーも、これからは2002年を中心に据えて展開していきたい。まずは、ワールドカップ準備のスタートだった昨年12月の開催候補都市決定に立ち戻って……。

☆開催地選考の裏話
 1月のビバ!サッカーは忙しい。天皇杯はあるし、高校選手権もある。権威あるサッカー大賞の選考もしなければならない。
 というわけで、2002年ワールドカップの話をもっと書きたいと思いながら、できないでいた。やっとひと息ついたので2002年の話を取り上げることにする。まずは時計の針を巻き戻して、昨年暮れの2002年ワールドカップ開催地決定の裏の裏を考えてみる。
 日本サッカー協会が、2002年の開催地を15から10に絞ったのは12月25日だった。サッカー協会が自分の責任で難しい決定をしたのはよかったと思う。結果的には、残った10都市は妥当だった。そのことは、すでにビバ!サッカーでもとりあげた。
 しかし、その決定の方法については、厳しい批判が翌日の新聞にのっていた。
 ぼくは、あのとき、スポーツ・ジャーナリズムの集中講義のために和歌山大学に行っていたが、大学からホテルに戻ると東京のラジオ局から電話がかかってきて、生放送で意見をきかれた。そのラジオのコメンテーターの質問も、選考の経過が不透明で納得できないという口ぶりだった。ぼくは必ずしも、そうは思っていなかったので、やりとりは、ちょっとちぐはぐになった。
 友人たちのなかに、たまたま、そのラジオ番組を聞いていたのがいて、年賀状に「なかなか面白かったよ」と感想を書いてきた。
 世の中、意見はいろいろである。

☆問題のアンケート
 翌日の新聞を見ると、協会幹部が東京で記者会見をして、選考の方法などについて結構、くわしく説明している。ただ、選考の方法が妥当だったかどうかについては、それこそ世の中、意見はいろいろで、納得いかない人がいるのは当然である。
 ぼくが意外に思ったのは、選考の直前に協会が15の自治体に出したアンケートについての論評が見当たらなかったことである。アンケートが行なわれたことは報道されているのだが、それが選考結果にどう響いたかについては、突っ込んで追究されては、いなかったように思う。
 このアンケートは12月20日締め切りで15の自治体全部に出されている。内容は、これまでに自治体が約束していたことを実行できるかどうかの確認だったはずである。
 15の自治体は、2年前にワールドカップ開催地に求められる条件を満たすことができるものと認められていた。だから、いまさら「基準を満たしているかどうか」を議論するのは筋が通らない。
 しかし、その条件の中には、まだ計画途上の競技場の建設などが含まれていた。したがって、その計画が予定どおり進行しているかどうか、今後進行できるのかどうかを改めて確認する必要はある。 それが、問題のアンケートである。したがってアンケートの質問内容は、15の自治体に対して、それぞれ別だったはずである。たとえば茨城県に対しては、鹿嶋のスタジアムを拡張するのか、あるいは新しいスタジアムを作るのかの確認を求めたはずである。

☆競技場の活用法は?
 さて、こういう質問を受け取ったのは自治体である。回答の責任は知事さんか市長さんにある。これは、なかなか、やっかいな問題だろう。
 たとえば、スタジアムを改修する予定であっても「必ず改修すると約束できますか」と確認を求められて、市長さんが独断で「確約します」と書き込めるわけがない。建設や改修には予算措置が必要で、市営の場合なら市議会の同意がなければならない。その手続きを急に行なうなんてことはできっこない。広島が、スタジアムに屋根をつけると約束できなかった裏には、そんな事情もあったのではないかと推測した。
 国民体育大会の開催が予定されていて、そのための施設計画が、すでに県議会の同意を得ている場合には、こういう問題はない。そういうところに対しては「スタジアムをワールドカップのあと、どのように使いますか」という質問が行なわれただろうと思う。巨大な施設を作って、ワールドカップや国民体育大会のような一度かぎりの催しのあとは、ぺんぺん草が生えるようでは、税金の無駄遣いである。この施設は、地域のスポーツ振興の拠点として長く活用されなければならない。そういうサッカーの考え方を理解してくれているかどうかを確かめる必要がある。
 このようなアンケートの内容と、それが選考に及ぼした影響が、東京での記者会見で明らかにされたのかどうか。残念ながら、ぼくは、もう新聞社に勤めていないし、関西に住んでいるので、自分自身で追究することはできなかった。


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