日本サッカー協会75周年記念と銘打って、日本代表対ウズベキスタン代表の試合が9月11日に東京の国立競技場で行なわれた。1対0で日本代表の勝ち。アジア大会優勝チームとの対戦だから、単なる親善試合以上の意味がある試合で、結果も内容もよかったと思ったのだが……。
☆アジアのNO1同士
「これは勝ちたい試合だな」
国立競技場を埋めた大観衆を見てそう思った。「フランスヘ行こう」と書いた横断幕がゴール裏のサポーター軍団を覆って揺れている。加茂周監督の率いる日本代表チームにとって、これはフランス・ワールドカップ・アジア予選への準備のなかで大事なステップである。
「勝ちたい試合だ」と思ったのは、サポーター軍団の熱気に当てられたためばかりではない。相手のウズベキスタンが、アジア競技大会のチャンピオンだからでもある。
ウズベキスタンは、かつてはソ連の一部でサッカーの世界ではヨーロッパの仲間だった。ソ連邦から独立してアジアに初登場したのが2年前に広島で開かれたアジア競技大会である。初登場で初優勝。ウズベキスタンはたちまちアジアのトップクラスに躍り出た。
一方、日本は4年前に、これも広島で開かれたアジアカップで優勝してアジアの選手権をとった。だから今回の試合は、アジアの二つのチャンピオンの対戦だった。
今回は親善試合だが、12月にはアラブ首長国連邦(UAE)でアジアカップがあり、来年はフランス・ワールドカップのアジア予選がある。そのときに真剣勝負でアジアのナンバーワン同士が対決する機会があるかもしれない。
その小手調べだから、今回は親善試合ではあっても、勝って自信をつけておきたいところである。地元の大観衆の前で試合するのだから、なおさらである。
☆日本の守りが焦点
試合が始まってまもなく、まだエンジンが全開にならないうちに、日本が先取点をとった。前半6分である。スルーパスで抜け出した前園−カズのコンビが絶妙だったし、ゴールキーパーのパンチを拾った森島の詰めもよかった。
日本がはやばやとリードしたので「これは日本の守りが見どころだ」と心のなかで思った。
親善試合だから、はなばなしい攻め合いをして、お客さんを喜ばせるのもいいが、勝ちを狙うのなら、先取点を守るほうに重点は傾く。
ウズベキスタンのほうはリードされれば反撃を策して攻めに出る。日本は逆襲で追加点を狙いたいところだが、それにしても、まず守りである。
選手権をかけた試合なら、リードされていても、無理な攻めはしないで、じっくり守って失点が増えるのを避け、反撃機を待たなければならない場合もある。しかし、これはウズベキスタンにとっては、招待された先での親善試合だから、攻め合いに持ち込んで、お客さんをわかせたいところである。
ウズベキスタンの選手たちが、本当に、そう意識したかどうかは、ともかくとして、試合の戦い方は、時と場合によって違うものである。
というわけで、試合の焦点はウズベキスタンの攻めと日本の守りになるだろうと考えた。実際に日本がリードしたあとの前半の展開は、そのとおりになった。
ウズベキスタンの攻めを、日本はよく守ったと、ぼくは思った。
☆時と場合によって
ところが、日本の守りに対する評価は、人によって、だいぶ違っていたようである。試合のあとの記者会見の雰囲気で、そう感じた。
加茂監督は「ゾーンプレス」による守りをモットーにしている。ところが、この試合では、それが機能していなかった。前線から中盤にかけて、ボールをもっている相手プレーヤーにプレッシャーをかけられなかった。それはなぜか、というような質問が報道陣から出た。
記者会見に出た加茂監督と井原主将の説明はこうだった。
「ウズベキスタンは、プレッシャーをかけると、ボールをバックパスしてディフェンダーの方へ回した。だから追い掛けてプレッシャーをかけることができなかった」
井原主将は、さらにこう説明した。
「後ろへ回されたボールを追って出ていくと裏側をつかれるおそれがある。パスを追い回すと体力を消耗してしまう」
ぼくは井原主将の説明が、もっともだと思う。ゾーンプレスも、時と場合によりけりである。
ウズベキスタンの後方の選手がボールを持っていたとき、日本のプレーヤーが一人、必ず間合いを取って前に立ちふさがっていた。パスが回るとつぎつぎに、新しい守りが前に立ちふさがった。こういう守りを、状況に応じて、どの選手も自分の判断でしていたのがよかったと思う。
失敗もあったし、危ない場面もあったが、それは準備段階の試合だから今後への教訓である。
ぼくは守りのよかった点を評価したいと思う。
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