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サッカーマガジン 1996年3月27日号

ビバ!サッカー

4年目のJリーグを占う

 さあ、Jリーグ4年目の開幕だ。今年こそ、日本にプロレベルのサッカーが定着するかどうかの正念場だと思う。多くのチームによるホーム・アンド・アウェーの2回戦制、長丁場の1シーズン制。欧州のプロリーグと同じシステムだ。この本格的リーグを制するのは……。

☆チームの底力は?
 今季のJリーグは3月16日から11月9日まで、途中で6〜7月に中断はあるが、30節にわたる長期の戦いとなる。
 「長丁場でものをいうのは体力だろうな」と友人がいう。
 これは間違い。長丁場でものをいうのは「底力」だ。
 友人のいう体力は、毎試合、毎試合、90分間を走り回る能力である。スタミナあるいは耐久力といってもいい。これを半年以上、続けられるか、というわけである。
 ぼくに言わせると、これは無茶な注文である。肉体にしろ精神にしろ、トップ・コンディションを1年中、保ち続けるようには、生物の身体はできていない。栄養と休息と適度の運動があってコンディションは維持できる。
 したがって、最高の力で長いシーズンを走り続けるのは無理である。
 好不調の波はあっても、試合の日には、いいコンディションでいられるようにリズムを保ってシーズンを過ごさなくては息が続かない。
 そのためには、試合のなかでムダな動きを少なくしなければならない。これは個人個人のテクニックと戦術能力がカギである。
 また、毎日の生活が、リラックスした健康的なものでなくてはならない。これは個人の生活態度の問題である。
 つまり、個人のサッカーの能力と生活態度とチームの管理体制の三つの息がぴったり合うことが大切である。これをチームの「底力」というわけである。

☆優勝チームは?
 では、長いシーズンの最後に笑うチームは、どこだろうか。
 まず、選手の能力を見てみよう。
 外国人選手の戦力は、どのチームも大きな差はないと思う。
 というのは、いま日本では、極端な言い方をすれば外国人選手は「より取り見取り」だからである。
 円高のおかげで国際的には法外と思える高給を払えるので、ワールドクラスのスター選手が喜んでやってくる。
 ただし、はじめてきた外国人選手は、日本のサッカーや生活に慣れるために時間がいる。したがってグランパス3年目のストイコビッチは有利で、ヴェルディの新加入ドニゼッチは不利である。しかし今年はワールドカップ予選が世界各地で始まるので、そのために一時帰国する外国人選手が出てくると戦力としての計算は、なかなか難しい。
 そうなると日本人プレーヤーの戦力が重要になる。
 若いプレーヤーのレベルが軒並みに上がっているので平均的な戦力には大きな違いはないだろう。
 だがサッカーには、こんな「ことわざ」がある。「両チームの力の合計が同じであれば、双方の22人のなかで、もっともすぐれたプレーヤーを持っているほうが勝つ」
 この「ことわざ」どおりになるとすれば、攻めに三浦カズをもち、守りに柱谷哲二を持つヴェルディが有利である。
 こういうふうに考えて、最後はヴェルディとグランパスのマッチレースになるだろうと予想している。

☆監督の能力は?
 選手の能力の平均に大きな差はない。傑出したプレーヤーを持つ点ではストイコビッチのグランパスとカズ、柱谷のヴェルディが有利だと見る。だが、これに加えてプレーヤーを動かす監督の能力も考える必要がある。
 監督も1年目は難しい。新しくチームを掌握しなければならないし、外国人監督の場合は、日本のサッカーに慣れる期間もいる。
 そういう点ではレッズのオジェック監督、ヴェルディのネルシーニョ監督、ジュビロのオフト監督、グランパスのベンゲル監督が、Jリーグでの経験も実績もあって有力である。この4チームは上位を争うだろうと思う。これに早野宏史監督のマリノスを加えることにする。守りに井原正巳がいるのも心強い。
 ただし、マリノスの場合、前年のチャンピオンであることは材料にしない。というのは、チャンピオンシップを決めたのは前期優勝のマリノスと後期優勝のヴェルディとのプレーオフだったからである。わずか2試合の実績で長期リーグの行方を占うことはできない。 
 長期1シーズン制の良さは、ここにある。
 短期決戦では、その短い期間だけのコンディショニングに成功したチームが勝つことがある。幸運も大きくものをいう。
 長期リーグでは底力がものをいう。運不運はあるが、底力のないチームには幸運も、ほほえまない。底力のあるチームだけが好不調の波を乗り切ることができるはずである。


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