1月はじめの地方新聞に、妙な世論調査の記事が出た。神戸新聞には「五輪大好き、W杯サッカーには冷めた目」という大きな見出しがついていた。この見出しと記事は、ちょっと無茶苦茶。この時期にサッカーのワールドカップが話題になるほうに注目すべきなのである。
☆五輪大好きは本当?
今回、問題にしたいのは「日本世論調査会」が昨年の12月9、10の両日に「国民の五輪への関心度を探るため」実施した全国世論調査である。これは地方新聞が加盟している通信社の配信らしい。
それによると、今年の夏に開かれるアトランタ・オリンピックに「非常に関心がある」と答えたのは、13%だった。
一方、2002年のワールドカップについて「日本で開催すべきだ」と答えたのは、29%だった。
この数字をみて読者の皆さんは、日本の国民は「オリンピックが大好き」で「サッカーには冷めた目」をしていると思うだろうか。
目前に迫ったアトランタ・オリンピックに積極的な関心をもっているのは、わずか13%で、7年先のワールドカップに興味をもっているのは29%なのだから、サッカーのワールドカップへの関心は高いな、と思うのがふつうではないだろうか。
ところが、この記事は、アトランタに「ある程度関心がある」と答えた数字を合わせてオリンピックに注目しているのは68%だとし、2002年ワールドカップヘの関心は「比較的低率だった」と解説している。今年の夏に開かれるオリンピックに「ある程度関心がある」のは誰だって当たり前で、この数字を「五輪大好き」に結びつけるのは、こじつけも、はなはだしい。
数字は、まだ日本開催か決まっていないワールドカップにも、かなりの人が関心を持っていることを示しているとみるのが妥当ではないか。
☆W杯への関心は高い!
この調査では、2002年のサッカー・ワールドカップ開催地に日本と韓国が立候補していることを取り上げ「W杯の日本招致について、どう思いますか」と聞いている。
これに対して「日本で開催すべきだ」という選択肢にまるを付けたのが29.1%あった。
「どちらの開催でもよい」と答えたのが52.7%で、これをもって「冷めた見方」としているのだが、これは、日本の招致運動に対する冷静な判断ではあっても、サッカーあるいはワールドカップに対する無関心ではない。
ワールドカップにしろ、オリンピックにしろ、これは国際的イベントとして重要なのであって、開催地がどこであるかは、イベントそのものにとっては2次的な問題である。
2002年のワールドカップについては「アジアではじめて」というところに意義があるが、その点では日本でも韓国でも「どちらの開催でもいい」はずである。「どちらの開催でもいい」と答えた人の大半は、サッカーあるいはワールドカップに関心を持っており、そのなかには、ワールドカップの国際的な意義を理解したうえで、この答えを選択した人も多かったに違いない。
ワールドカップ開催について「分からない」と答えた人、あるいは無回答だった人は、たった2.3%だった。つまり、サッカーのワールドカップについては無関心だった人は、きわめてわずかで、多くの人が関心を持っていた、ということである。
☆7人に1人はサッカー通!
この世論調査の最後の質問は「あなたは、アトランタや長野で行なわれるオリンピックと、サッカーのワールドカップ(W杯)のどちらにも興味がありますか」というものだった。これは無茶苦茶な比較である。
オリンピックのほうは、今年の夏に迫ったアトランタと、日本での開催が決定している長野とをあげて、ワールドカップー般と比較させようとしている。
そのうえ、オリンピックには、陸上競技や体操やバレーボールやスキーなど、いろいろなスポーツが含まれている。それぞれのスポーツに関心のある人が、それぞれオリンピックに興味をもつだろう。それを単独のスポーツの競技会であるサッカーのワールドカップと並べて比較をしようとするのは、調査の仕方が間違っている。
ところが、質問の方法が偏っていたにもかかわらず、オリンピックよりも「サッカーのW杯のほうに興味がある」と答えた人が14.4%もあった。これは、むしろ、サッカーへの関心度が高いことに、びっくりしていい数字である。
つまり、まぢかに迫ったオリンピックよりも、また日本で開かれる冬のオリンピックよりも、ワールドカップのほうに興味を持っている人が7人に1人はいるということである。次のワールドカップは、2年半後に、遠いフランスで開かれるにもかかわらずである。
この世論調査の解説記事は、よほどサッカー嫌いの記者が書いたのではあるまいかと思ったことだった。
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