日本代表チームの加茂周監督が、1年の任期を終える。加茂ジャパンの狙いが、ようやく明らかになりつつあったところだったのに、続投かどうかが議論の的になった。この1年に、とくに不都合はなかったように思われるのだが、議論が分かれたのは、なぜだろうか。
☆1年契約の意味は?
日本代表チーム監督の加茂周さんを続投させるべきかどうかが議論になって、ぼくは、いささか、びっくりした。
というのは加茂周さんにワールドカップ予選を任せるのが当たり前と思っていたからである。
加茂監督の契約が1年であることは知っていた。
しかし、これは日本サッカー協会側が、1年間の様子をみたうえで、選択の権利を留保しておくためのものだと思っていた。
権利を留保するのは、最初の1年間で「明らかに不適格」だと分かったときに備えるためだと思っていた。つまり、続投させないのは「明らかに不適格」なことが明らかになった場合だけだと思っていた。
「それなら」
と友人がいう。
「ワールドカップ予選終了までの契約をしておいて、不適格だと分かったら、その時点で解任したら。いいじゃないか」
しかし、1年契約のあとで『再契約』をしないのと、2年契約の後半を解約するのでは、お金の払い方が違う。
再契約をしない場合は、契約期間満了で、それ以上、お金の問題は生じない。ところが2年契約の後半を破棄するのであれば、協会側の契約違反であるから、仕事をしてもらわなくても、2年目の給料を払う義務が生じる。アメリカやヨーロッパの人なら、必ず2年目の支払いを要求するだろう。そういうケースは、日本のプロ野球でもサッカーでも、現実に起きたことがある。
☆加茂周流のチーム作り
加茂監督の続投が議論になったところをみると、加茂監督の場合の1年契約は、そういうケースに備えてではなかったらしい。というのは、加茂監督の1年間に「明らかに不適格」と思われるような形跡は見当たらないからである。
ぼくは、この1年間の日本代表チームが、非常に良かったと考えているわけではない。また、加茂監督の選手起用や作戦が気に入っていたわけでもない。
たとえば、就任最初の国際大会だったサウジアラビアでのインターコンチネンタル選手権で、ラモスや都並を使ったのには首を傾げた。
ラモスや都並は、ハンス・オフト監督のときに主力だったが、ファルカン監督になってから、外されたベテランである。
伸び盛りの若手に国際試合の経験をできるだけ多く与えたい時期だったから、2年後には年齢的に難しいかもしれないベテランをあえて復帰させたのは奇妙だった。
加茂監督は、この点をこう説明している。
「オフト監督の終わったところに戻って、そこからスタートしようと考えたんですよ」
ぼくは、ファルカン監督の1年間も、ムダにしないようにすべきだと考えていた。残り時間は少ないのだから、時計を巻き戻すようなやり方は、もったいないと思った。
しかし、加茂周流のチーム作りをするのは、加茂監督の当然の権利である。別の考え方があるからといって「不適格」とはいえない。
☆続投が当然だ!
加茂ジャパンは、香港のダイナスティ・カップで優勝し、ロンドンのインターナショナル・チャレンジで経験を積み、若手もチームに加わってきた。
国際試合の内容には、出来不出来はあったが、ブラジルやイングランドに敗れたのを、とやかくいう人はいないだろう。南米や欧州のプロとアジアの間に大きな差があることは今のところは止むを得ない。アジアのチームとの試合は、みな互角以上に戦っている。
この段階での試合結果に一喜一憂することはない。本当に重要なタイトルマッチはなかったのだから「結果を出せ」といっても、やはり重要なのは「内容」である。こういうように考えれば、加茂周監督を「不適格」とする理由は何もない。
にもかかわらず加茂監督の続投が議論になったのは、ワールドカップ予選に勝つために「よりよい選択」があると協会の強化委員会が考えたからだろう。
つまり、実績があり、日本のサッカーを知っている外国人監督を起用すれば、もっと、うまくいくという考えがあったのだろう。
しかし、そういうことは1年前に、つまりファルカン監督の後任を選ぶときに考えるべきことだった。
ぼくは、監督が成果をあげるには少なくとも2年はいると考えている。1年ごとに監督を取っかえ引きかえしていては、落ち着いてチーム作りをするひまがない。
だから、加茂監督の続投が、当然だとぼくは考えたわけである。
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