サッカーのテレビ中継が増えただけでも、うれしいと思っているのだが、そのうち音声も文字も音楽も動く映像も、自由自在に飛びかう時代が来るらしい。いわゆるマルチメディアである。そのときにサッカーはどうなるのか。2002年のワールドカップに間に合うのか。
☆サッカー・オン・デマンド
このところ忙しく、なかなかサッカー場に出掛けることができないので、テレビのお世話になることが多い。放映回数が減ったなどという人がいるが、毎週、どこかの試合の中継があるのはありがたい。Ｊリーグ発足前に比べれば、天と地の違いである。ホームビデオに録画できるから、都合の悪い時間帯の試合でも後から見ることができる。テレビ局さまさま、テクノロジーさまさまである。
とはいえ、昔のことを思えば、欲深い要求だとは思うが、もう一息、テクノロジーの神様に頑張ってもらいたい。
というのは、ぼくの住んでいる地域では、必ずしも、ぼくの見たい試合を視聴できるとは限らないからである。まったく中継をしていないのなら諦めるしかないが、東京では放映している試合を、関西では中継してくれないなんてことがよくある。これを技術の念力で、ぐっと関西に引き寄せる手がないものか。
京都と奈良の中間くらいに「関西文化学術研究都市」と名付けたマルチメディアの実験地区がある。
この地域には光ケーブルの回線が張り巡らされていて、家でボタンを押して見たい映画の注文を出すと、センターに用意してあるビデオが家庭のテレビ受像機に送られてくる。これをビデオ・オン・デマンドという。注文に応じるテレビである。
同じように、自分の家でボタンを押して見たいサッカーの試合を見ることはできないだろうか。つまり、サッカー・オン・デマンドである。
☆2002年の情報社会は？
このテレビ・オン・デマンドは、ふつうの電話回線ではできないらしい。道路にたとえると、電話は田んぼのあぜ道のようなもので、人が歩くのがやっとである。つまり音だけ伝えるのが役目である。大型トラックがすっとばすには、ずーっと広い舗装道路が必要だ。つまり動いているカラーの映像を刻々に送るには、光ファイバーのケーブルが張りめぐらされなければならない、ということのようである。
光ファイバーの回線網は2015年だか、2020年だかには全国に張りめぐらされるらしい。もっとも本当に各家庭にまで光ケーブルが来るのか、町の入り口までしか来ないのかは知らない。先日、マス・コミュニケーション学会の分科会に迷い込んだら、この問題を、わいわい議論していたが、門外漢のぼくには、さっぱり分からなかった。
分科会で、ぼくが気にしたのは、それが2002年より先だということだけだった。つまり、日本でサッカーのワールドカップを開く予定の年には、まだ光ファイバーのケーブル網は、ぼくの家までは張りめぐらされていないらしいのだ。
ワールドカップの試合は、全国15都市に分散して行なわれる。同じ日に４試合が同時に行なわれる可能性がある。
そのうちの好きな試合を、自分の家に居ながらにして、こちらから注文を出して選んで見られるようならありがたい。ワールドカップ・オン・デマンドができればいいのにな、と思った。
☆全国の主要都市で！
全国津々浦々の家庭の軒先まで、光ケーブル網が届くのを2002年に期待するのは無理らしい。つまり自宅でワールドカップ・オン・デマンドをとは、いかないようだ。
ただし、同時に行なわれる４試合のうちの一つを選んで見るだけなら同時に４つのテレビ局が、別々の試合を中継してくれればできないわけではない。
つまり茶の間に寝そべって、チャンネルをカチカチ回して、好きな試合を選んで見ればいい。
ぼくは、テクノロジーの神様に、もう少し欲張った願を掛けている。
一つの願は、大型の精細画面で見ることである。いまのハイビジョンを、さらに良くしたものができないか、ということである。立体画像で現場にいるような雰囲気まで味わえれば最高だが、これは欲張り過ぎで罰が当たりそうである。
もう一つの願は、その日の試合だけでなく、必要に応じて、前の試合も自由に検索できることである。たとえば決勝戦の前の日に、両チームの過去の試合を呼び出して、必要な場面だけ見ることができれば大いに参考になる。もちろん巻き戻しやスローでの再生が自由にできるようであってほしい。
2002年に、これを各家庭でやるのは無理にしても、光ケーブルの幹線は間もなく全国に行き渡るそうだから、全国主要都市に「マルチメディア・センター」を設けて、そこで公開するのはどうだろうか。これなら、技術的には可能なんじゃないだろうか、などと夢を膨らませている。 |
