毎年夏休みに東京郊外の「よみうりランド」で全日本少年サッカー大会が開かれる。子どもたちの猛暑を吹き飛ばす熱戦は、見るたびに気持が、すかっとする。サッカーの普及と向上に、大きな貢献をしてきた大会だが、「そろそろ廃止したら」という意見も出ているらしい。
☆少年大会の過熱
「小学校のスポーツ大会、勝負より交流を」
こんな見出しの記事が新聞に出ているのが目に付いた。
子どもたちのスポーツが「指導者や親たちの過熱で、勝負にこだわりすぎるようになっている」という指摘は、今に始まったことではない。このビバ!サッカーでも数十年にわたって、何度も取り上げている。
それでも、この記事に注目したのは、そのちょっと前に日本サッカー協会の幹部の一人から「少年サッカー大会をやめようかという意見が出ているんですがね」と相談を持ち掛けられたばかりだったからである。
いまや、少年サッカーは、全国津々浦々に広がっている。夏に「よみうりランド」で開かれる全日本少年サッカー大会の予選に参加するチームは8000を超えている。
それだけに、都道府県大会を勝ち抜いて「よみうりランド」に来るチームは燃えている。指導者や親たちも、「ここまできたからには日本一に」と勝負にこだわる。
それが、成長途上の子どもたちの体と心を傷つける場合があり、サッカーにすぐれた素質を持つ素材が、大きく伸びるのを妨げることもある。
そんな弊害が目立ってきたので、全日本少年大会を廃止してはどうか、という意見が出ているらしい。
新聞の方の記事を見ると、これは文部省の専門家会議のまとめた提言を取り上げたもので、その会議の座長は、Jリーグ理事で審判を担当している浅見俊雄氏だった。こっちもサッカーに縁があるようだ。
☆少年の未来のために
新聞の記事によると、文部省の専門家会議は、昨年7月から10月にバレーボールなど9つのスポーツの全国大会を調べたらしい。
いくつかのスポーツでは、成長途上の小学生のことを考えて、日程を緩やかにしたり、1日の試合数を少なくするなどの試みはしている。主催者側も考えてはいる、ということのようである。
しかし、体操など一部の大会では、指導者と親たちが勝たせることに、一生懸命になりすぎているケースも多いと指摘している。
ぼくは、この記事の書き方は「遠慮がちだな」と感じた。
現実には、どのスポーツでも、指導者と親が「勝たせること」に一生懸命になりすぎている。そして一生懸命なチームが優勝している。
「子どもたちの将来のために無理はしないようにしよう。上手な子は将来大きく伸びるように指導しよう。不器用な子でもスポーツを楽しめるようにしてやろう」と考えているスポーツ少年団も、各地にたくさんある。しかし、そういうところは、全国優勝どころか、全国大会に出てくることも難しい。
主催者の方はどうか。
ここで主催者というのは、多くの場合、競技団体と新聞社である。
全日本少年サッカー大会でいえば財団法人日本サッカー協会と読売新聞社である。この両者が、子どもたちの未来のためを、まったく考えていないとは言わないが、十分に周到な配慮をしているかといえば、それは、かなり疑わしい。
☆発展的な改革を
競技団体でも、新聞社でも、子どもたちの全国大会を開催する大義名分は、もちろん用意している。
@子どもたちのスポーツ普及に役立っている。
A子どものころからスポーツをすることによって、レベルの高い選手が育ってくる。
大きな大義名分は、この二つだろう。
全日本少年サッカー大会について言えば、この二つの点で大きな貢献をしてきたことは間違いない。
少年サッカー大会が、日本サッカー協会の手で「少年団大会」として、ほそぼそと始まったときには、全国で数百チームしか参加がなかった。28年目を迎えた今年は8400チームに達している。これが全国大会開催の効果によることは間違いない。
少年大会の参加者のなかから、テクニックのいいプレーヤーがたくさん出てきたのも間違いない。現在のJリーグのプレーヤーで、予選を含めて少年大会を経験していないものは、ほとんどいないのではないか。
そういうわけで、少年大会に大いに意義があったのは確かである。
ぼく自身は、この大会には、読売新聞社が加わる前、少年団大会として、ほそぼそと始まるときから巻き込まれでいたので愛着がある。「弊害があるからやめろ」といわれると抵抗を感じるのだが、改革のときであるのも確かである。
ただ、少年サッカーが、また下火になって、元も子もなくすようなことには、してほしくない。発展的な改革をお願いしたいと思う。
|