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サッカーマガジン 1995年7月5日号

ビバ!サッカー

2002年招致の意義は!

 2002年のワールドカップ開催地決定は、来年早々になるらしい。日本と韓国の激しい招致合戦が過熱しないように、早めに決めてしまおうということだろうか? 開催予定の地方都市にとって、それほどの競争をして開催することに、どんな意味があるのかを考えてみた。

☆新潟のシンポジウム
 先日(6月12日)に新潟で、ワールドカップについてのシンポジウムがあった。
 新潟は2002年ワールドカップ開催予定都市の一つである。そこで2002年新潟招致委員会の総会が開かれ、引き続いて、みんなで新潟開催の意義について勉強した、というわけである。
 シンポジウムのパネリストは3人だった。
 まず、平山征夫・新潟県知事。この人は日銀の支店長から知事に転身した人で、アイディアに富み、考え方が柔軟で、実行力がある。話がうまく、ジョークが次々に飛び出す。東京の青島さんや大阪のノックさん並みのタレントである。青島さんとノックさんは、知事としての実力は未知数だが、平山さんは行政官として折り紙付きだから、こっちの方が、本物の「タレント知事」だと、ぼくは思っている。
 次に金田喜稔さん。こちらはサッカー・マガジンの読者なら知らない人はないだろう。日本代表でも、マリノスの前身の日産でも大活躍した名プレーヤーだった。テレビ解説者として、いま日本で評価できるのは金田さんを含めて2〜3人しかいないと、ぼくは思っている。
 もうひとりは、スポーツニッポン編集委員の大隅潔さん。1964年の東京オリンピックに水泳の日本代表として出場。新聞記者としては相撲やプロ野球を担当、テレビでも活躍している。
 こういう異色の顔触れを揃え、ぼくがコーディネーターをつとめた。

☆W杯は来るのか?
 シンポジウムのテーマは「ワールドカップで新潟は、どう変わるか」だった。聴衆は地元の政財界の偉い先生方なので、ぼくたちは、開催の意義をPRして、協力をお願いする役回りである。
 最初に「ワールドカップは本当に日本にくるのか」が問題になった。
 2002年の開催地には、日本と韓国が立候補している。決定は予定より早まって、来年早々だろうといわれている。
 FIFA(国際サッカー連盟)の理事21人の投票によるが「韓国の各個撃破工作が激しいらしい」と大隅さんが、新聞記者の立場で得ている情報を報告した。
 お客さんが心配しては困るので、ぼくが補足説明をした。
 「施設も、ホテルや交通事情も、日本の方が整っています。客観的にみれば日本です。FIFAの理事はみな、それぞれの国で高い社会的地位を持っておられる方なので、良識ある選択をされるでしょう」
 そして付け加えた。
 「FIFAにとって、ワールドカップは絶対に失敗を許されない大事なイベントです。だから、何よりも安全を選ぶだろうと思います。南北分断の政治的な不安定要因を抱える韓国よりも、経済的に力のある日本の方を選ぶに違いありません」
 宮沢元首相が、自らヨーロッパヘ行ってFIFAの幹部にPRしてくれたのも、よかった。
 米国ワールドカップの時に、キッシンジャー元国務長官が先頭に立ったのと、同じような効果があっただろうと思う。

☆地方の時代の起爆剤に
 ワールドカップを開催したら、どんなメリットが、あるのだろうか。
 これは開催予定地になっている都市や県にとって大問題である。
 開催予定地の15の自治体は、招致費用として毎年、億単位のお金を拠出している。県民、市民のお金を使って、ワールドカップが来なかったら税金のむだ使いになる。
 招致に成功しても、開催が地元の人々にとって、役に立たないものであっでは、知事さんや市長さんにとっては意味がない。ワールドカップによって、地元がどう変わるかが問題である。
 平山知事が、いい発言をした。
 「ワールドカップのときに世界中から来た人たちが楽しんでもらえる新潟県にしたい。世界の人が楽しめる所、それが新潟の財産になって残るだろう」
 要するに2002年を機会に「豊かな町作りを」ということだが、それを「楽しめる町に」と表現したところがすばらしい。
 金田喜稔さんは、楽しい地域作りの具体案として「いろいろな人たちが、いろいろなスポーツに利用できる施設と指導者を持つスポーツ・クラブを」と提案した。こういうクラブの施設は、ワールドカップに来た国の代表チームが練習するためのキャンプとしても使えるだろう。
 全員の結論は「これからは中央集権ではなく地方の時代だ。オリンピックは一つの都市で開催するが、ワールドカップは、全国各地に分散して開催する。これを地方の時代の起爆剤にしよう」ということだった。


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