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サッカーマガジン 1995年4月19日号

ビバ!サッカー

日本のレベルは上がったか?

 3年目のJリーグは予想どおり実力接近で面白い展開になっている。そのなかで明暗を分けているのは、これも予想どおり外国人プレーヤーの働きぶりである。それじゃ日本人プレーヤーはどうしているのか。日本のサッカーは伸びていないのか。そこんところを考えてみた。

☆Jリーグ効果は?
 「Jリーク効果も薄れてきたな。テレビの中継は減ったし、スタンドも満員ばかりじゃない」
 友人が、こう言って嘆いた。
 「冗談じゃない」
 と、ぼくは思う。
 「Jリーグ効果」が出てくるのはこれからである。
 ギャルがスタンドを埋めた爆発的な観客動員、各局競ってのテレビ中継――ああいうものは、しょせん一時のあだ花だ。
 「一時的なブームが終わったあとに残る基礎の部分が、前より大きいかどうかが問題だよ」
 ぼくは3年前から、こう言っていた。たしか「ビバ!サッカー」にも書いたはずである。
 さて、ブームが去りつつあるいま、何が消え、何が残りつつあるだろうか。
 観客。これは、思ったほどには滅っていない。Jリーグは新しいファン層を開拓し、古いファン層を呼び戻した。これが定着するかどうかは、まだこれからの努力によるだろうが、財産は確実に前より増えた。
 テレビ中継。これは3年目にがた落ちになった。最初はバスに乗り遅れまいと誰でも手をあげるが、バスがたくさん来ることが分かれば、先を争って乗ることはなくなるのは、止むを得ない。しかし、ある程度はバスの便数を確保する必要があるから「テレビより観客数ですよ」というチェアマンの負け惜しみには賛成しかねる。
 テレビ対策は考え直す必要があるだろう。

☆外国人選手のおかげ?
 かんじんの試合のレベルはどうだろうか?
 「いやあ、だんだん、ひどくなってきた。ゴール前への放り込みが増えている」
 読売クラブ全盛時代の「小径を通す密集突破」に郷愁を感じている友人は、ヴェルディの不振に不機嫌である。
 これは、いささか見当外れではないか。
 試合ぶりが気に入るかどうかは見る人の好みによるだろうが、試合のレベルは客観的に評価しなければならない。
 ぼくの見るところでは、攻撃の方では、レベルは目覚ましく上がっている。
 ゴール数はずいぶん多くなっているし、ゴールへの道筋もパターンが増えている。
 放り込みだって、やみくもに左右から高いボールを上げるのが、なくなったとは言わないが、少なくはなった。センタリングも味方との呼吸を合わせ狙いを持ってやっている。
 「でも、それは外国人選手じゃないか」
 確かにね。
 あらかじめ見て、アイディア豊かに狙いのあるセンタリングを、正確に上げるのは、外国人選手が多い。
 ゴール前でヘディング・シュートをするのも外国人選手である。
 ぼくは思う。
 「でも、それは外国人選手がストライカーや中盤の攻撃的ポジションに多いからじゃないか。日本人選手だって、やらせれば出来るよ」

☆日本人ストライカーも!
 本当のところ、日本人ストライカーも悪くない。
 テレビで見ていても実に魅力的なプレーがある。
 フリューゲルスの前園真聖くんなんか面白いね。
 足の裏でぱっと引いて、ぱっと前へ出る。
 そのテクニックと闘争心が、なかなかである。
 グランパスエイトの小倉隆史くんも才能があると見たね。
 中距離パスを受けると、ワンタッチで、さっと思わぬ方向に出して、さっとかわした。
 そのテクニックとアイディアが並みでない。
 ジェフ・ユナイテッドの城彰二くんも、見せるプレーヤーだ。
 センタリングを足の甲を浮かせてすぱっと止め、そのまま、すぱっとシュートした。
 そのテクニックとすばやさが魅力的だ。
 「たまたま、テレビでいい場面を見ただけだろ。日本人の若手のストライカーは、外国人プレーヤーのおかげで生かされてんだよ」
 外国人のおかげだって?
 それは、いいじゃないか。
 Jリーグが強引にスタートしたおかげで、世界の最高級プレーヤーが日本に来た。
 ジーコが来た。リトバルスキーが来た。ラモン・ディアスが来た。ストイコビッチが来た。
 彼らのおかげで、日本人ストライカーの才能が引き出されたのなら、それこそ“Jリーグ”ではないか。


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