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サッカーマガジン 1995年4月12日号

ビバ!サッカー

Jリーグ序盤戦から

 Jリーグ3年目の前期、サントリーシリーズは、予想以上の大激戦になりそうだ。第2節でヴェルディ、エスパルス、ベルマーレが思わぬ大敗、新加盟のセレッソが2試合連続の勝ち星と「今季はいろいろありそうだ」という感じの序盤戦である。

☆マリノス恐るべし!
 Jリーグ開幕2試合目で、チャンピオンのヴェルディが、マリノスに6対2で大敗した。これには、びっくりした。ぼくのJリーグ3年目の予想は、初っぱなから大はずれである。
 ヴェルディが断然だと思っていたわけではない。マリノスが弱いと思っていたわけでもない。
 しかし、シーズンはじめは、外国人の新監督は、まだチームを掌握しきれないだろうから、開幕当初はヴェルディなど、前年に実績を残しているチームが有利と考えていた。
 ところが、アルゼンチン人の新監督のマリノスが大勝した。
 マリノスは、アルゼンチンのスタープレーヤーを、つぎつぎに集め、外国人プレーヤーは断然、粒選りである。
 問題は、外国人のスターたちを統制し使いこなすことだが、これを日本人の監督に求めるのは難しい。
 そこで、マリノスは、ソラーリ監督を招いた。新監督が手腕を発揮できるようになれば、優勝候補にのし上がるであろうことは、もともと考えられていたことではある。
 もちろんシーズンは、まだ始まったばかり。1試合や2試合の結果だけで結論を出してしまうわけにはいかない。
 しかし、新外国人監督の手腕が、予想より早く実ったのであれば「マリノス恐るべし」である。
 「これは、これは。Jリーグの様変わりが予想より早くやってきたのかな」
 という感じである。

☆Jリーグの様変わり
 ヴェルディ6失点の大敗について、ある新聞は「天敵マリノス復活」という見出しをつけていた。
 ぼくの考えでは、この見出しは適当ではない。マリノスは復活したのではなく、変わったのだと思う。
 Jリーグの生まれる直前、日本リーグの終わりごろに、ヴェルディの前身の読売クラブと、マリノスの前身の日産が優勝争いのライバル同士で、読売が日産を苦手にし続けた時期がある。
 それを念頭に置いての見出しだろうが、今季のマリノスは、かつての日産とは違う。
 何が変わっているかといえば、外国人パワーが、すっかりアルゼンチン勢で固められたことが、もっとも大きい。
 「どのチームも、選手は外国人、監督も外国人じゃ情けないよな。日本人は何をしてるのかね。ま、Jリーグは、日本リーグじゃないんだから仕方ないか」
 愛国心あふれる友人は、こういう無茶苦茶な表現で嘆いた。
 確かに、Jリーグは3年目にして外国人に支配されている。
 「これは仕方のないことだよ」
 ぼくは友人の嘆きを突き放した。
 質の高い外国人選手が、どのチームにもいるのだから、日本選手の影が薄くなるのは止むを得ない。なにしろ円高で、母国で稼げる給料の10倍近くを日本でもらえたりするのだから、外国から選手も監督も飛んでくるわけである。
 Jリーグの様変わりは、外国人選手と監督による様変わりである。

☆外国人の使い方は
 外国人によって、Jリーグが様変わりした。それにともなって、試合の見方も変えなくちゃならないんじゃないか、などとも考えている。
 たとえば、外国人プレーヤー3人を、どのポジションで使うか、という問題がある。
 攻撃的なポジションに、3人とも並べる手がある。最前線のストライカーと中盤の前の方に、外国人を集めてしまう集中方式である。この方式で、強力な南米のトリオが息を合わせて攻め込んできたときに、これを防ぎきるのは、ふつうの守りでは、なかなか難しい。勝負のカギを握るのは、日本人プレーヤーによる守りの能力になる。
 外国人プレーヤーを、各ポジションに配置する方法もある。
 ストライカー1人、中盤に1人、守りのかなめに1人というような分散方式である。この場合には、攻めの場面と守りの場面で、それぞれ、日本人と外国人のコンビのよさがカギになる。
 だから、どのポジションの日本人プレーヤーにも、外国人のスタイルと能力に合わせることのできる、技術と戦術能力の柔軟性が必要になる。
 実際には集中方式と分散方式の両極端があるわけではない。ただ、試合の見方のひとつの方法として考えてみただけである。
 たとえばマリノスの大勝は、アルゼンチン・プレーヤーによる集中方式の成功であり、ヴェルディの大敗は、ブラジル人プレーヤーによる分散方式の失敗だったのかな、と考えたりするわけである。


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