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サッカーマガジン 1995年3月29日号

ビバ!サッカー

Jリーグ'95を占う

 Jリーグ3年目だ。石の上にも3年だ。ここを乗り切れば、日本のサッカーのプロフェッショナリズムも軌道に乗るのではないか。これまでちょっと振るわなかったチームが、外国人の新監督を迎えて体制刷新をはかったので、実力接近、混戦だろうと思うのだが…。

☆前期はヴェルディ有力?
 3年目のJリーグは、波乱続出で面白くなるだろうと期待している。他のチームが、それぞれ体制刷新をはかったからである。
 しかし、前期のサントリーシリーズは、まだ、ヴェルディ有利ではないだろうか。
 ヴェルディにとっては、ラモスの年齢と怪我が不安材料ではあるが、ラモスは、これまでも、しばしば戦列から離れていた。ラモス不在でも戦えることを、ヴェルディは、これまで何度も証明してきている。
 ラモスがいれば、ラモス中心で戦えるし、いなくても、それなりに戦える。そういう柔軟性がヴェルディの良さである。
 新加入のアルシンドは、実力も、限界も、すでに分かっている。要はアルシンドの能力を、目いっぱい、生かせるかどうかだ。
 新しい戦力を受け入れて、とけこませる包容力の点でも、ヴェルディは実績を残している。アルシンドを使いこなすことは、十分できるだろう。
 ネルシーニョ監督と外国人プレーヤーが、ブラジル勢で統一されているのも、いいと思う。柔軟性と包容力があるといっても限界がある。言葉やスタイルの問題があるから、ブラジル・スタイルのなかでチームを動かせるのがいい。
 若いプレーヤーが、どんどん伸びてきているのも、ヴェルディの良さである。昨年は、ディフェンダー広長優志が収穫だった。
 こういう条件を考えあわせて、前期の優勝は、ヴェルディだろうと思うわけである。

☆注目の外国人新監督
 体制刷新を試みたチームのカギは、まず新しい外国人監督だろう。
 マリノスは、アルゼンチンのソラーリが監督になった。ラモン・ディアス、サパタなど、外国人プレーヤーは、アルゼンチンから呼んでいるのだから、監督もアルゼンチン人にしたわけである。
 レッズも、似たような事情である。ここは、これまで日本人監督だったが、Jリーグ3人目は、とうとうドイツ人になった。
 ルムメニゲ、ブッフバルト、バインとドイツ代表のスターを並べているのだから、これをコントロールするには、ドイツ人の監督がいい。
 改革のスタートとしては正解である。
 ただ、新体制の成果が分かるのは後期になってからだろうと思う。
 外国人新監督でも、事情の違うチームもある。
 グランパスは、フランスからアーセン・ベンゲルを監督に迎えたが、外国人プレーヤーは、ブラジル、ユーゴ、フランスの混成である。
 ガンバの新監督は、ドイツ人のベルトである。しかし外国人プレーヤーは、旧ソ連、クロアチア、オランダだ。
 サンフレッチェは、オランダのビム・ヤンセン監督。ここもノルウェー、旧チェコスロバキア、韓国、オランダと、外人部隊は混成である。
 こういうチームの新監督は、やりにくい。
 1年目で成果を期待するのは、無理ではないだろうか。

☆改革2〜3年目が勝負
 ヴェルディのライバルになりそうなのは、改革が、すでに2年目、3年目に入っているチームだろう。
 そういうチームは結果を出すことを求められている。そして、それに応えられる力をつけつつある。
 ベルマーレは、天皇杯優勝で、すでに結果を出した。
 古前田監督−ニカノール・コーチのコンビは、5年目である。外国人プレーヤーはブラジル勢だけ。監督とコーチの関係が緊密であれば、理想的な体制だ。名良橋晃、名塚善寛など若手も育っている。
 ジュビロは、オフト監督が2年目で、今年は「勝負」である。日本代表チームで、選手たちの戦術能力を開発したオフト監督のことだから、ジュビロでも、日本人プレーヤーの能力向上は期待していいだろう。
 問題点は、外国人プレーヤーのコントロールではないか。
 オフト監督自身は、オランダではプレーヤーとしても、プロのコーチとしても、とくに有名だったわけではない。監督としての実力を、オランダから呼んだスター・プレーヤーに見せ付けるには、さらに時間が必要かもしれない。まして、イタリア人のスキラッチを使いこなすのは、骨が折れるに違いない。
 ともあれ、この2チームは、なんらかの形で、前期の優勝争いに絡んできそうである。 
 もうひとつ、注目はフリューゲルスである。ブラジルのパルメイラスから3人をまとめてとった。木村文治・新監督が、このトリオを使いこなせれば面白い。


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