アーカイブス・ヘッダー

 

   

サッカーマガジン 1994年10月5日号

ビバ!サッカー

広島アジア大会、二つの不安

 10月に入るとすぐ、広島でアジア競技大会が始まる。サッカーは、もちろん、もっとも重要な競技の一つである。そのサッカーで日本代表チームに、ぜひ優勝してもらいたい。また将来につながるように、サッカー競技の運営をうまくやってもらいたい、と思うのだが…。

☆日本代表は勝てるか
 広島のアジア競技大会で、日本代表チームは優勝できるだろうか?
 ぼくは、あまり楽観的でない。
 「カズが出られないと難しいね」
 と友人が聞く。
 いや、カズがイタリアで大ケガしたのばかりが悲観材料ではない。カズ1人が欠けただけで、戦力ががた落ちになるようだったら、最初から見込みはない。
 「そうすると、ファルカン監督ではダメということか」
 それも違う。たしかに広島アジア大会のことだけを考えれば、ワールドカップ予選で、あれだけの力をみせたオフト監督に続けてやってもらっていた方が、よかったかもしれない。ファルカンに十分な準備の時間がなかったことはハンデである。しかし、選手の力を見る目と戦術家としての手腕は、ファルカン監督も、ちゃんと備えているだろうと思う。 
 不安を感じるのは、日本サッカー協会の「勝つ意志」である。
 カタールのワールドカップ予選のあと、日本サッカー協会の強化責任者は「次は広島だ」とは、言わなかった。次の目標は「4年後のワールドカップ予選だ」といっていた。
 日本で行なわれる大会で優勝することが、サッカーの底辺を伸ばしていくために、どんな影響を与えるだろうか。アジアのタイトルを大切に考えることが、アジアの1国である日本にとって、どんなに大切であるか。そういうことに深く思いをいたしていないように思われた。 
 これが、いまでも、もっとも大きな不安材料である。

☆国体方式のお役所運営
 広島アジア大会への不安が、もう一つある。それは大会組織である。
 選手村の食事に選手たちが不満をいうだろうとか、サッカーの試合でファンが騒ぐだろうとか、そんな心配をしているわけではない。
 地元広島では、県知事さんも市長さんも大張り切りで万全の準備を整えているし、もともと日本は組織力では世界一といっていい国である。大会は、完全過ぎるほど完全に成功するんじゃないかと思う。
 むしろ、お役所が完全すぎる準備を整えようとしているのが、かえって心配である。
 これは、毎年行なわれている国民体育大会と同じやり方である。
 秋の国民体育大会では、40以上の競技が一つの県内で、1週間のうちにいっせいに行なわれ、2万人近い人たちが全国から集まってくる。その面倒をみるには、たいへんな労力とお金と準備がいる。
 これはスポーツ団体だけの力ではとても出来ないので開催県、つまりお役所が全力をあげて組織を動かして準備し運営する。スポーツの大会というより、お役所の大会である。  
 「いや、県民の手足として役所が働いているので、役所が独断専行しているわけではない」 
 と、お役所は言うだろう。
 そうには違いないが、官僚組織のおかげでスポーツの大会が完全に行なわれても、あまり面白くはない。
 スポーツ大会は、スポーツ団体に任せて、お役所は手助けをする程度がいいと思うのだが、広島のアジア大会は、そうなっていない。

☆2002年とのつながり
 実は広島のアジア大会で、ぼくは頼まれてプレスセンターの仕事を手伝うことになった。プレスセンターは、各国の新聞記者が集まって仕事をするところで、ぼくは国際的な経験をもつジャーナリストとして、その手助けをするわけである。それで大会組織の運営ぶりを内側からのぞける立場になったわけである。
 国民体育大会やアジア競技大会のような大きな大会を「お役所主導」で組織するのは、日本では当たり前である。大会を無事に成功させるには、これが安全である。
 それはそれで悪くはないのだが、サッカーに関しては、ちょっと気になるところがある。 
 サッカーは広島でアジアカップをやったこともあるし、国際大会の運営には比較的慣れている。したがって組織委員会、つまり、お役所に手とり足とり面倒をみてもらわなくても、かなりサッカー協会の力で、やれるはずである。しかし、他の競技と横並びにしなければならないためもあるのだろうか、やっぱり「お役所主導型」である。 
 2002年に日本でワールドカップをやることになったとき、広島も会場の候補地だ。その時は、スポーツ団体の方が主導権をもって、お役所は黒子として助けてほしい。アジア大会の運営方式が2002年につながりそうにないのが、事情は分かっているけれども心配になった。 
 日本代表の成績にしろ、運営の方式にしろ、それが未来につながるようにしてほしい、というのが、ぼくの願いである。


前の記事へ戻る
アーカイブス目次へ

コピーライツ