二つのよくないニュースがあった。マラドーナが来日できなかったことと、アジア・サッカー連盟（ＡＦＣ）総会の選挙で日本が完敗したことである。この二つが結びついて、2002年のワールドカップ日本招致に重大な影響を及ぼさないかと心配になってきた。
☆マラドーナ入国問題
残念だったことの一つは、マラドーナの日本入国が認められなかった問題である。そのためにアルゼンチンは５月のキリンカップヘの参加を断った。ブエノスアイレスでは、日本大使館へ催涙弾が仕掛けられた。アルゼンチンの人たちの日本への感情を悪くしたことは確かだろう。
マラドーナは、麻薬の問題で有罪判決を受けている。近い過去に麻薬による逮捕歴などがある人物の入国を認めないのは、もともと日本政府の方針である。それは前から分かっていたことだから、もっと前から打つ手がなかったのかと、それが一つ残念である。
麻薬撲滅は世界で非常に重大な問題になっている。また外国人の入国を認めるかどうかは、その国の主権にかかわる重要な事項である。だから、日本政府が『特別扱いしない』と筋を通したことに苦情を言おうとは思わない。
しかし、この判断をした法務大臣の態度は、もう一つ、残念だった。
翌日の朝のＮＨＫテレビに、たまたま出演して、この問題を話していたが、おそらく、この新任の法務大臣は、サッカーが世界でどんな地位を占めているか、マラドーナがどんなプレーヤーであるか、これがアルゼンチンとの関係にどう影響するか、などの点に知識もなく、考えたこともなかったのではないか。
「影響を心配をしているが、麻薬撲滅のために、残念だけれども今回は止むを得ないと判断した」というくらいのコメントがあっても、よかったのではないか。
☆ＡＦＣ総会での完敗
同じころに、クアラルンプールで開かれたアジア・サッカー連盟（ＡＦＣ）の総会から、残念なニュースが伝わってきた。アジアに割り当てられている国際サッカー連盟（ＦＩＦＡ）副会長１人を選ぶ選挙で、これまでＡＦＣ副会長だった村田忠男氏が落選し、韓国サッカー協会会長の鄭夢準（チョン・ムンジュン）が選ばれた、というのである。
鄭夢準氏については、３月９日号のビバ！サッカーで紹介したことがある。米国の大学で博士号をとった44歳のハンサムな紳士で、韓国の『現代財閥』の一族である。
韓国は、日本と同じように、2002年のワールドカップ開催をめざしている。鄭夢準氏のＦＩＦＡ副会長立候補は、そのためのキャンペーンの一環だった。
日本の村田忠男氏は、日本サッカー協会の副会長であり。2002年ワールドカップ招致委員会の事務局長である。したがって、今回の村田氏の落選は、2002年ワールドカップ招致の第１ラウンドで、日本が韓国に遅れをとったことになる。
ＦＩＦＡ副会長には４人が立候補し、鄭夢準氏が11票、クウェートのアーマド・ファハド氏が10票、カタールのモハメド・ハマム氏が８票、村田氏は２票だった。選挙には裏の取引などがあるから、村田氏の票が少ないのには、裏の事情があるかもしれない。とはいえ、結果的にワールドカップ開催地を決定するＦＩＦＡ理事会の一員を韓国にとられたのは、おおごとではないか。
☆政財官民一体のＰＲを！
「マラドーナの入国を認めないような国にワールドカップ開催は無理だよな」と友人が政府の無理解を嘆いた。しかし、世界選手権のワールドカップと招待国際大会のキリンカップでは性質が違う。ワールドカップなら政府も別の対応をするだろうと、ぼくは信じている。
ＡＦＣの方が、2002年への影響は、ずっと深刻だ。たとえ欧州や南米の理事たちが「日本が適当だ」と思っても、お膝元のアジアでの支持を得られなければ「アジアで初めてのワールドカップ」を日本に与えるわけにいかないからである。
韓国は、若くて国際感覚のある会長が「アジアのサッカーの繁栄をサポートします」というキャンペーンを展開して、第１ラウンドをかちとった。「現代財閥」の資金が全面的に支援してくれるような印象を、多くの国に与えたのだろうと思う。
これに対して日本は、サッカー協会だけで運動しているような印象を与えていたのではないだろうか。
実際には、会場都市に名乗りを上げている15の自治体がぬかりなく準備している。政府と財界も、結束して支援する体制を整えることが出来るはずである。だが、それがアジア各国のサッカー発展に直接役立つようなキャンペーンは行われていなかったのではないか。
今からでも遅くない。政財官民が結束して招致運動をしている体制を示し、アジアに目を向けてキャンペーンの再スタートを切るために、2002年ワールドカップ招致委員会を立て直さなければならない。
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