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サッカーマガジン 1994年3月30日号

ビバ!サッカー

Jリーグの2年目を占えば

 いよいよJリーグ2年目。毎日の新聞にも、サッカー・マガジンにも、シーズンの予想がいろいろ出たが、遅れ馳せながら、ぼくなりの見どころを書いてみたい。チームにとっても、プレーヤーにとっても、また監督にとっても、2年目こそ真価を問われる勝負の年である。

☆ヴェルディは苦戦? 
 新聞に特集された「Jリーグ・メンバー一覧」を眺めながら、「ヴェルディは苦戦だろうな」と考えた。
 チーム紹介やら戦力分析やらが、これだけ大きく毎日の新聞に載るようになると、情報の量とスピードについていくのがたいへんで、かえって本当のところが分かりにくい。しかし、情報の洪水におぼれながらも長年の経験で流れの方向は自然に分かる。ぼくのカンでは「今シーズンは大激戦で、ヴェルディは苦戦」と出た。 
 ヴェルディ苦戦と見るのは、今年は新しいものを持っていないからである。 
 昨シーズンは、プロの元祖の意地を見せようと意気込んで、オランダ勢を招くなど松木監督が新しいアイデアを試みた。結果として混乱を招いた点もあったけれど、常に新しい賭けを試みる姿勢は大事である。 
 今シーズンのヴェルディは、ブラジル勢で統一した。これも一つの考えではあるけれど、ただ単に昔に戻るのであれば進歩がない。ラモスはケガが多いし、年齢的にもフル出場の戦力としては期待できない。ビスマルクは、今季は激しくマークされるだろう。彼にとっては、今年は厳しい勝負の年である。 
 いずれにしても、今年のヴェルディは全チームの標的である。ラモスの意地やラモスを中心にした「仲良しクラブ」で切り抜けられるような甘いシーズンではない。 
 頼みはカズだ。カズが中心になってチームを引っ張っていけるようだと話は違ってくる。

☆優勝は5強の激戦? 
 「優勝争いは5強の大激戦だろうな」といったら友人が、「5強って、どことどこだ」と問い詰めてきた。 
 12チームのうちの半数足らずが優勝圏内という意味で、アバウトなことを言っているときに厳密に追求されると困るのだが、ぼくの頭に浮かんだのは、やはり前年度に上位を争ったチームである。ヴェルディ、アントラーズ、エスパルス、マリノス、フリューゲルスの中から優勝チームが出るのではないか。 
 ぼくが一番手にあげたいのは、エスパルスだ。攻撃のトップにガンバから永島をトレードでとり、守りにはブラジルのサンパウロのロナウドを加えた。もっとも効果的な補強をしたチームである。 
 マリノスも期待できそうな気がする。アルゼンチンからストライカーのメディナ・ベージョを加えたのは大きい。ディアスとのコンビが機能すれば、ゴール前の破壊力ではナンバーワンである。 
 アントラーズは、前期で引退するジーコの神通力に、もう頼れない。新しいアイデアでチーム作りをして、後期が勝負かもしれない。 
 天皇杯をとったフリューゲルスは加茂周監督が「ゾーンプレス」に取り組んで3年目である。攻撃的な中盤プレーヤーとして加わった、ブラジルのバウベルが、その中に溶け込めれば面白い。 
 この5強の中から一つだけといわれれば、エスパルスに賭けたい。清水で育ったプレーヤーを主力に優勝できれば、地域のサッカー発展の輝かしい里程標になる。

☆新監督の勝負は?
 「えーと、ほかに1チーム忘れてはいませんか?」と友人が言う。
 この友人は、日本リーグ時代からの古河電工のファンである。古河の後身であるジェフを優勝候補から外したのは、おかしいというわけだ。 
 ジェフも優勝争いに加わる可能性は十分ある。ただ5本の指で数えられるように区切ったら数え忘れただけで、そこはビバ!サッカーの売り物の独断と偏見である。 
 ジェフへの期待は、清雲栄純監督への期待だ。かつて古河をチャンピオンにした実績があるし、日本代表でコーチを務め、今年からジュビロの監督に就任したハンス・オフト監督のもとで学ぶところが多かったに違いない。 
 ただ、清雲監督の本当の勝負は2年目、つまり来年だと思う。オフト監督のもとで学んだものを自分のものとしてチームに植え付けるのには1年以上かかる。リトバルスキーらの外人選手となじむのにも時間がかかるだろう。 
 これは、オフト監督自身にもいえることで、ジュビロにオフトのサッカーを植え付けるのを、1年目に期待するのは無理である。 
 とはいえ、この2人の新監督の手腕は、今シーズンの見どころの一つである。 
 新監督は、ほかに2人いる。グランパスのミルンはともかく、レッズの横山監督は、「来年が勝負」などと悠長なことはいっていられない。日本のサッカーも、三菱のサッカーも知り尽くしているはずだからである。新監督のなかで、いちばん厳しい立場である。


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