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サッカーマガジン 1994年2月9日号

ビバ!サッカー

ヴェルディに何かが?

 Jリーグ元年のチャンピオンはヴェルディだった。1月9日と16日のアントラーズとの決戦を制しただけでなく、シーズンを通して、チャンピオンにふさわしい力があったと思う。そのヴェルディに、また何かが起こっている。それが次のシーズンに、どう影響するだろうか?

☆日本人選手の能力!
 ヴェルディが優勝して、ぼくは、いささか鼻が高い。ヴェルディが1番だと最初から予想していたのが最後にちゃんと当たったからである。
 サッカー・マガジンが特集したシーズン前の大予想で、ぼくは、前期のサントリー・シリーズも、後期のニコス・シリーズもヴェルディを優勝候補にあげた。 
 前期はアントラーズが優勝したけれども、ヴェルディは2位になったので、まあ、当たらずといえども遠からずである。 
 後期はみごとに優勝し、前後期の優勝チームの対決するJリーグ・サントリー・チャンピオンシップも制した。大予想の期待に応えてもらえたので、ぼくは大満足である。 
 日本リーグがJリーグに衣替えして、他のチームの力は確かに上がった。ヴェルディの方は、それほど変わりばえがしていない。にもかかわらず、ヴェルディが優勝するだろうと信じた理由は、こうである。 
 他のチームの力が上がったように見えるのは、実は、どのチームも、外人選手を入れるようになったからである。その点では、かつて典型的企業チームだった三菱(いまのレッズ)や古河(いまのジェフユナイテッド)などは、大きく変わった。 
 しかし、どのチームも世界でトップクラスの外人を取るようになったので、外人3人の力は、そんなに違わない。 
 となれば、優勝を決めるのは、外人以外の日本人選手の能力である。その点では、ヴェルディが一番だと思ったわけである。

☆外人を使いこなす!
 柱谷、北沢、ラモス、カズ、武田と日本代表を出しているように、ヴェルディの日本国籍の選手の能力は高い。これだけの顔触れを揃えたのは、歴代のフロントの才覚の結果であり、それは早くからプロ組織で運営してきたクラブの伝統のおかげである。Jリーグ直前にあわててプロ化したチームとは、わけが違う。今後はともかく、最初の1年目は、プロの先覚者であるヴェルディが有利だと、ぼくは考えていた。 
 ただし、日本代表がワールドカップ予選にとられる期間が長かったのはマイナスの材料だった。前期の立ち上がりに出遅れた原因の一つは、これである。 
 そのマイナスを補ったのは、外人の力だった。ブラジルとオランダの外人選手が組み合わさって、結構いい仕事をした。 
 日本代表がカタールのワールドカップ予選に出掛けている留守中に、ナビスコカップで優勝したのは、藤吉、中村などのクラブ育ちの若手の活躍もあるが、もう一つは、ビスマルク、ペレイラ、ロッサムの力のおかげである。 
 とはいえ、外人選手についていえば、他のチームにも有力なスターがいたわけである。それなのに、ヴェルディの外人が、きわだった貢献をしたのは、ヴェルディが外人選手を使いこなす力を持っていたからだと思う。コーチ陣も、若い選手も、外人選手をチームにとけこませて生かすだけの力量を持っていた。これもプロとしてのクラブの伝統が長かったおかげである。

☆ブラジル体制の今後は?
 Jリーグ・チャンピオンシップでは、奇妙なことがあった。 
 それは守備ラインから、オランダ人のロッサムを外し、すでにブラジルに帰っていたパウロを呼び戻して同じブラジルのペレイラとコンビを組ませたことである。
 これは「ヴェルディに何かが起こっている」と思わせる材料だった。
 ブラジル−オランダのペレイラとロッサムの守りは、ナビスコカップと後期の優勝の原動力だった。Jリーグ元年の最後を飾る試合で、このコンビを崩すのは常識的でない。次のシーズンには新しい構想でのぞむにしても、最後の花道は、功労のあったコンビに飾らせたいと考えるのが人情というものである。
 「これはブラジル組の、オランダはずしの陰謀だな」と推測するのは当然だろう。スポーツ新聞には、たちまち、そういうニュアンスの記事が出た。 
 南米に欧州を組み合わせて新しいサッカーを作り出そうとした松木監督の考えは面白かった。しかし異文化理解は、そうそう理想どおりには、いかないものである。だから「来シーズンはブラジル体制に統一して出なおそう」と考えるのには一理ある。 
 ただ、ラモスをはじめとするブラジル系の選手の要求で、シーズン最後の守備ラインの組み替えが行われたのだというスポーツ新聞の報道が事実であれば、選手がフロントや監督の権限を侵すもので、今後に悪い影響を残すのではないかと心配になった。


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