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サッカーマガジン 1993年12月15日号

ビバ!サッカー

関西サッカー 頑張れ!

 ジュビロ磐田(旧ヤマハ)とベルマーレ平塚(旧フジタ)が来シーズンからJリーグに加わることになった。これで神奈川県内に4チームである。ところが関西の京阪神地区にはガンバ大阪1チームだけ。ホームタウンの偏在は問題じゃないか。関西のサッカー頑張れ! と叫びたい。

☆学園祭でJリーグ
 わが兵庫女子短大でも秋の学園祭があった。ここは環境絶佳、学生優良なる大学である。 
 「先生には約1名、変なのがいるんじゃないか」 
 と友人が言う。 
 そんなことはない。これでも、ちゃんと役に立っているので、学園祭実行委員会の学生が相談に来た。
 「Jリーグ・フェスティバルをやって、その中で誰かに講演をお願いしたい。適当な方を推薦していただけないでしょうか」
 「任しときなさい。カズでも永島でも呼んでやる」
 と言いたいところだが、あいにくシーズンのまっさいちゅうで選手を呼ぶことは難しい。 
 そこで、地元のテレビで解説をしている元日本代表のストライカー、細谷一郎氏を推薦しておいた。レッズの前身である三菱重工のエースとして、日本リーグでは140試合出場を記録した名選手である。 
 学園祭は、学生たちが自主的に企画し、運営するので、出演依頼も学生たちが自分でやる。だから、ぼくは推薦だけしておいて、あとは当日、一聴衆として会場に行ってみた。 
 「オーレ、オレオレ」のリズムにのって学生たちが踊る。Jリーグ・グッズの当たる抽選会がある。その間に細谷氏が、まじめな顔で話をする。ぼくは、女子大でサッカーが取り上げられたことだけで大満足である。 
 細谷氏も、若い元気な女性に囲まれて「ホッソン」と呼ばれていたころの気分になったようだった。

☆神戸にもプロを!
 細谷氏は「兵庫県にもJリーグのチームを!」という話をした。
 まったく! その通り!
 いま、関西地域(京阪神)には、ガンバ大阪しかない。京都ではパープルサンガ(紫光クラブ)が、大阪ではヤンマーが加盟をめざしているが、兵庫県には適当なチームがない。
  神戸には5万人収容のユニバーシアード競技場があり、中央球技場も拡張計画が進んでいる。にもかかわらず――である。容器はあるけど中味がないとは情ない。 
 実は、Jリーグの準備が始まったころに、兵庫県サッカー協会は、ヤンマーを神戸に誘致してJリーグに加わろうと交渉していた。そのときの内幕を地元の新聞が連載で取り上げていたが、それによると、競技場の持ち主である県と市が「プロの営業に公共施設を特別に提供する約束は出来ない」と言い出して、ストップしてしまったのだという。 
 そうしたら、今度はヤンマーの方が「誘われたから乗りかけたのに、そんなことでは頼まれても行かない」とツムジを曲げたらしい。 
 「この石頭どもめ!」
 と言いたいところだが、交渉の仕方にも問題があったのかもしれない。
 一つだけ気になることがある。
 「税金で作った公共施設だから簡単にはプロには使わせない」というような考え方が残っているのなら、そろそろ卒業して欲しいものである。 
 国立美術館も、国立劇場も、税金で作った建造物だが、中に入っているのはプロの作品ではないか。

☆地元FC頑張れ!
 これが神戸の話だから、もう一つ情ない。 
 というのは、もともと関西で最初にプロをめざして活動を始めたクラブは、地元の神戸FCだからである。 
 神戸一中(いまの神戸高)で細谷氏の大先輩にあたる加藤正信氏は、1970年に神戸FCを創立したときから「少年サッカーから育て、トップにはプロ・チームを持つ地域のクラブを」とめざしていた。これは、いまのJリーグの理念と同じである。 
 ところが、加藤正信氏のあとを継ぐべき若い世代の方が保守的で、結果的には加藤氏の夢を次つぎに、つぶしていた。      
 神戸市長が、加藤氏の話にのって、「神戸市にプロサッカーを」と新聞にぶち上げたら、「そんな夢みたいなことを」と、サッカー関係者が水を掛けたこともあるらしい。
 それが、今ごろになって「プロ誘致」に苦労しているのが残念だ。 
 もともと、よそのチームを「誘致」しようなんて考えが間違っている。よそのチームに地元のスタジアムを使わせるのは単なる「貸し席業」ではないか。     
 神戸FCが、地元の市民のクラブとして強いチームを作り、Jリーグに「加盟」するのが本当じゃないか。それが、ホームタウンのあり方ではないか。 
 市民のクラブが市民の支援を受けて強いチームを作れば、公共施設を使っても文句は出ないはずである。
 神戸市民であり、神戸FCの役員でもあるホッソン、じゃない細谷さん、頑張って


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