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サッカーマガジン 1993年10月7日号

ビバ!サッカー

再びU−17大会のあれこれ

 日本で開かれたU−17世界選手権は、西アフリカ同士の決勝でナイジェリアが優勝した。この年代のアフリカのサッカーはなぜ強いのか。大人になってからも、この強さは続くのだろうか。日本はどうなんだろうか? いろいろ、考えさせられることの多い大会だった。

☆将来はアフリカ時代!
 「アフリカはすごいねぇ。将来のワールドカップはアフリカ勢の時代になるのかなあ」
 U−17世界選手権が、ナイジェリアとガーナで争われたのをみて、友人が感嘆していた。
 たしかにナイジェリアとガーナは日本に集まったチームの中では、群を抜いていた。どこが良かったかって……。
  @ダッシュする素早さ、飛び上る高さなどの瞬発性の運動能力が高い。これは前号に書いたように、アフリカの西海岸の人たちの筋肉の質が遺伝的にすぐれているのではないか?
  Aボール扱いがうまい。日本を含めて、どの国の選手もテクニックはなかなかだったが、アフリカの2カ国の選手たちは特別で、すばやく動きながら、また無理な体勢でも、巧みにボールを操っていた。かつて、南米の選手たちがそうであったように、小さな子供のころから、遊びでボールを争いながら育ったせいじゃないだろうか?
  B戦術的な能力の高い選手が多かった。ナイジェリアの右サイドのオバラクやガーナの守りの中心のクフォなど、判断が素早いし、遠くが見えている。ガーナには、イタリアのトリノとドイツのレバークーゼンに所属している選手が、それぞれ2人ずついたように、ヨーロッパのサッカーに接する機会が多くなって、こういう面でもヨーロッパに追い付いてきたのではないか?
  サッカーの未来はアフリカに――という気がしてきた。

☆U−17の意義は?
 「アフリカの選手は早熟なんじやないか。ほんとに16歳かね」
 スタンドから見ていると、日本の選手たちのプレーが、まだ子供っぽさを残しているのに、ナイジェリアとガーナの選手たちのプレーは、おとな並みである。
 しかし、国歌吹奏のときに並んでいる選手たちの表情を双眼鏡でのぞいてみたら、顔つきは、やっぱり、まだあどけなかった。成長途上の少年たちであることは間違いない。
 U−17というのは「17歳未満」ということで、8月1日現在で16歳台以下の選手の大会である。この年代の少年たちは、社会的にはもちろん身体的にも成長途上である。
 たとえば、日本の男子の平均身長は15歳台と16歳台では2センチ近く違う。もちろん個人差があって、もう身長が伸び切っている者もいるだろうが、それだけに、この年代でまだ2センチ以上伸びるものもいるはずである。
 日本チームの小嶺監督は、1メートル93の船越は、今年になって1センチ伸びたし、1メートル82の松田は2〜3センチ伸びたと話していた。
 身長が伸びつつあることは、骨の端がまだ固まっていないことを示している。そのときに、むやみに鍛えて筋肉を強くすると、筋肉の引っぱる力が骨の力以上に強くなって骨折などの原因になる。
 「ナイジェリアやガーナでは、もう身長は伸び切っていて、鍛えやすいのではないか?」と友人は憶測したが、ぼくは「成長途上の年代の世界選手権に、どんな意義があるのだろうか?」と考え込んでしまった。

☆日本のヤングの未来は?
 ヤング日本代表は1勝1引き分け2敗。負けた相手は決勝に進出したガーナとナイジェリアだから、ベスト8進出は。まずまず良かった。小嶺忠敏監督は、九州で島原商、国見高を指導してきた高校サッカーの名将だが、船頭の多い選抜チームをまとめるのは、だいぶ勝手が違っただろう。ご苦労様でした。
 この年代は、日本では学校の境目でやりにくいのも問題である。中学から高校への進学があり、中学3年生は、ほとんど部活動をしないし、高校1年生は、まだ高校のサッカー部では下級生で1人前扱いでない。のびのびとサッカーをやれない状態の年ごろだ。
 そのためもあってか、今回のメンバーは18人のうち7人が、読売日本サッカークラブなどのクラブ所属、そのうち5人が主力として出場していた。チームの中心もクラブ育ちの財前宣之君だった。
 さて、選手たちは健闘だったと思うのだが、このメンバーがそのまま2002年の日本代表に育つことを期待するのは、かなり気が早い。いまからチームを固めて中央集権的な強化を計画するようでは、大きな飛躍は望めないと思う。
 全国には、まだまだ、いい素材がいるし、これから伸びてくる選手もいる。そういう選手たちが、学校制度の谷間に閉じ込められないで、のびのびとサッカーを楽しめるようにするには、どうしたらいいか。そこんところを協会や中学、高校の関係者が、お互いの悪口を言い合うのではなくて前向きに考えてほしい。


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