Jリーグが、はなばなしくスタートした。入場券がなかなか手に入らないほどの人気でスタートは大成功だ。それだけに、ファンにとってはテレビ中継が飛躍的に増えたのがうれしい。各局競って放映に工夫をこらしていて面白いのだが、もう一工夫というところもある。まずは、NHKの中継への注文を。
☆20年分の情報量
Jリーグが開幕した。予想を上回る大盛況で、まずはめでたい。
5月15日の開幕ゲームの日に競技場の入り口で、日本サッカー協会監事の西村章一さんに、ばったり会った。西村さんは古河電工の広報課長だったころ、28年前の日本サッカー・リーグ創設に尽力した人である。
「いやあ、28年前を思うと隔世の感だね」と西村さんがいう。
日本リーグが発足したとき、駒沢競技場に「大観衆が集まった」と、ぼくたちは思ったものだが、実は2万人収容のスタンドが半分も埋まっていなかった。それを思うと6万人収容の国立競技場の切符が手に入らないなんて夢のようである。
同じ日に、いま早稲田大学でスポーツ・ジャーナリズムを教えている中条一雄さんにも会った。中条さんは朝日新聞の記者だったころ、日本のサッカーを盛り上げるために、記者としてだけでなく、協会の雑誌の編集などに、個人的にも非常な犠牲を払った人である。切符が手に入らないので開幕試合を見るのはあきらめていたが、知り合いの若いジャーナリストが招待券を手に入れてくれたので来たのだという。中条さんのようなサッカー報道の長老は、これまでの功労によって、この日のような記念日には特別に招待してもいいと思うが、Jリーグも報道界に対しては気が利かないようである。
「この1週間に新聞にのったサッカーの記事量はすごいね。過去の20年分以上じゃないかな」
中条さんも、サッカーブームを率直に喜んでいた。
☆驚異的な視聴率
観客数や新聞の報道もさることながら、ぽくはテレビの視聴率にも驚いている。開幕試合のNHKは30%を越えたという。
これまで、ふつうのサッカー中継は7〜8%、高校サッカーの決勝やトヨタカップでも10数%だった。これは、サッカーをやっている人たちか、やったことのある人がチャンネルを回してくれた数字だったのだろう。
視聴率が20%を越えるのは、特別のことがあって、ふだんは関心のない人でもチャンネルを回してくれた場合である。開幕試合は特別にしても、これから常に2ケタの視聴率が維持できるようだと、サッカー人気も本物だ。
開幕試合は競技場で見たので、どんなテレビ中継だったのかはしらないのだが、5月22日に広島で行われたサンフレッチェ対ヴェルディは、NHKの衛星チャンネルで見た。この中継はなかなか良かった。
何が良かったかというと、解説者がいないのが良かった。試合中はアナウンサーがひとりで目の前のプレーだけ説明する。解説者は、いることはいるのだが、スタジオで試合の始まる前に見どころなどを説明する。ハーフフタイムと終了後には、ビデオを見せながら戦術的な解説をする。試合中に、目の前のプレーと関係のない雑談みたいなことをアナウンサーとの掛け合いで話すのが、これまでの日本のサッカー中継のパターンだったが、これがない。おかげで、画面の中のプレーのリズムに引き込まれることができた。
☆選手の名前をいってくれ!
この方式は、3年くらい前に、この「ビバ!サッカー」のページで紹介したことがある。ニューヨークに住んでいたときに、スペイン語のチャンネルで、日曜ごとに、この方式で世界のサッカーを放映していて、なかなかいいと思ったからである。それが、ようやく採用されたのをみて、うれしくなった。
欲をいえば、アナウンサーのしゃべりは、もう一息である。
NHKのアナウンサーは、目の前のプレーを描写をしながら、自分の話術で盛り上げようと一生懸命、努力している。
ボールが左サイドへ出る。「左サイドへ展開しました。チャンスになるか? センタリング、シュート! 惜しい!」といった調子である。
ボールが左へ出たのは、画面に映っているから分かっている。センタリングしたのも見れば分かる。それをあえてしゃべりたがるのは、ラジオ時代からの伝統だろうか。
声を張り上げて、ムードを盛り上げようとするのも、気持は分かるけれど、プロのやり方じゃない。アナウンサーが興奮するのではなく、ブラウン管の前にいる視聴者が興奮するようでなければならない。
それよりも、ンボールが渡るたびに選手の名前を次つぎに伝えてもらいたい。この点も以前にこのページで注文したことがあるのだが、これは実行してもらえない。
画面が小さくて、解像力も悪くて選手の背番号は見えないのだ! 選手の名前をいってくれ! 頼むよ!
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