Ｊリーグがブームを呼んで、新しいファンが、ぐんぐん増えている。それは、それで結構なのだが、そのために長年熱心にサッカーを応援してきた人たちが割り切れない思いをするケースが出てきた。日本代表強化の資金集めのためとして作られた日本サッカー後援会の会員たちである。一時的な熱狂が冷めたあとにも確実な基礎が残るように、ブームに浮かれないで、全国のＯＢとファンの有志を結集する組織作りを考えよう。
☆Ｊリーグには入れない！
「日本サッカー後援会はひどいよな。無茶苦茶だよ」
と友人がいう。
「サッカー後援会ってなーに？」という人もいるに違いないので、簡単に説明すると、これは日本サッカー協会が作っている組織で、年会費は確か法人が５万円、個人会員１万円である。もともとは、日本のサッカーのレベルを上げるために、有志からお金を集めて日本代表チームの強化費に寄付しようという趣旨の組織だった。
そのどこが、ひどいんだろうか？
「この前、手紙が来てだな。これまでは日本サッカー協会主催の試合は、後援会員は無料で入場できることになっていましたが、今年はＪリーグとトヨタカップは、入場できないことになりました、というんだ。ちょっと人気が出たと思ったら、たちまちこれだ」
ぼくは、年１万円の会費を払ってはいるが、報道関係者として記者席に入ることが出来るので、入場無料の会員の特典を利用することはなかった。その点、友人とは立場も考えも違う。
しかし、サッカーが盛んでないころから熱心に見にきてくれていたファンを、手のひらを返すように見捨てるのだったら、サッカー協会の背信行為である。
「うーむ。少なくとも、Ｊリーグやトヨタカップの切符を、会員は優先的に買えるようにしてくれなくちゃな。かんじんの試合が見られないんじゃ特典じゃないものな」
ぼくも、いささか同情した。
★入場無料はおかしい？
ことの起こりは、Ｊリーグの方から「プロリーグと銘打った以上、入場無料は困る。入場料で稼ぐのがプロなんだから」と、言ってきたことにあるらしい。
後援会の方は、なんとか解決したいと話し合いながら新しい会員の募集は中止していたとのことである。
昨年のヤマザキナビスコ・カップのときはＪリーグ側に折れてもらって、これまで通り後援会員は入場無料だった。しかし、プロとして本格的にスタートしたら「そうはいかない」というわけである。
これは友人には気の毒だが、Ｊリーグの言い分にも理があると思う。
ぼくは、もともと日本リーグのときでも「入場無料」にするのが、おかしいと思っていた。
入場料収入は本来、プロであろうとアマであろうと関係なく、ホームチームのものにするのが本当だと思う。したがって、日本サッカー協会が勝手に入場無料の特典を誰かに与えるのは、ホームチームの権利を侵害するものである。
ホームチームが、自分のクラブの会員や後援会員を入場無料にするのは勝手かもしれない。自分たちが得るはずの収入を減らすだけだからである。外国には、そういう例がある。
そういう意味では、協会と表裏一体である日本サッカー後援会の会員に入場無料の特典を与えてもいいのは、日本国内で行われる日本代表チームの国際試合だろう。これは、いわば日本サッカー協会のホームゲームだからである。
★趣旨を改めて改組を
「ふーん。じゃ、これまでの日本サッカー後援会は、いったいなんだったんだ？」
と、友人は納得いかない口調である。
もともとは「日本代表チーム強化の資金集め」が趣旨だったのだが、実際には、資金作りに役立つはずの大口の法人会員は思うように集まらず、年１万円の個人会員が大部分になっていた。
その個人会員の大部分は「入場無料」の特典が目当てだった。物価の上がった今になってみれば、年に１万円で、どの試合でも見られるのは安いからである。
つまり、日本サッカー協会の後援会の実態は、設立の趣旨からは、かなりずれたものになっていた。
じゃあ、どうすればいいか。
ぼくの考えでは、日本サッカー後援会は、趣旨を変えて、全国のサッカーのＯＢとファンの有志のクラブに改めるべきだと思う。
日本サッカー協会は、加盟しているチームと選手から成り立っていて登録費、つまり会費をとっている。
しかしＯＢや草サッカーを楽しんでいる人たちは、協会につながりがなく、会費も払わない。
そういう人たちが、会員になって日本のサッカーのために援助し、同時に会員同士のつながりも持てるようにしてはどうだろうか。
とくにＯＢの人たちは、若いときにサッカーから得るところが多かったのだから、恩返しのつもりで、後輩のためにサッカー振興のための会費を出してはどうだろうか。
とはいえ、これまでのいきさつもあるから、当分は、日本代表チームの試合は無料にする。その外の試合は有料だけれども、入場券を優先的に買えるように特典を与える。そして、会員同士のつながりを図る活動も出来るように、会費は２倍に……
と言い掛けたら、
「会費を値上げするのか」
と友人は、変な顔をした。 |
