W杯改革のとき!
準備期間が短く大会期間は長い。これでは好試合は無理?
1カ月あまりイタリア各地をかけめぐって、かなり疲れた。ワールドカップを見るのも、容易じゃなくなってきた。やっぱり歳だなあ。
それに今回のワールドカップは、わくわくするような盛り上がりが乏しかった。カメルーンの活躍やコロンビアの異色のプレーは面白かったけれど、後半戦はイタリアが負けて地元の熱が急に冷めてしまったし、期待されていたアルゼンチンやオランダの試合ぶりが良くなかった。それにどのチームも生き残りにこだわってあまりにも守備的である。
なぜ、こうなるのかについてイタリアでも、いろいろな意見が出た。
〔原因〕
@準備期間が少ない。
欧州のシーズンが5月初旬に終わり、1カ月足らずで6月初旬にワールドカップが始まる。選手たちは、激しく厳しいシーズンに疲れ果てているのに、休養の余裕もケガを治療する期間もない。また南米の国は、有力選手が欧州でプレーしているので、ナショナル・チームとして、まとまった練習や試合をする機会が少ない。そのため大会が始まってから、1次リーグを調整やチーム作りの期間にあてているチームが多い。
A大会期間が長く試合が過密。
大会が1カ月も続き、その間に52試合もある。そのため後半戦は疲れが出て、いきおい体力、気力の勝負になり、テクニックを生かした好試合が少ない。
B試合方式の弊害。
前半戦の1次リーグでは、4チーム中3位になっても、まだ決勝トーナメントに出るチャンスがあるので、引き分けでもいいという消極的な試合が出てくる。後半戦の決勝トーナメントでは、PK戦でもいいからなんとか生き残ることを狙って、守備的な試合が多い。
〔対策〕
@大会を9月に開く。
これはフランスのプラティニが地元の新聞のインタビューで出していた意見である。5月にシーズンが終わり、9月に大会をやれば、3カ月の準備期間があるから、選手は休養して体調を整えることが出来るし、チーム作りをする期間もある。
A参加国を16に。
決勝大会の参加国は1982年のスペイン大会以来24カ国だが、元に戻して16力国にする。これはFIFA(国際サッカー連盟)のブラッター事務総長が記者会見で口を滑らせた意見である。チーム数が減れば、好カードだけになり、日程に余裕が出来るので、レベルの高い試合を見ることが出来る。
B引き分けは再試合に。
引き分け覚悟の守備的な試合をなくすために、1次リーグではグループの1位だけしか進出できないことにし、勝ち抜きの決勝トーナメントでは、PK戦をやめて引き分け再試合にする。
※
ワールドカップに、改革のときが来ているようである。
アジアの枠は減る?
カメルーンの活躍で、アフリカの出場枠は増えそうだが!
ワールドカップ決勝大会の参加国数を16に減らすという案があるのを聞いて、イタリアに来ていた友人が心配した。
「そうすると、アジアのチームは出られなくなるんじゃないか。今度のイタリア大会で、アジアだけレベルが格落ちだったからなあ」
イタリア大会に出場した24チームの中で、アラブ首長国連邦と韓国は3戦全敗で、どうみても下から1番目と2番目のチームだった。
米国も3戦全敗だが、米国のサッカーには、将来に希望が持てるところがあった。つまり未完成だが、まだ伸びる余地がたくさんあった。
韓国は、アジアではかなり強いチームだと思うが、今のスタイルのままでは、今後もワールドカップのレベルに到達しそうもない。将来性という点では、米国の方に望みがある。
だから友人が「アジアの枠を減らされるのではないか」という心配をするのも無理はなかった。
格落ちの弱いチームがワールドカップに出ると、そのチームの試合には観客が集まらないし、テレビの視聴率も落ちる。そうなると収入に響くので、弱い地域のチーム数を減らそうという考えは、欧州を中心に今でも根強い。
しかし、地域が広く、国の数も人口も多いアジア、アフリカの枠を減らすことは、世界のサッカーの将来のためにも好ましくない。そのあたりは、FIFAも考えている。
逆に、アジア、アフリカ、北中米カリブ海からは、この3地域の枠を増やせという要求が出ていて、12月に検討することになっている。
現在、24チームの中で、アジアとアフリカと北中米カリブ海地域の枠は、それぞれ2となっている。南米は3、欧州は13である。そのほかに前回優勝国と開催国に別枠で出場権がある。
アジア、アフリカ、北中米から、欧州が多くて、われわれは少なすぎると、不満が出ているわけだが、レベルが低いので、あまり大きなことも言えないのが現状である。
しかし、今回アフリカのカメルーンが大活躍をしたので、FIFAのアベランジェ会長は「アフリカの枠は無条件で3に増やす。その分は欧州の枠を減らす」と話していた。
アジアと北中米カリブ海地域も、3チームに増やす方向で検討されているが、これは無条件ではない。
この2地域の3番目のチームと欧州の予選で落ちたチームのうちの一つを組み合わせて、勝った方に出場権を与えようという案が出ている。
つまり欧州は最大限13チーム、最小限11チームになる。アフリカは2から3に増え、アジア、北中米は、2チームは確保したうえで、うまくいけば3チームになるわけである。
「アジアの枠を条件付きで3にしても日本にチャンスはないだろうなあ。2002年の大会を日本でやって開催国として出たところで、恥をかくだけじゃないかなあ」
ワールドカップの高度で厳しい争いを見て、友人はますます悲観的になっていた。
参加国を32に!
1次リーグを6月に、勝ち抜き戦を9月にという迷案?
友人が心配するので、ワールドカップ改革のために名案を出した。
「参加国数を32チームに増やすのはどうだ。そうすれば、アジアのチームも楽に増やせる」
24チームでも多すぎるという批判があるのに、逆に増やそうというのだから、友人はびっくりした。
「そんなことをしたら、ますます大会期間が長くなって、試合が過密になるだろう」
友人は数学に弱い。24チームを32に増やしても、1チームあたりの試合数が増えるわけではないし、大会期間も、長くなるわけではない。
そもそも、24という数が半端なのである。これを32チーム、8グループにすれば、1次リーグの問題点はほとんど解決する。
今のやり方では、6グループからベスト16を選ぶために、グループの3位でも上位進出のチャンスがあるような不合理をあえてしている。しかし、8グループなら上位2チームずつでベスト16になる。
グループのリーグ戦は平行して同時にやれるから、試合数は増えても大会期間が長くなるわけではない。
上位2チームだけが、後半戦に出られることにすれば、消極的な試合は少なくなる。1チームだけが進出することにすれば、もっといい。その場合は、後半戦が準々決勝からになって試合数が減り、引き分け再試合をする時間的余裕も出てくる。
こう書くと、なかなかいいアイデアのようだが、問題点もある。
前半戦の試合数が増えて、後半戦の好カードの試合数が減るのは、テレビにとって都合が悪い。また、グループの試合を同時に平行してやると1日の試合数が多くなり、全試合を中継することが難しくなる。
だから、決勝トーナメントに出るのは、グループの上位2チームということにして、もう一つアイデアがある。
8グループの1次リーグを8力国に分けて6月にやり、決勝トーナメントを一つの国で9月にやるという案である。
この案だと、決勝トーナメントまでには、十分に準備の期間があるから、選手もチームもいいコンディションで試合をすることが出来る。
1次リーグを世界の8ヵ国に分けるのは面白いと思う。
地域別の予選と違って、たとえば欧州1、南米1、アジア1、アフリカ1、でグループを作ることになるから、いろいろなタイプのサッカーの対戦を見ることが出来る。
また、そのうちの1チームは地元だから、勝ち進めばおおいに、盛り上がるに違いない。
1グループ4チーム、全部で6試合だから、2会場を用意できれば十分で、小さな国でも、貧しい国でも開催できる。グループ・リーグの時期を少しずつ、ずらせばテレビ中継もやりやすくなる。
「それはいいや。日本もまず1次リーグの開催に立候補したらいい」
友人の口調は、かなり、なげやりだった。
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