ちょっくら欧州へ
7年ぶりにバルセロナヘ行きイタリア軍団に圧倒された!
ニューヨークヘ転勤になったとき「まあ、地球は丸いんだから東へ東へと行けば、来年の6月ごろにはワールドカップをやっているイタリアに着くだろう」と思ったりしたものだが、マンハッタンに根を下ろして生活し始めると、だんだん不安になってきて、本当に地球が丸いんだかどうだか、試してみようという気になってきた。
そこで5月24日にバルセロナで行われる欧州チャンピオンズ・クラブズ・カップ取材ということで、大西洋を渡ってみることにした。ニューヨークから西ヨーロッパまで飛行機で6時間、航空運賃は安いのを探せば往復10万円以下というのもあって、地球は丸いだけでなく結構小さい。ぼくにとっては1982年のワールドカップ以来、7年ぶりのスペインである。
海外でサッカーを見るのに慣れているつもりだったが、今回はちょっと失敗をした。ニューヨークから電話をかけてホテルを取ったのだが、そのホテルがランブラスの大通りに面していたのである。
いや、実をいうと7年前のワールドカップのとき、ランブラスの裏通りの小さなホテルを本拠地にして楽しく暮らした思い出があったものだから、旅行案内書のリストで、ランブラス通り近くのホテルを探したので、大通りに面していても不思議はなかった。
しかし、欧州や南米で大きなサッカーの試合がある日に、目抜き通りのホテルを取るのは賢明ではない。
案の定、試合前夜のランブラス通りはイタリアから来たファンであふれ、旗を押し立て、歌を歌って明け方までお祭り騒ぎ。とても寝られたものではなかった。
新聞によれば、ACミランを応援するためにイタリアからきたファンが8万人ということだった。実際に翌日のスタジアムは、ほとんどがミランの訛とシャツで埋まっていた。
そういうわけだから、大通りに面したホテルでは寝られないのが当然だが、市内でホテルの部屋が取れただけでも幸運だったのかもしれない。8万人も外国からお客がきたので、どこのホテルも満室だったということである。
試合はご承知の通り、ACミランが4−0でステアウア・ブカレストに快勝、トヨタカップへの出場権を得た。昨年の欧州選手権で優勝したオランダ代表のトリオが実にすばらしい。
ライカールトが攻撃の起点になり、フリットがチャンスを作り、あるときは自らゴールを狙い、あるときはファンバステンに得点させる。フリットが王様だが、他の2人との息が良くあっている。イタリア人の他の選手たちが、また、この3人を盛り立てるためによく頑張っている。イタリアでは外国籍の選手は3人に制限されているが、これから3人まとめて同じ国から取るのがはやるんじゃないかと思った。
試合の終わった夜は、もちろん、夜を徹しての祝勝会である。だからバルセロナでは2晩続けて眠れなかった。
W杯を見に行くには
ホテルに不満を言わないこと 切符の一部を自力で買うこと
さて、1年後に迫ったイタリアのワールドカップを見に行こうと計画している方も多いだろうから、そういう方のために、アドバイスを差し上げたい。
欧州のクラブチームの1試合だけでも、何万人もの応援団が押しかけてホテルが満室になるのだから、ワールドカップのときはもっと大変なはずである。いちばん賢明なのは、やはり旅行会社のツアーに参加することだと思う。飛行機も、バスも、入場券も、ホテルも確保してもらえるうえに、結局はこれがいちばん、安上がりかも知れない。
ただし、観戦ツアーに参加するには、二つの心がけが必要である。
第一は。ホテルの設備やサービスに文句を言わないことである。 観戦ツアーのホテルは普通は、三つ星くらいの中級になるが、それでも、なかなかのお値段である。
だいたい入場券と宿泊をセットにして地元が売り出し、価格の協定をしているので、大会期間中は法外に高い。しかも大勢のお客を一度に扱うからサービスも悪い。その点は、一般の観光旅行とは、かなり違うことを覚悟しなければならない。
しかし、われわれはサッカーを見に行くのが目的で、ホテル生活を楽しみに行くわけではないから、寝るところがあるだけで良しとしなければならない。
第二に、入場券の席について文句を言わないことである。
観戦ツアーに組み込まれている入場券は、セットにして指定の旅行業者に売っているので、全部の試合が自分の見たい試合とは限らないし、全部の試合でいい席を確保してあるとは限らない。例えば準々決勝で正面スタンドをとったグループは、準決勝はゴール裏になったりする。
これも、入場券が手にはいっただけで良しとしなければならないのだが、われわれとしてはサッカーを見に行くのが目的だから、ホテルについては我慢しても、試合を見ることについては、妥協できかねるだろう。これは旅行業者に苦情を言っても始まらないので、自分で対策を講じる必要がある。
つまり、予めグループに割り当てられている切符を調べて、自分の見たい試合が含まれていなければ、その試合を見る手段だけは、現地で自分で調達するわけである。席の場所が悪い場合も、その試合だけ、いい席を別に買うことを考えればいい。
ぼくの経験では、開幕試合と決勝戦を除けば、絶対に切符が手にはいらないということはない。カードによっては、かなりの枚数が売れ残っていることもあるし、多少奮発すればダフ屋から買うこともできる。
かりに、現地でうまく買えなくても、観戦ツアーの分は確保されているわけだから、現地へ行って試合がまったく見られないという破目には、ならないわけである。
だから、観戦ツアーをベースにして、自分自身の観戦計画を立てるのが一番いいと、ぼくは思う。
個人で見に行く法
空振り覚悟なら現地で切符を買い、ホテルを探すことも!
「切符を自分で調達できるのならグループツアーにはいらなくても、個人旅行でワールドカップを見に行った方がいいんじゃないか」
そんなふうに考える人も、必ずいるに違いない。確かにいまは格安の航空券が出回っているから、そういう切符で出かけ、自分で安いホテルを探して、自分で入場券を買って見て回った方が、費用がかからないことは確かである。ひまはあるけど、資金の乏しい学生さんには向いている。
こういう個人旅行の場合は、入場券が買えなかったら、見ないでもいい、というつもりでなければならない。しかし開幕試合や決勝戦、あるいは特別の好カード以外は、これまでの例だと、ほぼ原価で切符が買えるものである。ただし決勝戦の切符をプレミアムつきで買おうなどと考えると、結局、観戦ツアーの方が安いということになりかねない。
また、どんな試合でも、入場券が必ず手にはいるという保証はない。それほどの好カードでなくても、小さなスタジアムでブラジルが試合することになったり、近くの国のチームが試合をしたりする場合は、切符は手にはいりにくくなる。応援団がたくさん来るからである。
競技場の外でチケット屋が売っているプレミアム付きの切符は、試合開始が近づくにつれて、どんどん安くなることがある。売れ残ったらチケット屋が損をするからである。ただし、安くなるだろうと思って待っていると売り切れる心配もある。
個人旅行の場合は、宿泊の対策も講じなければならない。
日本から現地に到着する日のホテルは予め予約しておいた方がいい。旅行案内書のリストで適当な値段のホテルを探して、日本から電話で予約するのが簡便である。
現地でホテルを探す方法だが、ぼくは空港や駅前の観光案内所でもらったリストで適当なのを選んで、片っ端から電話をかけたこともある。
しかし、この方法では、試合のある日に、その町のホテルで空室を見つけるのは相当に困難である。マドリッドのような大きな都市でも、ワールドカップの準決勝と決勝の日は、部屋を見つけることが出来なかった。このときは友人が泊まっている一人部屋に転がり込んだけど、もちろん、こんなことはよろしくない。
ただ、これには対策が一つある。
試合をする町まで、試合当日にバスか列車で行くことの出来る別の町でホテルを探すことである。試合は午後か夜だから別の町からでも当日出かける時間の余裕は十分ある。
ただし、夜の試合の場合は、帰りの交通手段が問題だ。帰りのバスあるいは列車があるかどうかは、確かめなければならない。
最後にもう一つ、アドバイスがある。これはグループツアーで行く人にも言えることだが、サッカー以外の観光を欲張らないことである。サッカーを見に行くのだから、サッカーにまず熱中するつもりになった方がずっと楽しいと思う。 |