日韓サッカーの感想
横山監督は自信満々1年で日本は韓国に追いつけるか?
4年ぶりに復活した日韓サッカー定期戦は。1−0で横山兼三監督の率いる日本代表の負けだった。だが結果はともかく、この試合で気に入ったことがいくつかある。
まず、この試合を水曜日にやったのがいい。
日本リーグのまっさいちゅうに国際試合をやるには、水曜日にナイターをするしかない。「日本代表として集まって練習する期間がなければ試合にならない」と考えないで「リーグのシーズン中でも公式の国際試合をやれる」と踏み切ったのは進歩である。
欧州では土曜日曜にリーグ戦、水曜日に国際試合は常識である。リーグの日程を犠牲にしないで国際試合をやるには、これしかないのだから、月に1度か2度はやむを得ないことである。将来はワールドカップやオリンピックの予選も、近隣の国とやるときは、この方式でいい。
ただし毎週水曜日の日本代表の合同練習には賛成できない。それとこれは話が別である。念のため。
さて、気に入ったことの第二は、日本代表チームの試合ぶりが、思ったより良かったことである。
守備ラインが4人揃って比較的浅くラインを敷き、ライン全体を押し上げて守ったのが成功していた。これまで横山全日本は3−5−2と称して、両サイドバックを中盤プレーヤーにしてやらせていたが、今回の4人バックの方がうまくいっていた。
攻めの方は、まだ力不足だったけれど、守りの方で良い芽が出かかっているので、それを見守りたいものだと思った。
ただし、翌朝の新聞を見ると、この日の日本代表の試合ぶりについては評価が極端に分かれていた。「差は縮まった」という記事と「まだまだ大きな差がある」という論評がまちまちだった。
ぼくは「差は縮まってもいないし、開いてもいない」と思う。
個人の能力は、技術的にも戦術的にも韓国の選手が少し上である。しかし、とてもかなわないほどの差ではない。技術や戦術の質は変わったにしても、「少し差がある」のは以前と同じである。
ただし、差が小さいから追いつけるというものではない。差が大きい場合は、もともと、こちらに改善の余地が多いのだから、差を縮めるのは比較的やさしい。しかし差がわずかになると、その壁をなかなか越せないものである。
しかし横山監督は強気だった。試合の後の記者会見で「1年で追いつけます」と明言した。
この発言は、ぼくが気に入ったことの第三である。
監督は、これくらいの自信を持ってやらなくてはいけない。こういうからには、日本の若い選手たちに手ごたえを感じているに違いない。
この発言はいわば横山監督の公約である。
落合弘コーチも「まあ見ていて下さい」と言っていた。
結果が出るときまで、この発言をしっかり、覚えておきたいと思う。
乱闘処分に異議あり!
日産−ヤマハの事件への処分は過去の例に比べて不公平?
日韓サッカー定期戦の日本代表に日産の平川弘がはいっていなかった。
「あの乱闘事件のため?」と日本サッカー協会の関係者にたずねたら、「お察しの通り」と言う。これには、いささか疑問がある。
日本リーグ第2節、10月1日に横浜三ツ沢球技場の日産−ヤマハの試合で乱闘事件があった。
その結果ヤマハの東川とアウディソン、日産の平川の3選手が、第5節から3試合の出場停止処分となった。
これを拡張して日本代表から外したのは不適当だと、ぼくは思う。
乱闘は、日本リーグの試合中に起きた、競技をめぐる出来事である。
そうであれば、この処分は日本リーグの試合体系の中での処分に止どめておくべきで、他の体系の試合あるいは選手権に拡張しない方がいいのではないか。
これが社会的な不正事件であれば話は別だ。例えば外国でときどきあるようなギャンブルにからんだ収賄や八百長の場合は、リーグ中だけの処分では済まされない。代表選手からは、もちろん外すことになる。
そういう場合には、リーグが出場停止にするのではなく、協会が数年間あるいは無期限の出場停止にする。もちろん国際試合にも出られない。しかし、日産−ヤマハの事件は競技場の中で、リーグの試合にからんで起きた出来事だった。だからリーグの出場停止だけで十分だったと思う。
事件は試合の終わりごろに起きた。激しいタックルが発端になり、両チームの選手入り乱れて、突き飛ばしあう騒ぎになった。ぼくは直接見たわけではないが、複数の人の話を聞いたところ間違いないようだ。
「以前に試合直後に起きた騷ぎがあったけど、あれより、ずっとひどかった」
済んだ話を蒸し返したくはないけれど、あのときは確か4カ月くらいの出場停止になった選手も出た。
「今度は、あのときより、ひどいのに、処分の程度が逆だ。差がありすぎるよ」
両方を目撃した友人が憤慨していた。
ぼくは前のときの処分が過酷すぎたのだと思うが、チームによって、あるいは選手によって、処分の重さが違うのなら不公正である。
さらに付け加えると、この騒ぎのときに両チームの監督が、フィールドの中にはいった。一方の監督は同じ試合の後半のはじめにも審判の処置に抗議してフィールドにはいっている。しかし何のおとがめもなかった。
一方、ヤンマーの吉村コーチは、今季の日本リーグの開幕の日に、試合中にフィールドの中にはいったという理由で4試合の出場停止を受けた。これは雨中の泥んこ試合で、選手に顔を拭くタオルを渡そうと不用意にラインを越えたものだった。
これが、ちゃんと審判から報告されて処分を受け、審判への抗議や騒ぎの中のフィールド立ち入りが見逃されるとは不思議である。偏見による不公正と見なされても仕方がない。
リーグと協会も猛省せよ
規律統制の規則に定見がなく思い付き処分ではたまらない
日産とヤマハの事件で、主審は現場で警告も退場も出していない。警告は、この試合で2件記録されているが、騒ぎとは関係のない警告だった。黄色いカードや赤いカードが次次に出ても不思議のない騒ぎだったのに何もなかった。
主審からリーグに出た報告書には報告すべき事項は「とくになし」とあった。リーグでは「審判から報告が出なければ、取り上げることはできない」として、日本サッカー協会にげたを預けることにした。
協会の規律委員会は最初「処分の必要はない」と結論を出した。しかし、多くの人が騒ぎを目撃していたため、これはおかしいということになり、事実を調べ直し、前例に比べれば、はなはだ軽いけれども、一応出場停止処分をした。
以上が、関係者から聞いた経過である。
この経過には、おかしなことがいくつもある。
審判が見て見ぬふりをしたのが、まずおかしい。この日の主審は、どうも最初から試合のコントロールがまずかったようだ。
次に、日本サッカー協会にげたを預けたリーグの考え方がおかしい。
リーグの試合に関しては、まずリーグが責任を持たなければならない。主審が報告を出さなくても事情を聴取し、また試合を監察するインスペクターの報告をもとにしてリーグの規律委員会で処分を検討するのが本当である。
ところが日本リーグでは試合のインスペクターを指名していない。
インスペクターは、サッカーを知っていて社会人としての常識を備えた人が1人いればいい。
最初から最後まで試合を見ていてくれて、何も事件が起きなければ仕事はないが、仕事がないにこしたことはない。
こういう簡単なことを、きちんとやっていなかったのが問題である。
不幸にして、事件が起きたときにはインスペクターが報告を出す。国際大会の要項などには、そんなときに「審判員および/あるいはインスペクターの報告」をもとに規律委員会で決定する、と書いてある。つまり審判が巻き込まれているケースでは、当事者である審判員の報告をもとにするわけにはいかないから、インスペクターの報告だけを考慮するわけである。
さて日本リーグの規律委員会で結論を出したら、それが最終決定である。日本サッカー協会に報告はするが、協会が処分の内容を変更すべきではない。
ただし明らかな不公正があったり、情状を酌量する余地があったときは、リーグに再検討を求めることができる。
こういう問題は、これまでにも何度も書いたことがある。詳しく論じていたらきりがないが、要するに、このような考え方を理解しようとしないで規則や制度を作り、また規則を作っても、その場、その場のご都合主義で処理するので、仏作って魂入れずという結果になる。
そういう体質が諸悪の根元だろうと、ぼくは考えている。
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