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サッカーマガジン 1981年12月号
ビバ!! サッカー!!

名古屋五輪の大敗
オリンピックがなくなったって、サッカー百年の計を

 「名古屋オリンピックは惨敗だったな。あれ、どう思うかね」
 と友人が言う。
 1988年のオリンピック開催地を名古屋は、韓国のソウルと争って敗れた。国際オリンピック委員会の投票で、52票対27票の大差だった。
 ぼくの感想は、さまざまだ。
 @競争で日本側が負けたのは、ちょっぴり残念である。
 A施設も、道路も、地下鉄も、ソウルの方が、ずっと準備が進んでいるのだから、客観的には、ソウルが勝ったのは当然だ。
 B「新しい国でオリンピックを」というソウルのキャッチフレーズは説得力があった。
 Cソウル・オリンピックが、韓国の内外で、政治的に利用されるんじゃないか、と心配だが、これから7年間に、世の中、どう変わるか分からないんだから、どなた様も、いまから、騒ぎ立てることはないだろう。
 Dそれにしても、日本人の国際感覚はダメだねえ。日本側の関係者の中で「名古屋危うし」と言っていたのは、わが、サッカー出身の、オカシュンこと岡野俊一郎・日本オリンピック委員会総務主事だけだったではないか。オカシュンさんを、国際オリンピック委員会の委員に推薦すべきである。        
 ――なーんていうのが、大所高所に立った感想でね。もっと現実的と申しますか、サッカーのために、と申しますか、我田引水の感想は、別にある。
 @名古屋オリンピックのとき、サッカー会場は、名古屋のほか、一宮や豊橋や四日市に分散される予定だった。こういう地方都市にサッカー場を整備するチャンスが、さし当たって失われたのは誠に残念。  
 Aでも、名古屋市内の瑞穂(みずほ)競技場が、すでに改築工事に取りかかっていたのは、幸いだった。これで、名古屋にも、やっと国際試合をちゃんとやれる競技場が、一つだけ生まれることになる。ここにはぜひ、ナイター設備をつけてもらいたい。なぜなら、国際試合を地方都市でやるのは、どうしてもウイークデーが多くなるから、4万人収容のスタンドを活用するには、ナイター照明が絶対に必要である。
 B名古屋オリンピックが決まっていたら、また、今後7年間、オリンピック至上主義が日本に横行して、プロをトップに、広いアマチュアの底辺を組織している世界最大のスポーツ、サッカーの良さが、忘れられる心配があった。そんなことにならなくて、本当に良かった。
 以上のごとく、とりとめのないのが、名古屋オリンピック招致失敗についての、ぼくの感想である。
 要するに、名古屋オリンピックがあろうが、なかろうが、サッカーはサッカー。
 百年の計を立てて、しっかり、やろうぜ。

五輪参加資格の改革
オリンピックのサッカーは23歳以下の大会になる?

 イギリスから商用で日本に来た知人が言う。
 「日本のサッカーは、ワールドカップに出るために、一生懸命やらないのかね」
 「そんなことはないさ。だけど日本の場合は、まずオリンピックが目標だな。ワールドカップは、プロの大会でレベルが高過ぎるからな」
 「ふーん。あんた知らないな。オリンピックは、この次から23歳以下の大会になるんだぜ。日本は23歳以下の若いナショナルチームしか作らないのかね」
 なぬ、なぬっ。確かに、そんな話は聞いたことがある。しかし、本当にそうするのは、むずかしいんじゃないか。
 「ところが、これは本当なんだ。おれはアベランジェから聞いた」
 アベランジェというのは、国際サッカー連盟(FIFA)の会長で、国際オリンピック委員会(IOC)の委員である。ブラジルのアベランジェ氏は、1974年西ドイツのワールドカップのときの総会でFIFAの会長になった。そのときに、19歳以下の若い選手のための世界選手権を開くことを公約した。それがワールドユースである。
 「アベランジェは、代表チームの世界選手権を年齢別にしたいんだ。大人の世界一はワールドカップで決める。23歳以下のジュニアの世界一はオリンピックで決める。そして19歳以下のヤングの世界一はワールドユースで決める」
 なーるほど。確かにアベランジェ会長は、以前に、そんな話をしていたな。
 このアイデアの元には、プロ(ワールドカップ)とアマ(オリンピック)に分けて世界一を決めるのは、あまり意味がない、という考え方がある。アマ(弱い者)同士が試合をすることは結構なことだが、世界一は、やっぱり、強い者でなくては仕方がない。だいたい、どこの国でも23歳を過ぎれば、強い選手はプロになっているから、オリンピックのサッカーは、若手の世界一を決める大会にしよう――というわけである。
 国際オリンピック委員会は、先だって、オリンピックに参加する選手の資格を決める規定は、それぞれのスポーツの国際連盟に任せることにした。サッカーの場合は、FIFAが決めるのだから、案外、アベランジェ案が通らないとも限らない。
 「そこでだ」と、イギリスから来た先生が言った。
 「アベランジェは、さらに15歳以下のジュニアユース、女子サッカー、室内サッカーの世界大会を開きたいって言うんだ。ジュニアユースの大会を、日本で引き受けて欲しいんだがなあ」


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