■少年サッカーのお祭り
さつき晴れに3000人が集まった東京少年大会のつどい
5月10日に、東京の郊外の「よみうりランド」で、全日本少年サッカー大会の東京都大会開会式を兼ねて「東京都少年サッカーのつどい」が開かれた。梅雨入り前のさつき晴れで、多摩丘陵に緑は濃く、風はさわやか。すばらしい。
人工芝のフィールドの上に、参加181チームの選手が2700人あまり。赤、青、黄と色とりどりのユニホーム姿で全員集合したのは、実に、華やかで壮観だった。
入場行進があり、主催者のあいさつがありは、型どおり。夏休みの決勝大会のときも似たようなことをやるが、夏は暑いし、人数も代表に選ばれた48チーム720人にしぼられているから、規模と華やかさのお祭り気分では、この東京都大会の開会式の方が上である。
セレモニーのあとで、ブロック別に組み合わせの抽選があり、ボールリフティング大会をやって、みんなが楽しんだ。
人工芝のフィールド全面に、3000人近い子供たちが広がって、白黒のボールをついているのを見て、ぼくは感無量である。
というのは、5年前に「サッカースポーツ少年団大会」という名前でやっていた大会を「全日本少年サッカー大会」に組織替えする直前、確か東京都の少年団大会参加は13チームで、あまりに少ないので悲しくなった思い出があるからだ。
もっとも、東京都内の少年チームが、それだけしかなかったわけではないので、冬休みや春休みに読売サッカークラブでやっていた自由参加の少年大会には、もっとたくさんのチームが集まっていた。しかし、協会にちゃんと登録して試合をさせるとなると、数えるほどのチームしか集まらなかったのである。
「あんまり集まると、とても運営できませんよ。グラウンドがとれないし、審判も足りないし……」
と先生方が言っていた。
それは、そのとおりで、人口過密の東京では、とくにグラウンドの準備は大問題である。
「でも、子供たちは、毎週、土曜、日曜に、どこかの校庭や広っぱで試合をしたり、練習したりしてるんじゃないの? それをそのまま組み込んで一つの環につなぐように、できないかなあ」
言うは易く、行うは難し。
そう簡単ではないけれど、とにかく先生方の献身的な努力のおかげでことしは181の輪が一つに、つながったのである。
年に1日だけ、その全部の輪が一つのフィールドに集まる。3000人の少年たちが、みな、お互いに仲間であることを確かめあう。
「すばらしいじゃないか!」
東京の少年サッカーのつどいを見て、ぼくは大いに感激した。
■“冠もの”が、なぜ悪い?
企業がスポーツのために協力するのは良いことでは…
「冠(かんむり)ものが、なぜいけないんだね」
と友人が口をとがらせた。
トヨタカップとか、ゼロックス・スーパーサッカーとか、企業名をタイトルにかぶせたスポーツの競技会がある。これを、広告業界では“冠もの”と呼んでいる。
「別に悪いとは思わないけど」
「でも、冠大会は良くないっていうように書いてる新聞があったぜ」
「それは、ある一つの新聞だろ? ぼくは、そんな記事を書いたことはないね」
「新聞だけじゃないね。日本体育協会のアマチュア委員長が、冠大会を規制しろって、がんばっているそうじゃないか」
うん、それは確かに、そんなことがあった。体協のアマチュア委員会が、3年くらい前に決めた方針は奇妙なもので、タイトルの頭にスポンサー名をかぶせた冠はダメだが、サブタイトルに企業名をつけるのは認めようという趣旨だった。
「ゼロックス・スーパーサッカー」はダメだけど「世界クラブ・サッカー選手権―トヨタカップ」ならいいという。
「冠はダメで、パンティならいいってのは、わかんないな」
ごもっとも――。
友人のたとえはあまり上品ではないが、ぼくも、まったく同意見である。
企業が、お金を出してくれるから外国のいいチームや、いい選手を招いて、日本で国際競技会を開くことができる。ファンは喜ぶし、日本のスポーツへの刺激になる。もし、お金があまれば、日本代表チームの強化や指導養成に使うこともできる。
「結搆じゃないか。冠ものが、なぜ悪いかって言いたいよ」
「お金だけくれて、冠はなくてもいいっていうんなら、八方まるく収まるけどね」
「それはムシがいいや」
サッカー関係の仕事をよくやっている世界的PR企業の部長さんに聞いてみた。
「金は出せ、名前は使うなというのは、むずかしい注文ですな。PRによってブランドイメージが良くなれば売り上げが伸びる。したがってスポーツ界にお金を調達できるって関係ですからね。それに宣伝費は経費で落とせますが、寄付となると税金をがっぽり取られるから………」
もう一つ、別のPR企業の部長さんは、こう言っていた。
「日本のアマチュアスポーツが冠大会はいやだって、おっしゃるんなら、それはそれでいいんです。PRの方法は、他にいくらでも考えますから。でも、そうなったら、日本の企業のお金が、どんどん外国のスポーツに流れ出してしまうんじゃないでしょうか」
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