日本最高のリーグというには、現在の日本リーグの状況はあまりにも寂しい。1試合平均2千人強という観客数は、最盛期(68年)の約4分の1にすぎない。リーグの運営上の問題点は、この観客数を増やそうという努力があまりに少なく、無為無策のチームが多かったことだ。
観客動員の努力がない
「ええ、懸案の2部と1部のダブルヘッダーを実現することができて、これは良かったと思っています」
前年度の話だが。日本リーグの日程発表のときに、こういう話をした常任運営委員がいたので「ええっ」と顔を見直したことがある。
この委員は、外国のリーグの組織や運営について、まったく知識がないのだろうか。ヨーロッパや南米の国で、サッカーが大衆に愛され、リーグの試合が多くの観衆を集めている原因と仕組みを考えたことがあるだろうか。
日本サッカー・リーグの低迷は、こういう常任運営委員が選ばれるリーグ運営組織そのものに原因があるんじゃないかと思う。
外国では、ヨーロッパでも南米でも、リーグの試合を主催するのは、地元(ホーム)チームである。
主催という言葉は抽象的だけれど、要するに試合の運営に直接責任を持ち、入場料収入を管理する。ファンのマナーさえ、ホームチームに責任がある。プロでも、アマチュアでも同じことである。
そういうことを考えれば、1部の試合と2部の試合を、同じ日に、同じ会場でやることは、進歩でも改革でもない。
試合を一つだけで運営する能力がなく、グラウンドを確保できない、というだけのことではないか。
今年度もダブルヘッダーがいくつかあった。1部の試合二つのダブルもあり、1部と2部の組み合わせもあった。グラウンド難のためとはいえ、これはけっして良いことではない。
今年度もスタンドは寂しかった。
観客の多かったのは、札幌に持っていった試合だという話である。これは地元の関係者の努力によるもので、リーグの力でも、地元チームの力でもない。
フランチャイズ(地域権)についての考えがないのも、大きな問題点である。
観客動員やPRに無為無策のチームが多かったなかで、1部に昇格したばかりのヤマハ発動機の努力だけが目についた。
地元静岡県でのゲームは、みなテレビ放映されたということだし、ガリ版刷りではあるが1試合ごとに、その結果や戦評を入れた会報を発行して、新聞社にも送ってくれた。外国でサッカーの試合を見に行くと、地下鉄の駅を降りてからスタジアムに行くまでの間に、ファンクラブの会報のような印刷物をファンの少年たちが配ってくれる。そういう感じの会報である。
こんなヤマハのようなチームを育てるなら、たとえば静岡県内では、ヤマハのフランチャイズ権を保護してやるのが本当である。
つまり、ヤマハが地元になる試合以外は、日本リーグ1部の試合を静岡県内でやるべきではない。
また、試合をむやみに、地元以外の県に持ち出すべきではない。
そういう基本的なことをないがしろにして、ご都合主義で運営されているのが、いまの日本である。
“自動入れ替え”は進歩
ただし――。
ここ1、2年、進歩と改革のきざしが、わずかではあるが見えはじめていることを評価しないのは片手落ちだろう。
進歩というには遅すぎるし、改革というには、ささやかすぎるけれど方向が前向きで本筋に沿っている変化が、いくつかあった。
試合のあとで、抽選に当たったファンに、おめあての選手と記念撮影させるようなアイデアのことではない。
評価したいのは、もうちょっと堅い話である。
その第一は、1部と2部の自動入れ替え制だ。
1部の最下位チームを次のシーズンは2部に移し、2部の優勝チームを入れ替え戦なしで1部に上げる。――これは、外国のリーグ戦では当たり前のことだけれど、日本では今までなかなか踏み切れなかった。今年度から部分的だが採用したのは英断である。
この次の機会には、1部のブービーと2部の2位の入れ替え戦も、廃止してもらいたい。
目立たなかったが、外人登録制限の緩和もあった。
前年までは、外国籍の選手の登録は、日本リーグでは1チーム3人までだった。それを今年度から、5人まで登録できるようにした。一つの試合に出場できるのは、交代要員を含めて、これまでどおり3人だけだが、5人までプログラムに載せられるわけである。
この制度は、日本で生まれ、日本で育った外国人のチャンスを拡大するために活用してほしいと思うが、ともあれ、排他的な傾きの強い日本のスポーツ界だけに、門戸開放の精神はいい。
もう一つ、2年間続いたPK戦の廃止も今年度の“変化”だった。
元に戻ったのだから“進歩”とはいえないが「あやまちを改むるに、はばかることなかれ」である。
|