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サッカーマガジン 1980年11月10日号

ビバ!! サッカー!!

大学サッカーは悪くない
関東大学リーグの運営と試合内容の良い点を伸ばそう

 地下鉄の本蓮沼駅の階段をのぼりかけたら、関東大学サッカーリーグのポスターが、パッと目にはいった。カラー鮮やかな、なかなかいいポスターである。
 昨年だったと思うけど、日本リーグのポスターが、白黒のおざなりのデザインで、経費節約の悪い見本であることを指摘した覚えがある。にもかかわらず、ことしも日本リーグのポスターは、およそ見栄えのしないものだった。それに比べると大学リーグのポスターには、努力の跡とやる気が見えた。派手なポスターを作って、けばけばしくPRするのがいい、というつもりではない。
 自分の学校の土ほこりのグラウンドに、相手のチームを迎えて、観客は1人もいなくても、真剣に試合をするのも、すばらしいサッカーである。そういう試合を友達に応援してもらおうと、学校の中に手描きのポスターを張り出すのも、また貴重な努力である。
 しかし、スタンド付きのスタジアムで、入場料をとって試合をしようとするからには、やはり、それだけの気合のはいった運営をしてもらわなければ困る。カラーポスターを作るのだけが、いい運営だというつもりはないけれども、落ち目の大学サッカーを、なんとか盛り立てようとする努力の一つであれば、ぼくは大いに称賛したい。
 さて、地下鉄の本蓮沼駅で降りたのは、西が丘サッカー場に、関東大学リーグの開幕試合を見に行くためだった。大学リーグの試合は、最近はなかなか見に行く機会がないけれども、たまたま、その日は夜勤明けだったので、眠い目をこすりながら出かけたわけである。  
 法大−駒大、筑波大−日大の2試合を見たが、試合の内容は、想像していたよりも、ずっと良かった。
 「大学リーグも捨てたもんじゃないぞ」というのが、ぼくの感想である。
 大学チームには、正月の高校選手権で活躍したヒーローたちが、たくさんいる。この日も、法大には川勝良一(京都商出、4年)、水沼貴史(浦和南高出、2年)、筑波大には桜木浩二(神戸高出、4年)、森田洋正(浦和南高出、4年)などが出場していた。こういう素質充分の選手たちが個性をのびのびと発揮して、若々しいプレーをすれば、結構いいサッカーができるはずである。
 それぞれの大学のOBたちからみれば、まだまだ、もの足りないようで「動きが足りんぞ」とか「サボるな」というような声もスタンドから飛んでいた。しかし、センスのある動きやパスも随所にあったので、ぼくは、そういうプラスの面に、大いに注目した。
 運営に努力のあとがあり、試合内容にフレッシュなところがあるのだから、そこのところを大きく伸ばすようにしてほしいものだと考えた。

天皇杯改悪の愚挙
60周年記念に、やリ方を変えた協会の無思慮無定見

 最近になって知ったのだが、今年度の天皇杯全日本選手権大会のやり方が、ちょっと変わったんだそうである。その話を聞いて、ぼくは驚き、かつ、あきれた。
 12月に始まる決勝大会の出場チーム数を、これまでの28から30チームに増やす。これはまあ結構である。問題は、その増やし方だ。
 これが、すこぶるいい加減で、6月1日に終わった日本リーグ2部のその時点での首位(富士通)と、7月の総理大臣杯全国大学トーナメントの優勝チーム(法大)を、地域大会を免除して決勝大会に出場させるんだそうである。
 しかも、このいい加減なことを、天皇杯60周年の記念としてやるんだというから、日本サッカー協会の幹部諸公は、なんと無定見で、かつまたアイデアに欠けているんだろうか、と気が遠くなりかけた。
 さっそく日本サッカー協会の事務局に出かけて確かめてみた。
 「ええ、そのとおり。昨年の10月ごろ天皇杯実施委員会から出て来たアイデアで、ことし5月の理事会で正式に決まりました」
 つまり、半年がかりで論議して決めたアイデアだというわけだ。
 「こういうやり方は、天皇杯の本質に反するんじゃないか、という考えは、その間にチラとも浮かばなかったんですか」
 「いや、そういう考えも出るには出ましたよ。しかし60周年記念に何かしようということで……」
 協会側の説明は、ぼくの耳には、とても筋道立ったもののようには聞こえなかった。
 ぼくの考えは、こうである。
 天皇杯は、日本サッカー協会にとっても、もっとも大事なタイトルである。これはイングランドのFAにとって、FAカップがもっとも重要な事業であるのと、まったく同じだと思う。そういう重要なタイトルのやり方を、単なる思いつきで、安直に変えてはならない。
 天皇杯では、すべてのチームを平等に扱うようにするのが理想だけれども、そうすると決勝に進出するような強いチームは試合過多になる。そこで1部のチームは、トーナメントの途中から出るようにシードするのだが、これは、やむを得ず採用している方法である。
 そういうことを考えれば、シードするチームの選び方は、誰がみても納得する、公平なものでなくてはならない。また、こういう重要な変更は、各地の大会の最初の段階がスタートする前に、全国に周知徼底させておくべきことである。
 日本リーグ2部のシーズン途中でたまたまトップにいたチームや、まだ戦力が整っていない時期の総理大臣杯優勝校に、特別の待遇を与えて、どんな意味があるのだろうか。


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