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サッカーマガジン 1980年10月25日号

ビバ!! サッカー!!

絵になる男・釜本
ハットトリックの写真を撮って、新聞に載せさせた話

 すてきな話、ビバの話を書こうと思うと、どうしても釜本邦茂になってしまう。たいしたもんだよ。ヤツは。
 日本リーグ後期スタートの第10節の9月7日、ヤマハ対ヤンマーの試合を見るために、静岡県の磐田市に出かけた。「釜本がハットトリックをしたら新聞に写真が必要になるんじゃないか」とひらめいたもんだから、東京からわざわざ私物のカメラを持っていった。新聞社が、日曜日の地方取材にプロのカメラマンを派遣してくれるほどサッカーの人気が出て欲しいと思うけど、いまのところは仕方がない。
 ぼくの愛機はキヤノンAE−1。持って行ったレンズは200ミリの望遠。一昨年のワールドカップとことしのモスクワ・オリンピックのとき、報道関係者用のズームレンズを貸してくれたメーカーのためにここでちょっとPRさせてもらう。
 とはいえ、カメラが良くても腕が悪くては仕方がない。そこに、ちょっと不安がある。また、せっかくカメラを持って行っても、釜本がハットトリックを演じてくれなければ、意味がない。
 ヤマハのグラウンドに着いてみたら「サッカー・マガジン」のカメラマンは来ていたけど、新聞社の写真部員は見あたらなかった。テント張りの中の記者席に「釜本の写真撮ったら特ダネだぞ」と冗談を残して、ゴールライン裏に陣取る。腕とかっこうはともかく、撮影位置はプロ並みだね。
 ぼくのインスピレーションは、やはりたいしたものである。釜本だけをねらっていたら前半に2点をとった。ほんとは自信なかったけど、とにかくシャッターは、ちゃんと押した。
 ハーフタイムに記者席にもどってスポーツ紙の記者に「後半にもう1点とったらハットトリックの3枚組み写真になるぞ。そうなったら高く売るぞ」と悪ノリの冗談をいって、後半は逆サイドのゴール裏へ。そしたら、ホントに本当の3点目。びっくりしたなあ、もう。
 夜遅く東京の本社に帰り着いて現像してもらったら、写っていることは写っていた。最近はカメラも、フィルムもいいからね。
 そこで特ダネ写真だからと胸をはって、3点目のヘディングのやつを最終版に載せてもらった。実はピントがちょっと甘かったんだけど、なにしろガマッチョが、勝手に動きまわるもんだから、そこんところは目をつぶってもらわなくちゃ。
 ともあれ、ファインダーからのぞいてみても、釜本はビバなやつだということが、よくわかった。
 シロートがねらっても、とにかく「絵になる男」なんだから――。

再び“選抜FC”について
阪本勁夫氏から寄せられた弊害をなくすための再反論

 緊苦しい話を堅苦しく書くことを今回はお許しいただきたい。全日本少年サッカー大会に出てくる、いわゆる“選抜FC”についてである。
 前々回(9月25日号)に「選抜FC批判への反論」という見出しで書いた記事への反論(つまり反論に対する再反論)を東京・東久留米ジュニアサッカークラブの阪本勁夫という方から「サッカー・マガジン」編集部を通じていただいた。400字詰原稿用紙10枚の堅い論文のため、雑誌の性質上、そのまま掲載しにくいという編集部の話なので、ぼくが毎号もらっている、このページをさいて、阪本さんのご意見を要約して、ご紹介したいと思うわけである。
 市内の優秀な小学生選手を集めて「清水FC」とか「四日市少年団」というようなチームを編成して単独のクラブという形式で日本サッカー協会の第四種に登録し、全日本少年大会の県予選を経て参加する――そういうチームを“選抜FC”とかりに呼んでいるのだが、こういう“選抜FC”には弊害がある。どういう弊害があるかについては、阪本さん自身のご意見が、8月10日号(68ページ)に載っている。また大谷四郎氏も9月25日号の“サッカー日記”に書いておられる。
 そういう弊害を取り除くため、あるいは少なくするためには、「選抜FCはけしからん」というだけではダメで、代わりの案が必要だと、ぼくは書いたのだが、それに対して阪本さんは、次のような代案を出してこられた。
 @単独チームと選抜チームを分離して、別々の全国大会を行う。
 A全国大会を文字どおりの単独チームの大会とする。
 B現在の大会の参加資格についての「単独チームであること」という規定を削除する。
  以上の三つであるが、阪本さんの本当のねらいは、@の「全国大会を文字どおりの単独チームの大会に」というところにあるものと思われる。
 ここでいう単独チームとは、小学校単位のチームに限るということではない。選手たちがいつもそのチームに所属して練習や試合をしているチームであれば、町のクラブであっても構わない。
 問題は、いわゆる“選抜FC”と一般の町のクラブチームを、協会への登録(参加資格の規定)の上でどう区別するかにあるのだが、その点について阪本さんは「まったく問題はない」と書いておられる。
 なぜなら“選抜FC”を作っているのは民間の人ではなく、その地域の協会自身、あるいは協会の有力者だから、というのである。
 “選抜FC”には弊害があり、好ましくないという点では、ぼくも阪本さんと同じような考えを持っているけれども、その対策については意見が違う。しかし、ここでは阪本さんのご意見を紹介するにとどめておくことにする。


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