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サッカーマガジン 1979年5月25日号

時評 サッカージャーナル

フランチャイズ制のすすめ

多すぎる東京の試合
 「日本リーグの悪口は良かったぞ。ああいうやつをもっと書け」
 と友人がいう。
 こっちは別に「悪口」を書いてるつもりはない。「建設的意見」を述べて、読者大衆のご賛同を仰ぐとともに、日本サッカー協会ないしリーグ当局の参考にも、と思っているんだけど……。
 ともあれ、友人がしつこくいうので、前回に続いて、日本リーグの“悪口”を書くことにする。
 さて、ぼくは新聞社の運動部に勤めていて、いわば宮仕えの身だから自分勝手なことはできないが、ことしは少し、わがままをして、せっせとサッカー場に通いたいと考えた。
 そう思って、改めて日本リーグのスケジュールを見たら、びっくりしたなあ。日本リーグの試合はほとんど東京かその近辺で行われている。たとえば、4月20日から22日の第4節の5試合は、駒沢競技場が4試合、西が丘サッカー場が1試合。つまり全部が東京である。
 前期45試合のうち、東京の三つの競技場と横浜の三ツ沢球技場で行われる試合が29ある。64%である。関西は、大阪の長居競技場と神戸中央球技場で5試合だけ。これはヤンマーのホームゲームだ。
 東京の試合が多すぎることは、明らかだが、考えてみるまでもなくこうなるのは当然だ。日本リーグ1部10チームのうち、東京を中心とする首都圏のチームが、三菱、日立、古河、フジタ、読売、鋼管、日産の7チーム。あと大阪、広島、北九州に1チームずつあるだけである。サッカーの日本リーグは、世界各国のリーグと同じように「ホーム・アンド・アウェー方式」で行われているから、東京にチームが集中していれば、東京のゲームが多くなる。
 これでは、全国的にサッカーを盛んにしようという趣旨に合わない。「日本リーグ」と称しているが、ほとんど「関東リーグ」ではないか。
 「そうすると、なんだな。ホーム・アンド・アウェーってやつが無理なんだな。もっと地方都市へ巡業すればいいんだ」
 と友人がアイデアを出した。
 それも一つの方法ではあるけれど、ぼくは反対だ。
 バレーボールやバスケットボールの日本リーグは、「巡業方式」をとっている。
 各チームの本拠地はなくて、シーズンの開幕試合や、優勝の決まりそうな最終週の試合を、東京や大阪でやるように、日程を組んでいる。そのほかの試合は、全国各県の協会に売りわたして巡業して歩くわけである。
 これは、地方の人に試合を見てもらうという点では役に立つ。バレーボールの場合は、地方ではかなりの観客動員力があるから、地方協会は、財政的にも十分、やっていけたんだそうだ。
 「でも、この巡業方式には、大きなデメリットがあるんだよ」
 と、ぼくが説明した。
 「新聞を見てもらえば、わかるけど、同じ日本リーグでも、サッカーのほうが、バスケットボールより大きく載っているだろ。地方巡業ばかりになると、ぼくら新聞記者は見に行くことができない。カメラマンを出すのも、むずかしくなる。本拠地方式で、じっくり腰をすえてやってくれるスポーツのほうが、新聞でも扱いやすいんだよ」
 もう一つ、つけ加えると、巡業方式は、もの珍しいうちは成功するけれども、何回も繰り返すと、お客さんが集まらなくなる。最近は、巡業方式の日本リーグも、観客動員数は、落ち込んできていて、地方都市でも、引き受けを、しり込みするところが増えてきているという。

地方の本拠地育成を
 「だから地方巡業よりも本拠地で、じっくりファンを育てるほうがいいと思うな」      
 「でも、いまのサッカーの日本リーグでは、どうしようもない」
 「これは、フランチャイズ制の確立に、じっくり取り組むことからはじめなくちゃ」
 「というと――」
 「各地域に、それぞれ日本リーグへの加盟権を与えるんだ」
 「よくわからないな」
 「たとえば、関東、関西、東海、中国、九州などの各地域に、少なくとも、1チームずつ、日本リーグに加盟する権利を認める。原則として、一つの県からは1チーム。東京のような大都市で、サッカー場も多いところは2、3チームまで認めるようにする」
 「でも、いまは首都圏に7チームもあって、名古屋には、1チームもない」
 「だから、こうなる前に手を打つべきだったんだが、いまとなっては仕方がない。少しずつバランスを直していくようにする。東京3、横浜1、名古屋1、京阪2、九州1くらいの割合が適当だろう」
 「そうすると、弱い地域からも、最低1チームは出せるわけか。そんなことしたら、名古屋のチームは毎年最下位だなあ」
 「そうはならないと思うね。東海地域から少なくとも1チームということなんだぜ。ビリになれば、その地域の他のチームと入れ替える。静岡から本田かヤマハが上がってくるかもしれない」
 「そうすると首都圏のチームはたいへんだな。7チームのうち3つ減らさなきゃならない」
 「毎年、7つのうちの最下位チームを一つずつ落としていく。しりに火がついているから必死になって試合をするんじゃないか」
 「逆に地方からは日本リーグにはいりやすくなるから、有力チームが地方に本拠地を置くようになるかもしれないな。そうすれば、地方のサッカー振興に役立つかもしれないね」
 これは、まったくの私案にすぎないが、リーグ当局は、地方に本拠地を育成するように、なんらかの手を打つべきだと思う。
 ひとつの週の5試合が全部、東京で行われるような中央集中のスケジュールをつくって平然としているのは、どうかしている。日程を消化しさえすれば、それでいいというつもりなんだろうか。


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