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サッカーマガジン 1976年1月10日号
時評 サッカージャーナル

おかしな、おかしな話

大学選手権のシード順
 おかしな話を二つ聞いた。
 一つは全国大学選手権大会の組み合わせである。
 この大会には、全国各地域の大学の代表16校が参加する。そのうち関東大学リーグの1部が上位5校、関西学生リーグの1部が上位3校である。関東、関西の上位校のレベルが上であることは、現状ではだれにも異存はないだろう。そこで組み合わせ抽選をするときに関東と関西の上位校をシードする。
 ここでシードというのは、早いラウンドで強いチーム同士がぶつからないように、あらかじめ配分することである。
 さて、今回の大会の組み合わせをみてみると関東大学リーグ1位の早大が、非常に有利である。サッカーのことだから、絡果はどうなるかわからないが、順当なら決勝へ楽に出られそうだ。一方、関西学生リーグ1位の大阪商大は2回戦で関東3位の中大と当たることになっていて、かなり、きびしい組み合わせである。
 これは、関東と関西にややレベルの差があることから生じているのではあるが、シードの仕方にもおかしなところがあるようだ。
 組み合わせを作るときに、シード校に次のようにランキングをつけてみるとする。このさい、関東を上にするか関西を上にするかは、便宜上のことで、どうせ左右に配分するのだから影響はない。 
  今回の組み合わせでは、Gに関東5位の日大が入っているが、これは関西の4位校には出場権がないためである。
 ところで今大会のシード校の組み合わせを抜き出してみると表Aのようになる。そして円内のシード順の数字を、隣同士で加えてみると下の( )内の数になる。つまり外側の2校の合計は、それぞれ7になり、内側の2校の合計は、それぞれ11になっている。
 これはおかしい。シード順の数字のブロックごとの合計は、同じになるようにするのが、ふつうのやり方である。
 正しい組み合わせは、表Bである。これだと隣同士のシード順の数字の合計は、みな9にたる(このさい第8シードに関東1位を入れるのが妥当かどうかは、問題にしないことにする)。
 お断りしておくが関東と関西のバランスに関しては表Aでも、不公平ということはない。関西1位が関東3位と当たるのと同じように、関東1位は関西3位と当たるからである。
 だが今回の場合、たまたま、関東3位の中大は、トップ・シードの早大と同じくらいの強豪であったために、関西1位の大阪商大には、つらい結果になった。これが正しいシードでそうなったのならやむをえないが、間違ったシードの結果だから、大阪商大としては少なからず不満だっただろうと推察する。おそらく組み合わせを作った協会大学委員会の単純な間違いだろうと思うが、全国いたるところの町や村の大会で組み合わせを作るとき、同じような間違いをしないように、少し詳しく解説したしだいだ。

社会人大会の矛盾 
 もう一つの“おかしな話”は、もっと本質的な問題である。
 11月下旬に静岡県で全日本社会人大会があった。この大会に地元推薦で杉山隆一監督の率いるヤマハ発動機が出ている。これがおかしい。
 この種の大会に地元推薦チームが一つ認められるのは、これまでの日本の慣例で、その限りではヤマハの出場が異例だというわけではない。ただ問題は、この社会人大会の上位2チームには、日本リーグ(2部)への入れ替え戦出場権が与えられることである。 
 かりにヤマハが勝ち進んで挑戦権を獲得し入れ替え戦にも勝って日本リーグにはいったとしよう。
 ヤマハは現在、静岡リーグに属しているが、その上にある地域の東海リーグを飛び越して日本リーグヘニ階級特進したことになる。
 「実力があるんだからいいじゃないか」という議論もあるかもしれない。しかし社会人大会は運、不運が大きな影響を持つ短期集中方式の勝ち抜きトーナメントだ。この大会で勝ったチームが、必ずしも高いレベルの長期リーグを戦い抜けるとはいえないはずである。
 これは、社会人大会を日本リーグ挑戦資格を決める試合に指定しているために生じた矛盾である。
 日本リーグにはいるチームは、各地域リーグの優勝チームのうち、実力からみても、競技運営能力からみても、その資格があるものを選ぶべきである。地域リーグで優勝できなかったチームや、さらにそれより下のランクのリーグのチームにチャンスを与えるのは、まったくおかしい。
 こういうことは今にはじまったわけではなく、5、6年前から指摘され、過去にも矛盾や弊害が起きている。大学選手権の組み合わせが妙なのも、今回が初めてではない。
 おかしなことを少しも改めないで毎年繰り返すのは、おかしなうえにさらにおかしなことである


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