学校単位への疑問
夏休み前のことだけど、日本サッカー協会に、中国地方のある中学生チームから問い合わせの手紙がきていた。
「私たちのチームは、全国中学生大会をめざしていますが、最近メンバーの1人が家庭の都合で別の中学校へ転校して行きました。小学生のときから、いっしょにサッカーをやっていた仲間であり、転校しても、サッカー部では現在もいっしょに練習しています。中学生大会に、私たちのチームの選手として出場させてよろしいでしょうか」
だいたい、以上のような趣旨である。
似たような例は、ほかにも、たくさんあるようだ。
小学生のときは、同じサッカー少年団にいたチームメイトが、別の中学に進んだ。学校は別でも、サッカーは続けていっしょにやりたいのだが……という例もある。
現行の規則に従って結論を出すと「残念ながら、それはダメ」ということになる。全国中学生サッカー大会の要項には、参加資格の項に日本サッカー協会に加盟登録の単一中学校のサッカークラブであることとなっている。「単一の…」というのは「他の中学校に通っている者を仲間に入れてはいけない」ということだ。
「あたりまえじゃないか」と思う人も多いだろう。日本では学校スポーツが非常に盛んだから、学校単位でチームを作るのが当然だと考えやすい。「甲子園の高校野球だって、一つの学校の生徒だけで作ったチームが、母校の名誉のために汗と涙の熱戦を繰り広げたじゃないか。試合のあとには勝った学校の校歌が演奏されたじゃあないか。サッカーの中学生大会だって同じだろう」と。
ぼくは「単一の学校チーム」が「母校の名誉」のために大会に出ることに反対するつもりはない。ご承知のように、サッカーの盛んなヨーロッパや南米では、学校単位のチームによる大会は、あまり見かけないけれども、日本には日本の伝統がある。同じ学校の仲間が集まって、もっとも強力なチームを編成して日本一を目ざそうというのも結構だ。
「しかし」である。
通っている学校は違っても、近くにいる仲間たち、あるいは小さいときから、いっしょにプレーしている仲間たちがチームを作って大会に出るのを、妨げる理由があるだろうか。
一つの学校の生徒だけでチームを作るのも良いけれど、別々の学校に通っている仲間たちでチームを作ってもいいじゃないか。
「チームを作ったっていいさ」という声が、ぼくの耳に聞こえてくる。ただ、「中学生大会には出られないだけだよ」
そうはいうけれど「単一の中学校チーム」でないチームの出場する大会は、ほかにないのだ。同じ12歳〜14歳の年代のチームを、「単一の中学校」でないという理由で、なぜ大会から締め出さなければならないのか。
もう一つ、つけ加えれば、この大会の名称は「全国中学生サッカー大会」であって「中学校大会」ではない。
一昨年まで「中学校」大会だったが、昨年から文部省や中体連の意向によって「中学生」に変わっている。
大会の名称が変わったわけは、このような中学生のスポーツ活動を「学校教育」の枠の中でなく、もっと自由な、地域社会の中での活動として、のびのびとやらせようという趣旨からである。
だから、サッカーのように「中学生大会」と名前だけ変えながら内容を「単一の中学校」の大会に制限しているのでは、看板と中身が違うわけである。
登録制度を年齢別に
同じようなことは、高校生の年代についても、大学生や社会人のチームについてもいえるだろう。
もちろん、小学生、中学生、高校生と大学生以上の大人のチームでは、体力が違う。だから年齢別の区別は必要だが、学校別の区別はかならずしも必要ではない。
ところが、現在の日本のサッカーの組織は、日本サッカー協会の登録制度が、すでに学校別になっている。
協会の登録は、次のように分かれている。
@一般団体
A単独の大学または高等専門学校の学生または生徒をもって構成する団体
B単独の高等学校生徒をもって構成する団体 Cサッカースポーツ少年団または、これに準ずる団体で中学校生徒または小学校児童をもって構成するもの
D単独の中学校生徒をもって構成する団体
E単独の小学校児童をもって構成する団体
以上の6種別である。
ぼくの考えでは、協会の登録規定を、こんなに煩雑にする必要はない。簡単な年齢別でいい。
たとえば次のようにする。
@17歳以上のチーム
A15歳以上19歳未満のチーム
B12歳以上16歳未満のチーム
C13歳未満のチーム
西ドイツの少年サッカーが、2歳区切りのエージ・グループになっているのにくらべると、区切りが大まかすぎるけれども、学校単位のチームが、年齢別の中に含まれるように考えてみたものだ。
学校単位のチームも結構だ。しかし、そうでないチームも、同じ年代ならば、いっしょにサッカーができるようにしようじゃないかというのが、ぼくの提案である。
いろいろ、異論もあるだろうと思うが、重要な問題だから、この際、徹底的に考えてみたい。読者の皆さん、特に学校チームの指導者の先生方からご意見を、お寄せいただければ幸いである。
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