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メキシコとそのあとは……
竹腰理事長に協会の方針をきく (3/3)
(サッカーマガジン1968年4月号)


クラブ組織で普及を

―― このほかに、一小学校区にひとつずつサッカー・クラプを作るとか、昨年に引続いて、サッカー少年団の全国大会を開くというような普及面の対策がありますね。

竹腰 ひとつの小学校ごとに、ひとつずつサッカー・クラブを作ろうというのは、ことしはじめて打ち出した考え方ですが、これには、いろいろなねらいがあります。ひとつにはグラウンド難を打開するために、小学校の校庭を利用すること、それには、その小学校の学校区内の人たちで、責任の持てる.組織を作らなければならない。もうひとつは、スポーツは、近くに住んでいる人たちが集まってやるのが、いちばんいい形だということです。
 現在のサッカー・チームは学校教育の範囲の中で学生だけがやっているとか、同じ職場のものだけでやるという形ですが、外国のように、地域的な特色を出したクラブが、もっと出てこなければいけないと思う。もっとこういう形で普及させて大衆的な盛り上がりを期待したい。
 これは、ことしから全国いっせいに、というわけにはいかないので、地域の体育指導者の集まりを開いて、どういうふうに進めるか、ご意見をききたい。とりあえずモデル・スクールのようなものから推進してもよい。これは少年たちばかりを対象に考えているのではなく、ひとつのクラブに、おとなのチームもあっていいし、少年チームもあっていいのではないでしょうか。


協会への注文 ― 日程やカップ制など

―― オリンビックだけに目を向けずに、これだけ広い視野で “将釆の計画” を立てたのは立派だと思います。これは、ぜひ実行していただきたい。最後に注文といいますか、ことしの事業計画の中にはいっていないことで、日本蹴球協会に、ぜひ考えてもらいたいことをひとつあげて、ご意見をうかがいたいのです。
 それは競技会の日程の問題で、これにはいろいろあるのですが、ここでは天皇杯全日本選手権のやり方について、うかがいます。
 現在は日本リーグの上位4チームと大学選手権の上位4校に出場権を与えていますが、これでは末端のチームには天皇杯に挑戦するチャンスがないわけです。かりに東京リーグの3部に新加盟したチームがあったとして、これが連戦連勝を続けたとしても、天皇杯を獲得するには5年かかる。リーグは同じ程度の力のチーム同士で争う一つの組織として、天皇杯は、末端のチームにも、同じ年度のうちに挑戦の機会のあるカップ・システムの別の大会にすべきではないでしょうか。外国ではリーグとカップは別々です。協会加盟の末端のチームが、天皇杯を通じてトップ・レベルにまで、つながっているということは、技術向上ということを離れて、サッカーというスポーツの精神というか、立て前からみて、大切だと思うんですが、どうでしょうか。

竹腰 日本のサッカーも、ヨーロッパのようなリーグとカップの二本立てにしたいという考えは、理想としては持っています。ただ現状は日本リーグからはじめて、リーグ制を地方にも及ぼしていこうという段階で、まだその時機ではないと判断しているわけです。天皇杯については、昨年度に古河電工などの出場辞退があって、新聞紙上でとりあげられたので、説明しておきたいと思います。
 協会としては、天皇杯を単に、日本一を決めるためだけの大会であるとは考えていません。現在、日本リーグと学生の上位がともに、第一線の力を持っているけれども、おたがいに試合をする機会がない。そこで天皇杯で修練の場を与え、おたがいに腕をきそってサッカー技術の向上に役立てるのが趣旨です。両方の上位4チームずつに出場権を与えているのも、そういう理由からです。
 ただ、日程については社会人の側から、1月〜3月は、オフシーズンにしてもらいたいという要請が出ていました。そこで次回からは12月中に、準々決勝と準決勝をやり、1月1日に国立競技場で決勝をやるという日程を組んでいます。そして少なくとも準々決勝は、どちらかのチームの地元に会場を分散してやるつもりです。


むすび

 日本代表チームから少年サッカーまで、高い頂点から広い底辺まで、一貫した指導普及の仕事を進めて、日本のサッカーに “ビッグ・スポーツヘの道” を歩ませよう ―― これは竹腰理事長だけでなく、野津会長も、長沼、岡野、平木ら若手コーチ陣も、日本蹴球協会の人たちが、みな固めている強い決意である。
 9年前、ローマ・オリンピック予選に負けたことがきっかけになって、クラーマー・コーチが招かれ、日本のサッカーは再建第一期を迎えた。
 ことし1968年は、再建第二期が具体的に第一歩を踏み出す年になるのではないか。

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