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サッカー戦国時代を占う三つの鍵 
      −日本リーグに戦国時代がやって来た
(2/2)
(サッカーマガジン1967年6月号) 


リーグを占う三つの鍵
 
 だが、3年目の序盤戦をみると、日本リーグの行く手は、サッカー戦国時代のようである。そして、その成否を占うには、三つのカギがあると思う。
 
◇第一のカギ 第一のカギは、東洋と八幡が落ち目かどうかだ。
 戦国時代の魅力が、全体のレベルの高いことにあるとすれば、2年間1、2位を占めた東洋と八幡の実力が低下して戦国時代になったのでは、マイナスである。
 東洋工業の下村監督は、「戦力は昨年より二割増だ」という。それだのに第一戦で三菱に土をつけられたのは、なぜか。
 雨の泥んこ試合がたたったには違いない。昨年日立に連勝をストップされたときと、同じ条件である。記録によれば、この試合が左サイドの桑田のシュート0、松本が1、これは小城4、岡光5にくらべてアンバランスだ。
 昨年日立に負けたときも、同じ傾向の数字が出ている。
 泥んこでパスがつながらないとき、桑田−松本ラインの地力の弱さが出たのに違いない。戦力 “ニ割増” の公約を守るには、ここらあたりが課題といえそうだ。
 八幡は逆に寺西監督が「戦力は一割増だ」という。佐伯の退社があり、第一戦は古河に完敗したが、それほど力が落ちているはずはない。宮本輝はますます巧くなっている。主将の渡辺に、ぐいぐいチームを引っぱっていく気迫があれば、控え選手がいないとはいえ、レギュラーのうち7人が日本代表候補なのだから、実力ずい一のはずである。
  
◇第二のカギ 第二のカギは東洋に土をつけた三菱の強さは、ほんものか、どうかだ。
 このチームが、実力を身につけるのも、また東京一の人気チームになるのも、後期になってからのことだと思う。
 杉山は「森が中盤に入って、パスが足もとへ足もとへ吸いつくような気がする」といっているが、新人の森、大西、瀬木谷がフル回転するには、もう少し時間をかけてみなければならない。
 それに、優勝をかけると思われる三菱−東洋、三菱−八幡の好カードの東京の試合は、ともに後期にまわされている。杉山の足がさわやかな秋のシーズンに、駒沢のスタンドをわかせるに違いない。
 三菱がほんものかどうか。それは秋にためされることになる。
  
◇第三のカギ 第二節の豊田−鋼管を見るため、刈谷の駅に降りたら、うしろからぽんと、肩をたたかれた。
 ふり返ったらヤンマーの古川前監督だった。ヤンマーは前週にエース釜本の活躍で、豊田織機に逆転勝ちしたばかり。
「豊田は、けっこう強いですよ。ゆだんできないですよ」
 古川監督は、こういった。
「われわれ下位チームにとっては、ことしの日程は序盤戦が星のつぶし合いですからね。はじめに勝っておかんと、話になりませんわ」
 刈谷の試合は、これもひどい泥んこで、リーグ新加盟の日本鋼管が、予想外の、しかしみごとな初白星をあげた。オープン攻撃からの大きなパスが、小気味よく合っていた。「これで鋼管が自信をつければ、リーグのお荷物にならないですむね」
 と、これは記者席のささやきである。
 下位チームが、上位チームをおびやかすだけの力をつけて、戦国時代を盛りあげるかどうか。これが第三のカギである。 

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