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名勝負とぼくの選んだ個人賞選手 (4/4)
(サッカーマガジン1967年1月号) 


ぼくの選んだベスト・イレブンと個人賞

 最後に、このシーズンに活躍した個人をとりあげなければならない。ここでは、ちょっと目先を変えて、この選手たちの誌上表彰を試みよう。
 11月19日に東京の工業クラブで表彰式が行われたとき、得点王の小城、アシスト王の桑田などは、新聞社から抱え切れないほどトロフィーをもらっていたが、この誌上表彰には、賞状もトロフィーも差し上げられないのが残念だ。

▽ベスト・イレブン スポーツ新聞2社が選考して、まったく同じ顔ぶれを選んでいたが、ぼくの選んだのを4―2―4で並べてみよう。

       GK・保坂
片山   今西   上   宮本征 
     小城   八重樫
杉山   宮本輝   桑田  松本
                                  
 スポーツ紙の選んだのと、ゴールキーパーだけ違っている。ここは日本代表選手の横山を置くのが順当なところだろうけれどぼくの見たかぎりの日本リーグの試合では、保坂のうまさが印象的だった。
 保坂は、体力的に盛りを過ぎているし、全試合出ていないのも選考のさいのハンディだが、日本のゴールキーパーとして革命的な進歩を見せた名選手である。最盛期を過ぎてからサッカー・ブームが来たために、最優秀選手の表彰も、何も受ける機会がなかった。このことを考慮して、人情からも誌上ベスト・イレブンには保坂を選んだ。
 FWは杉山を右にまわし、桑田―松本の東洋左コンビを、そのまま生かす。桑田は、惜しくもアジア大会代表からもれたが、日本リーグとしては、アシスト王でもあり、はずせない。

▽最優秀選手 宮本輝紀(八幡製鉄)――得点十傑では11点で第3位だが、PKを除けば、10点でトップである。ことしの活躍は目ざましかったと思う。1月の全日本選手権終了後に行われるサッカー記者の投票で、あるいは本当に”最優秀選手”に選ばれるかも知れない。
▽最高殊勲選手 小城得達(東洋工業)――チームの優勝にもっとも貢献したという意味で。

▽最優秀新人賞 木村武夫(古河電工)――ほんとは杉山かも知れないが、杉山が新人扱いでは、ほかの選手の出る幕がない。そこで杉山君には
▽最優秀シュート賞 杉山隆一(三菱重工)――開幕試合の対日立戦で、タイムアップ寸前に左寄りからロング・シュートの決勝点を決めたのは、すばらしかった。ついでに同僚の継谷君にも
▽最長距離シュート賞 継谷昌三(三菱重工)――9月30日、八幡製鉄とのナイターで約40bの決勝点をあげたのは、スタンドをびっくりさせた。
 次は大相撲の三賞にならい
▽殊勲賞 石井義信(東洋工業)――優勝を左右した前期の対八幡戦で、宮本輝紀をマークした粘り強さの功を買う。
▽敢闘賞 城山喜代彦(名相銀)――後期の第一戦対東洋工業でゴールキーパー北川が負傷したあとを埋めて出場。批評のよくなかった試合もあったけど、ぼくの見たかぎりでは非常な奮闘ぶりだった。
▽技能賞 桑原勝義(名相銀)――小柄なので損をしているが、名相銀の攻撃にうまさを加えた功績は大きい。名相銀の試合は、前年にくらべ、ぐっとおもしろくなった。
▽ご苦労賞 長沼健、平木隆三(古河電工)――日本代表チームの監督、コーチでありながら陣容の先頭に立ち、後期の対東洋戦は出ずっぱりの奮戦。青木(日大出)田中(慶大出)など古河の新人のもう一歩の奮起を望む。
▽奨励賞 利根沢俊、夏井省一、坂村岱、岡田貞夫(以上日立本社)――日立の高校出身若手グループである。夏の間に、自主的に日産厚生園で合宿練習したという。日本リーグの功績のひとつはこういう若手に舞台を与えたことである。欲をいえば、服部監督がベンチで大声をはりあげなくてもすむように、戦況判断をよくしてがんばらねばならないところではチームの先頭に立ってほしい。
 ――何しろ誌上表彰は、ふところが痛まない。つぎつぎに書いていったら紙数がつきてしまった。
 三年目のシーズンが、これ以上の名勝負、好プレーの続出になるよう期待しよう。

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