さあ、いよいよ本番だ!! オリンピック・アジア地区予選
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(サッカーマガジン1967年10月号)
■ オリンピックはもうはじまっている
「メキシコ予選って何だ。ずいぶん金がかかるんだそうじゃないか」
スポーツ記者仲間から、よくきかれるので答をひとつ用意している。
「つまりだな。サッカーでは次のオリンピックが、もうはじまっているんだよ」
オリンピックでは、サッカーのようなチームゲームは、出場国を16に制限している。
そこで来年10月のメキシコ大会に出るチームを選ぶため、ことしから地球上いたるところで、1年半がかりの大規模な予選が行なわれている。バスケットボール、バレーボールなどの球技の中で、本格的な予選を単独で行なうのは、サッカーだけである。
サッカーが世界でもっとも人気のある、また参加者の多いスポーツだからできることなのだ。
というわけで、この予選は事実上、オリンピックの一部であり、メキシコ大会サッカー競技の1回戦だといえるのだ。
「お金がかかる」のは事実である。今度東京で開かれる大会の場合――正確には第19回オリンピック大会サッカー競技予選アジア地域第一組というのだが――韓国、台湾、フィリピン、南ベトナム、レバノンの5ヵ国を招き、日本をふくめて6ヵ国の総当たりリーグ戦15試合をする。
その旅費、滞在費がすべて開催国日本の負担。しめて約4000万円なり。
「そんなムリをしてまで日本でやらなくても――」
という意見もあるだろう。
それには、昨年12月バンコクのアジア大会から帰国したときの日本代表チーム長沼監督のことばをお伝えしたい。
「日本人にとって快適な、ちょっとハダ寒いくらいの気候のところで、やつらをコツンとやりたいな」
バンコクでは、猛烈な暑さと、連戦の過酷なスケジュールに苦しめられて、目標の金メダルをとれなかった。もし日本がメキシコ予選の開催を引受けなかったら、日本チームはまた東南アジアのどこかへ出かけて、同じ苦しみを味わわなければならない。
■ 是が非でもメキシコへ
いまから7年前、日本のサッカーはつらく、くやしい思い出を持っている。
ローマ・オリンピックの予選で日本は韓国に敗れて大会出場権を失った。ちょうど東京オリンピックの前で、どのスポーツもはなやかにローマに乗りこむのを、サッカーだけが指をくわえて見送らなければならなかったのである。
メキシコのときに同じ思いを味わいたくない。せっかく上り坂にさしかかった日本のサッカー熱にここで冷水を浴びせたくない。その思いが、相当のムリを覚悟してのメキシコ予選東京開催になった。
10月10日の夜、メキシコ予選の最終日に、ぼくは沢木君が金メダルを得たときと同じ情景を見たいと思う。
照明に浮かぶ緑の芝生、拍手、歓声、バンサイ。メーンポールにするするとあがる大きな日の丸の旗!
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