ワールド・カップ1966総決算(2)
(3/4)
(サッカーマガジン1966年10月号)
7月25日(月)
◇準決勝(リバプール)
西ドイツ 2(1−0 1−1)1 ソ連
準々決勝の荒れ模様はこの日も続き、また1人の退場選手が出た。
前半43分西ドイツはIRヘラーがゴール前10メートルから右足の強烈なシュートを決めた。退場者が出たのはその直後、ヒザを痛めて一時退いていたソ連のORキスレンコが復帰したとたんに、ドイツ選手をけりつけた。イタリアの主審ロベロ氏は、ちゅうちょなく退場を命じた。
ソ連のチームが荒かったことは確かである。乱暴なボディ・チェック、トリッピング、遅すぎるタックルなどが目だった。
ソ連は1人欠けているハンディに屈しないで、よく戦ったが、西ドイツは後半22分ベッケンバウアーの約25メートルシュートで2点目をあげた。ソ連が1点を返したのは試合終了の2分前、西ドイツのゴール・キーパーのエラーといえるものだった。西ドイツは決勝進出にふさわしい“強い”チームでとくにシュート力のシャープなことはずい一である。
7月26日(火)
◇準決勝(ウェンブレー)
イングランド 2(1−0 1−1)1 ポルトガル
初優勝を目ざす地元イングランドと、“ワールド・カップのスター”オイセビオ選手を持つポルトガル。地元の観衆にとっては、今大会でもっとも魅力あるカードである。競技場は9万を超える大観衆で、あふれんばかりだった。
イングランドは、地元の期待にこたえて、すばらしい試合をした。後半のはじめと、試合終了直前の数分を除いて、終始自分のペースで試合を進め、4・3・3の布陣の成果をいかんなく見せた。イングランドの2点は、ともにボビー・チャールトンの得点である。1点目は前半31分ハーストの強シュートをポルトガルのGKフェレイラがはじき、チャールストンの足もとに落ちたのを決めた。2点目は後半34分の中距離シュート。これでイングランドは2−0とリードし、無失点のまま勝つことは確実に見えた。
ところが37分FBジャッキー・チャールストンが不用意なハンドリングを犯し、ポルトガルはオイセビオがPKを決めて、イングランドに今大会の失点を与えた。
ポルトガルは、これに勇気を得て最後の5分間猛烈な反撃を試みた。観衆は絶望的な気持ちで、試合終了のホイッスルが早くなるように望んでいたほどだった。
あと1分、オイセビオが巧妙なボールさばきを見せながら突進、イングランドの守備陣がゴールをカバーするために後退する一瞬をとらえて、右翼の主将コルナに大きくパスした。コルナのシュートは強烈だったが、GKバンクスはかろうじてバーをかすめてはじき出した。
この試合でもオイセビオの威力は、相当のものだった。7回にわたって、強烈なシュートをはなってイングランドおびやかした。うち4回はGKバンクスが防ぎ、2回はコーナー・キックになり、1回は、きわどくポストをかすめた。それでも、オイセビオをこれだけに押さえたイングランドの守備陣は、とくにすばらしかったというべきであろう。
この試合は久しぶりに“きれいな”ものだった。イングランドが7、ポルトガルが3のファウルを記録に残しただけだった。“ファウルの嵐”は、ようやく過ぎ去ったようだ。
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