ビバ!!サッカー研究会5月例会で、日本郵便事業鰍ェ南アフリカ大会を記念する切手を発行することについて概要を報告しましたが、以下に説明の不十分な点を補足しておきます。当日参加されなかった方々にも、お読みいただければ幸いです。
1.南アフリカ大会記念切手の概要
今回、日本郵便事業鰍ェ発行したワールドカップ・南アフリカ大会を記念する切手が上の2つのシートです。シートAが、南アフリカ大会を記念するシートで、サッカーボール、FIFAトロフィー、南アフリカ大会公式ポスター、同公式エンブレム、日本代表チームエンブレムの5種類で、
シートBが歴代大会ポスター(15種類)とジュール・リメ優勝杯(2種類)の計17種類となっています。
注)シートA、Bは、筆者が便宜的に付した区分です。
2.日本スポーツ切手にとって画期的な発行であるが……。
これまで国外で開催されるスポーツ大会に際し、リアルタイムでの記念切手の発行は無く、「まるで鎖国状況!」とスポーツ切手収集家に酷評されてきました。 私も、これまで「たとえ日本がワールドカップで優勝しても、切手は発行されることはない」としてきました。
それだけに、W杯南アフリカ大会の記念切手の発行は、サッカー以外の世界選手権クラスのイベントへの対応が注目されます。はたして、全面「開国」となるのでしょうか?
3.切手の「ライセンス商品化」は世界的な傾向
今回の切手発行についての説明書には、次のように明記されています。
(1)FIFAの切手については、FIFAのマスターライセンシーであるグローバル・ブランズ・ジャパン株式会社より切手を商品化する権利を取得しています
(2)サッカー日本代表チームエンブレムの切手については、財団法人日本サッカー協会より切手を商品化する権利を取得しています
これに従って、シートAには2010年大会の「ライセンスプロダクトシール」が、シートBには「FIFAライセンスプロダクトシール」が、それぞれシート左上に印刷されています。つまり、22種類の内21種類はライセンス商品であり、サッカーボールだけが対象外ということになります。
徹底しているのが各シートの名称です。
シートA : 「2010 FIFA WORLDCUP AFRICA TM」
シートB : 「FIFA World Cup TM Historical Posters JULES RIMET CUP」
このような傾向は世界的な傾向であり、権利保護の観点からは避けられないこととして、各国郵政自体が民営化傾向にあることもあり、受け入れられているのが現状です。
4.ライセンス商品化から生じる不便な点
今回、奇妙なことがシートBに生じています。歴代ポスターとうたっていますが、3大会分(1966年イングランド大会、1974年西ドイツ大会、1982年スペイン大会)のポスターが含まれていません。当初は全てのポスターを揃えるつもりだったことがうかがえます。しかし、3大会のライセンスが取得されなかったようです。シートBの右端の列がジュール・リメ優勝杯切手2種・5枚になっているところに、その痕跡が現れています。ワールドカップに親しんでいる私たちには容易に気づくことですが……。何よりも折角なら全大会分楽しみたいですね。
これまでも大会ポスターを取り上げた切手や絵葉書が発行されていますが、ライセンス全てを取得することは容易でないようです。
2002年日韓大会のときにカタールが挑戦し、すばらしいポスター切手とポスター絵葉書を提供してくれましたが、1990年イタリア大会から2002年までの4大会分は大会エンブレムで間に合わせています。
それだけに、もし日本郵便事業が全大会分を収めることに成功していたら、世界中のサッカー切手収集家の注目を浴び、郵便資料として後世にも引き継がれたことでしょう。
5.楽しい郵趣品づくり
上述のとおりの切手発行でしたが、今回、次のような視点から独自の郵趣品づくりを試み、楽しみました。
(1)全大会のポスターをB5大の台紙にコピーし、当該切手を貼り「東京中央郵便局」の「特印」(特殊通信日付印)を押印してもらいました(写真下左)。その際、当該切手の無い3大会分には優勝杯の切手を貼りました。結果的に「抜け」を強調するものとなった気がします。
(2) 過去の大会の記念カード、ジュール・リメの描かれた切手(使用済み)、封筒などをコピーした台紙に切手を貼り「特印」を押してもらい、過去の大会との連係?をはかりました(写真下右)。
発行される切手はどうすることもできませんが、それを活かして自分なりの考えとデザインで新しい郵趣品をつくることはとても創造的で、郵趣の世界の魅力のひとつだと考えます。押印会場となった京橋郵便局の特設会場には多様な郵趣品づくりを楽しむ人々の姿がありました。
小堀 俊一 (こほり・しゅんいち)
1941年生まれ。 ビバ!サッカー研究会会員、日本郵趣協会正会員
40年あまり前から、サッカー郵趣品(切手・はがき・封筒・記念消印などの郵便物資料)を収集し、楽しみながら世界のサッカーを学び続けています。
著書:「サッカー百科展」(1992年・大修館書店)、「サッカースタンプスタジアム」
(2002年・ 日本郵趣出版)
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