◆高校サッカー改革とテレビ◆
〜第85回高校選手権雑感(7)〜
(2006年12月31日〜2007年1月8日)
★民放テレビ43社が共催
高校サッカーの構造改革を検討すべきときが来ていると思うのだが、その場合に、テレビを抜きに考えることはできない。
冬の高校サッカー選手権が、これほど盛んになったのは、テレビのおかげである。現在、大会の主催には日本サッカー協会、全国高等学校体育連盟と並んで「民間放送43社」が入っている。「民間放送43社」は、東京の日本テレビをキー局とする全国各府県の民間テレビ局である。
第50回大会(1971年度)から民放テレビが加わったときには、いろいろ批判や非難もあたのだが、その後「冬の選手権」は見違えるように魅力的なものに変貌した。
当時、日本テレビの大きな狙いは、系列の強化だった。そのために全国の地方局が主催に加わった。だが、いまテレビの世界は大きく変わりつつある。
★デジタル衛星波で全試合放送
当時、民間テレビは東京には5社だけだった。地上波だけ5チャンネルである。衛星波やデジタルはなかった時代だ。
地方の各府県には、それぞれ地方局が数局ずつだった。それが東京5局の番組をもらって放送していた。民放のネットワークが整備されつつある途上だった。そのなかで日本テレビ系列の結びつきを強くするために高校選手権が役立った。
現在は、まったく事情が変わっている。
当時はNHKの2チャンネルをあわせて、7チャンネルの系列しかなかったが、いまは見ようと思えば、200チャンネル以上のなかから番組を選ぶことができる。
今回の高校選手権を、日本テレビは衛星デジタル波の「G+」で全試合を放送した。多チャンネル時代になって、ネット局を通じなくても全国に全試合を送れるようになった。
★多チャンネル時代への対応
高校サッカーにとって、テレビ事情の変貌は重大な影響がある。
日本テレビは、いまでは地上波1チャンネルだけでなく、いくつものチャンネルを持っている。したがってリーグ制を採用して試合数が増えても放送枠には困らない。
また、東京のキー局は、地方局のネットを通じなくても、衛星波で全国に試合を中継できる。全国どこでも、全試合をみる機会を得られるから、ファンにとってはあり難いが、民放43社に加わっている各県の地方局にとっては困った問題かもしれない。
テレビの将来がどうなるかは、専門家でも確実な見通しはまだ立たないようだが、高校サッカーの構造改革を検討するときには、テレビの将来を視野に入れておく必要がある。
前年と同じように、マンネリズムで大会を運営していられる時代ではない。サッカー協会も高体連も、衆知を集めて高校サッカーの構造改革に取り組んでもらいたい。
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