◆高校のレベルは下がったか?◆
〜第85回高校選手権雑感(3)〜
(2006年12月31日〜2007年1月8日)
★優秀選手はJリーグ・クラブへ
「高校サッカーのレベルが下がっている」という辛口の論評があった。
ぼくは意見が違う。というよりも見方が違う。
「レベルが下がっている」という人は、国見(長崎)、市立船橋(千葉)などと比べているのかもしれない。あるいは、もう少しさかのぼって、帝京(東京)、清水市商(静岡)などを思い出しているのかもしれない。
こういう過去の優勝争いの常連は、地元の県内だけでなく、地域あるいは全国から、素質のある中学生を集めていた。
ところが、近年はトップクラスの中学生は、Jリーグ・クラブのユースチームに加わるようになっている。そのために、いわゆる名門校のレベルは落ちている。
そういう見方だろう。
★選手の技術レベルはあがっている
今回、優勝を争った盛岡商(岩手)、作陽(岡山)は、Jリーグ・クラブのない県の代表である。だから、少なくとも県内では優秀選手を集めやすかった。
レベルの高いほうではなかった地方のチームが決勝に出られたのは、名門校に優秀選手が集まらなくなったためだ。そういう理屈である。
ぼくの見方、あるいは考え方は違う。
盛岡商と作陽が進出できたのは、全国的に選手の技術があがったためである。
また、各地に熱心で指導能力のある先生がいるためである。
ぼくの見たところでは、ボール扱いの技術のしっかりした選手は多かった。積極的にドリブルで攻めようとする選手もいた。クレバーな守りを見せる選手もいた。
10年ほど前と比べてみても、各地の高校選手のレベルは、確実にあがっている。
★全体としては良くなっている
技術だけでなく、個人の戦術能力もあがっている。これはテレビで、高いレベルのサッカーを見る機会が増えたからだろうと思う。
しかし、それを実戦で伸ばす機会は高校では少ない。高校の大会は、勝ち抜きのトーナメントが主で、ふだんは強いチーム同士の試合でもまれることがないからである。
個人の技術と戦術能力があがっても、それを勝負に生かせるかどうかは、監督の先生の手腕による。上位に進出するチームには熱心で経験のある指導者がいる。
そういうわけで、同年代のトップの素質の選手で高校サッカーに登場しない者がでてきたのは確かだろうが、高校サッカー全体としては、レベルはあがっている。これが、ぼくの考え方である。
ただし、だから現在の高校サッカーの組織がいいと考えているわけではない。
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