◆天皇杯決勝、浦和の連覇は幸運だったか?◆
(1月1日、浦和レッズ 1対0 ガンバ大阪)
★試合に負けて勝負に勝った?
元日の天皇杯決勝戦が終わった瞬間、ぼくの後ろに座っていた記者が「(ガンバは)試合に勝って勝負に負けたな」とつぶやいた。浦和レッズのほうから言えば「試合には負けたが勝負には勝った」ということになる。
試合内容では、ガンバ大阪が終始、優勢だった。シュート数はガンバ21に対して、浦和は6本。ガンバのシュートには、あわやというのが何本もあった。
しかし、勝負を決めたのは、後半42分の浦和の1点。ガンバの西野監督が、記者会見を「悔しいです」と切り出したのも無理はない。
浦和のブッフバルト監督は「きょうの試合について言えば、ツキがあったというほかはない」と語った。
しかし、ぼくの見るところでは、浦和の勝利は「ツキ」ばかりではない。
★ブッフバルト監督の用兵的中
浦和の勝因を、しぼって言えば2つあげられる。
一つは、ゴールキーパー都築の好守である。ガンバは再三、後方からの放りこみ、播戸の切り込み、ミドルシュートなど、いろいろな手段で攻めたが、都築が多くのシュートを、きわどくパンチで防いだ。
もう一つは、ブッフバルト監督の用兵の的中である。
後半17分に右サイドの平川に代えて長谷部を中盤左に出し、山田を右サイドに回した。
さらに後半31分に小野に代えて岡野を出し、トップの永井にならべた。
得点は、交代出場の長谷部−岡野とつながって永井が決めた。
「ガンバの家長を(右に回った)山田が抑えていたので、いつもは右で出す岡野をトップの永井のサポートにあげた」とうのが監督の説明である。
★ツキを呼んだ用兵とチームワーク
説明を聞けば、たまたま当たったように見える用兵の的中も、周到に考えられたすえのものであることが納得できる。「ツキ」を呼んだのは用兵である。
ゴールキーパー都築の好守も偶然ではないだろう。
浦和の守備は、中心だった闘莉王と三都主を欠き苦しい布陣。ガンバの攻めに何度も崩されていた。それでも懸命に守るのを、都築がカバーした。レギュラーで組んでいない顔ぶれでも、きちんと連係できる。ふだんの練習のときからのチームワークの成果である。
ガンバの西野監督は、先発の11人を動かさなかった。
「このメンバー、このシステムで相手を崩してほしいと願っていたから」だと言う。一つの見識ではあるが、人情に流されて勝負の非情に徹しきれなかった、というようにもとれた。
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