FIFA
Club World Cup Japan 2006
◆大会の将来を考える◆
クラブ・ワールドカップ総まとめ(7)
(12月10日〜17日、豊田、東京、横浜)
★バルセロナは多国籍クラブ
クラブ・ワールドカップに出場した6チームのなかで、欧州代表のバルセロナは、ちょっと異質である。
決勝戦の先発11人は8カ国のプレーヤーで構成されていた。そのうち自国のスペインの選手は3人だけである。ほかはブラジルが2人。メキシコ、アイスランド、フランス、イタリア、オランダ、ポルトガルが1人づつだ。
他のクラブにも外人選手はいる。しかし大部分は自国選手で数人の補強である。それぞれ自国のサッカーのスタイルを保ちながら外人選手を生かして使おうとしている。
そんななかで、バルセロナはスペインのクラブチームというより世界選抜である。スペイン・サッカーの色はほとんどない。
世界のスターを組み合わせて、新しいスタイルのサッカーを生み出している。
★ECがサッカーを変えた
バルセロナのようなチームが登場したのは、EC(欧州共同体)ができたからだ。西側欧州諸国が一つになって国境が消えた。いまやECは「一つの国」である。通貨は「ユーロ」に統一され、ペソもフランもリラもなくなった。労働力の移動も自由化され、サッカーのクラブでは、EC域内の選手を「外人枠」で制限することは、許されなくなった。
だが、経済的には国境が消えても、歴史のなかで育ってきた各国の文化の特色は簡単には消えない。
だから、欧州各国の国内では、それぞれの国の文化を背負ったサッカーが生き残っている。しかし、欧州チャンピオンズ・リーグで上位を争うような裕福なクラブは、EC域内の優秀選手をかき集めたうえで、ブラジルなど域外から若干名を補強するようになった。
いわば、バルセロナはスペインのクラブではなくて「欧州」のクラブである。
★スター軍団参加に違和感
バルセロナのようなチームが、新しいスタイルを作り出すのは「進歩」には違いない。それはそれでいいが、世界選抜のスター軍団が、各国の文化を背負った他のクラブと並んでクラブ・ワールドカップに参加するのには違和感がある。
「強すぎるから困る」というわけではない。今回は決勝でインテルナシオナルに敗れたので「強すぎる」とは言えなかった。インテルは決勝戦の先発11人全員がブラジル人だった。ブラジルのサッカーが多国籍スター軍団を破ったところに、おもしろさあった。
しかし将来はどうだろうか。
多国籍スター軍団ばかりが注目されるようだと、他地域のクラブが参加できることの意義が損なわれる心配がある。いろいろな国の、いろいろな文化のサッカーが競い合う大会に育つほうが楽しいのではないだろうか?
(クラブ・ワールドカップの項おわり)
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