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◆ビバ!スポーツ時評

サッカー日誌  2006年10月21日(土)

◆中田ヒデ引退公表の方法◆
(10月20日、ビバ!サッカー研究会)


★ホームページでの発表
 ビバ!サッカー研究会の10月例会は「ワールドカップの新聞報道」がテーマだった。読売新聞運動部筆頭次長の塩見要次郎さんにゲストとして来ていただいてお話をうかがった。
 人びとは第一線の記者の取材活動と、できあがった紙面に興味を持つ。しかし、実際に報道の出来を左右するのは本社の受けデスクである。取材方針を決め、現場に指示を出し、現場からの原稿を受け取って新聞を作る。
 塩見さんは、読売の運動面全体のデスクであるが、ワールドカップの時には、ドイツでの取材とその受けを東京で指揮した。その内幕話が興味深かった。
 ワールドカップ報道で大忙しのさなかに、中田英寿選手が、引退発表をした。その話も出た。
 7月3日。自分のホームページに「つづり方」のような引退声明を掲載するという形だった。
 
★マスコミにはファックスで予告
 一方的にホームページに掲載したのでは、テレビ局や新聞社は、気がつかないこともあり得る。インターネットは、関心のある人が見にいく検索性のメディアだからである。
 しかし、公共性のあるニュースは、一般の人びとにも知らせなければならない。そのためには、新聞などの一覧性メディアで取り上げる必要がある。一覧性とは、気が付かないでいても目に触れるという意味である。
 ヒデ引退の場合は、報道関係には、ファックスを送って「ホームページ上で公表する」と通知したらしい。テレビ局や新聞社は、ファックスを見て、あわてて、ヒデのホームページをクリックして引退声明を知り、ニュースにして報道したわけである。
 ビバ研の月例会で塩見さんは「本人に会うことも出来ず、質問の機会もなく報道しなければならなかったのは、マスコミの立場として残念だった」と話した。

★マスコミの前に立て
 これはインターネット時代のメディアの大きな問題の一つである。場合によっては、ネットの陰に隠れて、一方的にマスコミを利用する結果になりかねないからである。
 芸能人などについての報道で「有名人のプライバシー」が問題になる。一方で「有名人の社会的責任」という議論もある。
 マスコミを通じてファンの支持を受け名声を得たヒデは、マスコミを通じて大衆の前に姿を見せ、マスコミを通じて質問を受ける機会を避けるべきではなかった。それが、スター選手の社会的責任だと思う。
 よく言われているように、マスコミ側にも問題がある。言い分をそのまま伝えない、ときには間違って伝えるなどである。だから、ヒデはホームページで、自分の考えを、そのまま伝えようとしたのだろう。
 それはそれでいい。しかし、マスコミの前にも、利害を顧みず、立つべきだと思う。

 

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