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◆ビバ!スポーツ時評

サッカー日誌  2006年8月7日(月)

◆「走るサッカー」とは何か◆
 オシム日本が練習開始
(8月6日、千葉市)

★労働量のサッカーとは違う
 オシム監督の日本代表チームが、前日までに追加した5人を加えた18人で練習をはじめた。その様子を報じた新聞は「オシム色鮮明」と前任のジーコ監督と違いは「走るサッカー」だと説明している。
 こういう報道を見ると、心配になることがある。それは「走るサッカー」が誤解されるのではないかということである。半世紀近く前にはキック・アンド・ラッシュのサッカーで、この言葉が使われていたと記憶している。ボールをおおまかに蹴って、落下点めざして走りこむ。ボールを相手に取られると懸命に走って戻って守る。このような「ミスを走る労働量で補おうとするサッカー」を「走るサッカー」と称していた。
 オシム監督の場合は、それとは違う。「パスをつないで走るサッカー」である。自分たちのミスをカバーするために走るのではなく、相手にミスをさせるために走るのだ。
 
★「走ること」の2つの場合
 この場合の「走る」には2つのケースがある。
 一つは、パスを出した選手が、その足でダッシュして走ることである。1960年代に日本のサッカーを改革したドイツのクラマー・コーチは、これを英語で「パス・アンド・ゴー」と表現して教えた。当時としては、新しい考え方だったように思う。
 もう一つのケースは、パスを受けるために他の選手がスペースを求めて走ることである。 Jリーグの前身である日本リーグが発足したのは、いまから40年前の1965年だった。当時東洋工業(広島)の下村幸男監督は、この走るサッカーを「第三の動き」と呼んで徹底的に練習させていた。東洋工業は、リーグ創設から3シーズン連続優勝した。
 こういうように考えると、オシム監督が強調しているサッカーは、本質的には40年前からあったものではないか。

★考えて走る能力を伸ばす
 つないで走るために必要なのは、どこへ走れば相手の守りを崩せるかを考えて走ることである。その判断は、選手一人一人が、その場、その場で瞬時に下さなければならない。だから、選手たちに自分で考えてプレーする能力を要求している。
 選手たちが自主的に考えて判断することは、ジーコ監督も常に求めていたことである。そう考えると「考えるサッカー」も特に目新しいわけではない。
 オシム監督の新しさは「考えて走る」能力を発揮させるために、ジェフでやっていた変わった練習法を代表チームにも持ち込んだところだろう。
 そういう具体的な内容を消去して、簡単に「走るサッカー」と要約してしまうことが、底辺のチームに技術軽視の風潮を生むのではないかと心配である。

 

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