◆ちょっといい記事◆
ドイツ・ワールドカップの清掃
(8月2日付け、東京新聞夕刊)
スポーツ面ではない。東京新聞夕刊8面の国際話題もののページに「お時間はいしゃーく」というインタビューの欄がある。そこにベルリンの三浦耕喜記者が書いた記事である。
ドイツで開かれたワールドカップのとき、各地にパブリック・ビューイングの会場が設けられた。広場などに巨大なスクリーンを設置して、試合中継のテレビ映像を無料で見せる。地元のドイツ人だけでなく、世界各国から集まったサポーターたちが、ビールを飲みながら試合を見、歌い、叫ぶ。楽しいお祭り騒ぎだが、そのあとがたいへんだ。食べ物の残り、紙くず、ペットボトル、ビール瓶など、大量のごみが路上に散乱している。割れたビール瓶もたくさんあって危険きわまりない。
ところが、翌朝になると、路面はきれいに片付けられて、ほとんど、かけらもない。これには、非常にびっくりし、感心した。
記事は、ごみ片付けを担当したベルリン市清掃公社の職員、トーマス・トリュンペルマンさん(37歳)へのインタビューである。
ふだんは昼間の仕事だが、ワールドカップ期間中は、試合が夜だから後片付けは、深夜になる。昼夜逆転である。土曜日曜も休めない。
ベルリンのブランデンブルク門の通りにできた「ファン・フェスタ」の会場では、集めたごみが毎日50トンになったという。コップや食べ物の容器、いろいろな国の旗などが散乱している。それをバキュームカーで吸い込み、届かないところは手で集める。「ファン・フェスタ」の会場内にはビン類は持ち込めないので、ビール瓶はないのだが、会場の入口で荷物検査があるので、その前に飲みかけのビール瓶を路上に捨てるのが多い。
大会期間中は、清掃公社だけでは人手が足りないので、職業安定所が補助員を派遣してくれたのだそうだ。各国のサポーターを心おきなく楽しませた背後に当局の組織的な計画と担当者の献身があったことがわかる。
日本のワールドカップ報道は、日本チームを中心に、競技場のほうだけに集中していて、大会運営や参加チームの背景には、ほとんど目が向いていなかった。あれほど、多数の取材陣が現地に出かけたのにである。
この記事は、遅ればせながら、大会運営の背景に目を向けている。しかも、後片付けという、こまかい点に目を配って、きちんとインタビューしている。そこのところに感心した。
清掃公社員の制服がオレンジ色だったので オランダ人と間違えられたこともあるという。「オランダのサポーターは、ちゃんと後片付けするんだ」と思われたかもしれない。かって日本のサポーターが、試合後、スタンドのごみを拾い集めて帰って賞賛されたことがあるのを思い出した。こちらは、本物の日本人だったのだけれど・・・。
東京新聞を読み損なった人は、図書館にでも行って読んでください。
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