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◆ビバ!スポーツ時評

ビバ!サッカー観戦日誌(2006/5/17up)

FC東京 1-2(1-0) 大宮アルディージャ
5月6日(土) 晴 味の素スタジアム(午後3時〜) Jリーグ第12節 

監督の用兵、当たり外れ   

☆ファミリー join デイズ
 自宅から味の素スタジアムへ歩いて出掛けた。片道約30分。競技場敷地の東門までは20分だが、そこからメーンスタンド側の入り口まで、さらに10分かかる。連休終盤の土曜日、前日は端午の節句、この日はFC東京の「ファミリー join デイズ」だった。スタジアムに向かう道に家族連れが多かった。子どもたちはFC東京の青いレプリカ・シャツを着て浮き浮きと楽しそうである。
 でも、帰りには子どもたちはがっかりしていただろう。前半、FC東京がリードしてスタンドは盛り上がっていたのに、後半は大宮に反撃され、終了寸前に逆転負けしてしまったからである。

☆三浦監督の策的中
  大宮は前半元気がなかった。1対0とリードされたあとも、ほとんど一方的に攻め込まれていた。そこで後半がはじまるときに、三浦俊也監督は手を打った。ハーフタイムに 「もっとアグレッシブに行け」と指示した。そして、中盤のメンバーを2人代え、桜井直人を前方に、斎藤雅人を下がり目に置いた。桜井はよく動き、守りも激しく、攻めにも積極的に出た。それに刺激されて全体がアグレッシブになった。後半は、大宮が主導権を握り、FC東京が押し込まれる場面が多くなった。さらに後半25分に、ツートップの1人、森田にかえて若林を出した。
  同点は後半32分、小林大悟の蹴った右コーナーキックから。守備ラインからあがっていた富田がヘディングでぴしゃりと決めた。
 逆転は、3分間のロスタイムもほとんど残りがなくなっていたとき。約22bの距離のフリーキックを小林大悟が直接たたきこんだ。
 ハーフタイムの指示と選手交代の狙いが、結果的にはうまく当たった。

☆ガーロ監督の用兵も適切だったが
 一方のFC東京はどうか?
 ガーロ監督のハーフタイムの指示は「相手のセットプレーに注意しろ」というものだった。用兵では後半10分にトップの赤嶺真吾をリチェーリにかえ、その5分後にトップの川口信男を中盤の伊野波雅彦にかえた。トップ下にいたルーカスをトップにあげて最前線に外国人2人を並べ追加点を狙う。若手の伊野波を入れて中盤のチェックを厳しくさせる。そういう狙いのように見えた。
 ガーロ監督の指示と用兵の狙いも適切だったが、こちらは実を結ばなかった。失点は2点とも「相手のセットプレー」からで、監督の心配どおりだった。中盤のチェックのあまさは改善されず、相手に押し込まれる原因になった。外国人ツートップの後半のシュート数はゼロだった。監督の指示や用兵が適切であっても負けることはある。監督の狙いがうまく伝わらないこともあるし、選手が実行できないこともある。運不運もある。
 この日の試合は、その点で対照的だった。

[試合のメモ]
(Jリーグ第12節、FC東京 1ー2 大宮アルジージャ)

@FC東京先制のPK
 前半8分、FC東京の先制点はペナルティキックだった。試合後の記者会見で、大宮の
三浦監督は「あのPKには、いろいろあるでしょうけど・・・」と口をにごしたが、スタンドから見ていたかぎりでは、疑問の余地のないPKだった。FC東京が鋭く攻め込んで
シュートがポストにあたって跳ね返った。そのとき、もつれあって倒れた大宮の選手が、
起き上がってプレーを続けようとしたFC東京の選手の足を手で引っ掛けて倒した。意図的ではなかったかもしれないが、記者席からはそう見えた。FC東京の選手は、倒されなければ、跳ね返りのボールに追い付いて、ゴールをあげる可能性が十分あった。三浦監督のコメントには続きがある。「それにしても、前半のわたしたちの試合ぶりからすれば、FC東京のリードは当然でした」。そういう趣旨の話だった。

AW杯代表候補のプレーぶり
 ドイツ・ワールドカップを控え、Jリーグ中断前の最後の節だったので、このあとに行われるキリンカップに日本代表として招集されている選手に注目が集まっていた。ジーコ監督は、一人一人の選手の力量と特徴は、とっくに見極めているに違いないので、今になって一つ一つの試合の「でき不でき」が影響するとは思われない。ジャーナリズムが話題を作っているだけの話である。しかし「ケガ」となると話は別だ。この試合では、FC東京のディフェンダー茂庭照幸が、前半34分に倒れて交代退場した。「右もも裏負傷」ということだった。重大な負傷か、大事をとったのか、この時点では分からなかった。

B大宮の「放りこみ」
 大宮は後半に、にわかに活気づいて攻めたが、攻めのパターンは大部分が「放りこみ」である。サイドから攻め、タッチライン近くの中盤から直接、あるいは後方からオーバーラップしてコーナー近くに走りこんで、長いキックをゴール前に送る。切りこんで相手の守備を引き出してゴール前にあげるのではない。敵味方密集しているゴール前にいきなり放りこむ形が多い。試合後の記者会見で聞いてみた。「放りこみが多いのは、きょうの相手を考えての作戦か? それとも、大宮のいつものスタイルか?」。三浦監督の答えはこうだった。「いつもの方針です。ともかく、ペナルティエリア内にボールを入れないことには、ゴールは生まれませんから」。ぼくは必ずしも同意見ではない。

C小林大悟の決勝点
 大宮の決勝点をあげたのは小林大悟である。大宮が白星をあげた4試合は、すべて小林大悟が決勝ゴールをあげているという。キックもドリブルもうまいキッカーとして、またパスも守りもセンスがある中盤プレーヤーとして、東京ヴェルディから移籍してきた。23歳。大宮の大量補強の成功例である。決勝点を生んだ直接フリーキックのとき、手元の時計では後半のロスタイム3分はもう過ぎていた。「あとワンプレーをみて、主審は終了の笛を吹くんだろうな」と思った。ところが、ペナルティエリア外、右より、約22bからの直接フリーキックは、これしかないというコースをとおって左隅を直撃した。主審がキックの時間を見てロスタイムを延ばしたのは正解だと思う。その後のワンプレーは、みる必要もなかった。

 

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