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◆ビバ!スポーツ時評

ビバ!サッカー観戦日誌(2006/5/14up)

FC東京 2−1(0−1) 名古屋グランパスエイト
4月29日(祝) くもり 味の素スタジアム(午後7時〜) Jリーグ第10節 

システムをどう使うか

☆名古屋のシステム変更
 試合が始まると、最初の10分くらいの間に両チームのメンバーのフィールド上の配置を自分の見たままにノートに書く。それが長年のぼくのやり方である。FC東京の配置はすぐ書けた。4:4:2である。中盤の4人は、3人が守備的なラインで、ルーカスがトップ下。トップは赤嶺と川口の2人、というように見た。ところが相手の名古屋のシステムがよく分からない。名古屋のチームを見るのが今季はじめてで、選手をよく知らないせいもあるのだが、守備ラインの守り方がつかめなかった。4人の最終ラインのようでもあるし、相手の2トップに3人をあて、その中で一人を余らせているようにも見えた。試合後の記者会見でのドワイト・コーチの説明では「前半は4:4:2で、後半は3:5:2に変えた」ということだった。

☆ルーカスのマークに失敗
 後半にシステムを変えた理由は「FC東京のルーカスが、トップ下に引いていたので、4:4:2では対応できなかったから」だという。名古屋のベンチは「ルーカスが最前線で動き回る」と予想していた。それを4人の守備ラインの網でからめとろうとした。しかし、ルーカスは下がり目だった。マークしようと一人出ていくと守備ラインが乱れる。中盤の選手が一人、マークしなければならないところだが、そうすると攻撃的な試合をしようとしていた狙いが崩れる。そんな事情だったのだろうかと、これはぼくの解釈である。前半14分と17分にルーカスは第2線から飛び出してみごとなヘディングで2点をあげた。名古屋はハーフタイムに左サイドの阿部翔平に代えて吉村圭司を出し、ルーカスのマークにあてて3:5:2にした。それがきいたのか、後半の名古屋は立直って積極的にプレーするようになった。しかし、結果は、終了まぎわに相手のクリアボールを拾った吉村のミドルシュートで1点を返しただけだった。

☆システム談義への批判
 サッカーでいう「システム」は、選手の配置とその機能をさす言葉である。サッカー・ライターのなかには、システムを好んでとりあげる人がいる一方で、システム論議に批判的な人もいる。重要なのは選手の技能と判断力で、勝負はシステムで決まるわけではない。だから、システムの役割を強調しすぎたり、システムで選手をしばるような考え方をすべきではない。これがシステム論議批判派の意見である。もっともではあるが、選手の技能と判断力をいかすために、時と場合と相手に応じて、システムを適切に使い分けることも必要である。この試合は、それが明暗を分けたケースだったのかもしれない。

[試合のメモ]
(Jリーグ第10節、FC東京 2ー1 名古屋グランパスエイト)

@代表GK、好守の応酬
 ゴールキーパーの見せ場が多く、どちらもワールドカップ日本代表候補だったので話題になった。FC東京の土肥洋一は、前半の立ち上がりに玉田のダイビング・ヘッドのシュートを片手で叩き出し、後半はじめにも立て続けにピンチを防いだ。名古屋の楢崎正剛も後半に相手がフリーになってのシュートを食い止めた。FC東京が2対1で勝ったこともあって「代表GK対決は土肥の勝ち」という新聞記事もあったが、ワールドカップ代表のゴールキーパーは、この2人に川口能活(ジュビロ磐田)を加えたトリオでほぼ決まり。正キーパーの座は、このところ川口に固定されているのだから「対決」にはあまり意味がない。とはいえ、ゴールキーパーの好守が、ゲームをおもしろくしたのは確かである。

Aジーコ監督が「ハシゴ」視察
 この日のJ1は7試合、そのうち5試合は関東地域での開催だった。日本代表のジーコ監督は、そのなかで「さいたまダービー」の浦和対大宮をまず視察した。5月15日に発表される予定の代表メンバーは、ジーコ監督の頭のなかでは、ほぼ決まっているだろう。だから試合ぶりを見て評価が変わることはないに違いない。注目したのは、おそらく故障あがりの小野伸二である。小野は久しぶりにいいプレーをみせて、復調ぶりをアピールした
という。ジーコ監督は、この埼玉スタジアムの試合を見たあと、ナイターの味の素スタジアムに駆けつけ視察の「はしご」。でも、FC東京の茂庭、今野、名古屋の玉田は、あまりアピールできなかったのでは?

B名古屋の監督、出場停止
 試合後の監督記者会見に出てきた名古屋のドワイト・コーチは、いきなり「監督のいないことを、お詫びします」。フェルフォーセン監督は、4月26日に甲府で行われたナビスコカップの試合でレッドカードを出され、次のこの試合は出場停止処分でベンチ入りできなかった。代わって試合の指揮をとったドワイト・コーチが記者会見したわけ。ナビスコカップの甲府との試合では終了まぎわ、ペナルティエリア内のファウルをとってくれなかったことについて、主審にしつように抗議したため、退場させられたのだという。甲府との試合は1対1の引き分け。この日のFC東京との試合は敗れて、リーグとカップを通じて9試合白星なし。

Cルーカスがヒーローのはずでは?
 ルーカスは、2点をあげたのだから、FC東京のヒーローとして取り上げられていいところだが、翌日の新聞は、日本代表の「GK対決」を話題にしたところが多く、ルーカスは無視されてしまった。ワールドカップに注目が集まっている時期だし、このカードも中位同士で、順位争いとしては重要ではないので、止むを得ないところかもしれない。しかし、トップ下での起用が成功し、2点ともクロスにぴしゃりと合わせたみごとなヘディングだったから、ちょっと気の毒。地方のチームだったら地元新聞がヒーローにしてくれたかもしれないのだが、東京の新聞は全国的な話題を取り上げるので、FC東京の勝ち星自体も扱いは小さかった。

 

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